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防災インタビューVol.130

大地震への備え ~熊本地震からの考察~

放送月:2016年7月
公開月:2017年2月

国崎 信江 氏

危機管理教育研究所代表

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

避難所運営のための事前対策と人材育成の必要性

今回、避難所の自主運営がうまくできなかった要因として、私は大きく2つの問題があったと思います。1つは役場職員と住民に共通して言えることですが、避難所運営に関する知識と経験が不足していたことです。平時から、避難所運営に関して、事前に行政と地域が話し合って、自主運営の重要性を認識し、避難所運営委員会などの組織を立ち上げて、避難所に関する課題を解決するための協議も重ねていくことが必要で、災害時の要配慮者に対する当事者との対応策を関係者が検討して、避難所運営に必要なものを準備していって訓練する。こういった事前対策がなされていれば、実際の避難所における生活も、もっと快適なものになっていたと思います。

2つ目の問題点は人材不足です。今回の地震では、たくさんの職員が避難所対応をしていましたが、実際には、避難所運営のノウハウを持っているプロの力が必要です。そうした人材の不足が非常に大きな問題でした。私のネットワークでも、各避難所でさまざまな防災団体に対して、避難所の自主運営の重要性を説明し、導入の支援をお願いしたのですが、実際にはボランティアは経験しているけれど、避難所における自主運営の経験がないという方々が割と多くて、自分と同じような立場で自主運営を支援していけるような人がもっともっとたくさんいると思っていたので、実際にはそれほどいなかったということが非常に衝撃でした。

益城町の健康福祉センターという大きな施設では、1階部分だけでなく、階段や廊下やエレベーターの前や2階部分も含めて、所狭しと大勢の方が暮らしていました。そういう避難所もあれば、小学校の体育館の中に、皆さんが収まっている避難所もあって、避難所と一口に言っても環境はみんな違います。環境だけでなく、そこに入っている方々の人数や特性によって、避難所ごとに運営方法も変わってくるので、1つの避難所運営マニュアルを渡せばどこでもつつがなく避難所運営がスムーズにいくということでもなく、ましてや大勢の人と直接向き合って進めていかなくてはならないので、「この避難所ではどのような運営が求められるのか」ということをその場で感じ取ってまとめていく力を持っている人材が必要不可欠です。私一人では到底全ての避難所を丁寧に見ていくことができませんので、避難所運営についての経験や知識のある方のネットワーク、またはそういった方々を登録して派遣できる制度の必要性を感じています。

避難所における自炊のすすめ

益城町では被災した方々に対して、朝、朝食と昼食のおにぎり1個とパンを2個配り、夕食にはお弁当を配っています。この食事がほぼ2カ月間、毎日繰り返されているわけですが、炭水化物と油、脂質の多い食事によって栄養の偏り、体調を崩すのではないかということを当初から懸念していました。幸い、それに対して、全国から昼食に炊き出しがあって、ある程度、避難所の皆さんを含め、おいしいものは食べられるようになってきてはいるのですが、食中毒防止のために、生野菜やカットフルーツ、卵などは一切配られずに、栄養不足や偏りは相変わらず続いているという状況です。

こうした食事があって、最近はめまいやむくみ、足がつるという症状を訴える住民も出てきました。そこで水道も回復してきましたので、自分たちで食べたいものが作れるようにということで、今自炊を進めています。ただ、毎日毎日のお弁当をやめて作っていくことに対して、本当に作れるのだろうか不安を感じている人も多く、自炊というのも、正直進んでいないこともあります。毎日毎日やらなければというプレッシャーではなく、作れるときに少しずつ、精神的な負担を減らしながら、またその内容も汁物といった簡単なものでスタートして、徐々に慣れていったらいいのではないかと私は感じています。

さまざまな場所で暮らす避難者のために

避難者の方は避難所だけでなく、テント、車中泊、そして居住自治体から離れて暮らす県外避難者もいます。総務省は東日本大震災を機に、県外避難者の居場所を把握するために、全国避難者情報システムを設置しました。東日本大震災では住民票を地元に置いたままで県外に避難された方も少なくなくて、こういった住民の居場所をつかめなかったために、支援が滞ったことを教訓として、被災者が避難先の市町村に、「今私はここにいますよ」という居場所を伝えることで、元の住民票がある自治体に情報が入って、見舞金を含む各種給付金や税金、社会保障の減免や猶予などの支援情報を届けられるようになりました。しかしながら、このようなシステムがあるにもかかわらず、被災自治体からの要請がなければ稼働できないという運用の問題もあって、今回の熊本地震でも町からの要請がなければ総務省も導入できないという問題がありました。ところが役場のほうでは、市町村にいる避難者の対応でいっぱいで、そこまで手が回らないという状況にあります。こういったシステムがあっても使えないのではもったいないので、総務省は積極的に支援を打ち出していくことを考えてほしいと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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