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防災インタビューVol.130

大地震への備え ~熊本地震からの考察~

放送月:2016年7月
公開月:2017年2月

国崎 信江 氏

危機管理教育研究所代表

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

車中で過ごす避難者たち

熊本地震では、避難所に入りきれない方が居場所の一つとして車で過ごすということを選ばれました。益城町では4月14日と16日、2度も震度7という揺れを観測しました。車中泊を選ばれた理由は、家が損壊したからということだけではなくて、揺れに対する恐怖心もありました。揺れを恐れて、天井がある所で寝るのが怖くて、建物自体に入れなくなった子どもや大人が少なくありませんでした。そういった人たちはテントや畑のビニールハウスなどで生活していました。また、いったんは避難所に入っても、やはり精神的に怖いという方もいましたし、小さなお子さんがいて、夜泣きをしたり、ぐずったりして他の人に迷惑をかけるのではないかと気兼ねしたり、認知症の親が昼夜かかわらず、ずっと動いて他の人たちに迷惑をかけてしまうということで、避難所で過ごすことをあきらめて車中泊を選ぶ方々もいました。しかし、狭い車中で過ごすと、エコノミークラス症候群などの心配もあります。そこで、益城町ではできるだけ車から出てもらおうということで、「リフレッシュ避難」、今は「しばらく避難」と呼んでいますが、町外の温泉にバスツアーで行くという企画を打ち出しました。日帰りではなく、好きな日数、例えば数週間でも、数カ月でも、その温泉施設に好きなだけ滞在できますという企画でした。ところが、梅雨が来る前に自宅の後片付けをしたいという希望があったり、精神的な面や盗難などの犯罪の心配から、今家から離れたくない、家の近くにいたいということで、当初はあまり参加がありませんでした。しかし、「雨の日は何もすることがないので参加してみよう」ということで参加したら、思いの外良かったということが広まって、少しずつ参加者が増えていきました。「被災地から離れて体を休めることで、かなり気持ちが落ち着いた。離れることも大事だね」という声もたくさん聞きました。

避難所はもちろんのこと、テント泊や車中泊の世帯一軒一軒、医療関係者や福祉関係者が巡回して、「こういった企画がありますよ」とか「健康面はどうですか」という声掛けをしながら支援をしてきました。また、お弁当などの支援物資の配布も避難所にいる方だけではなく、車中泊や家にいる方も希望があれば受け取ることができるので、そういうことも周知をしてきました。また、車中泊の方にはエコノミークラス症候群の予防のために、着圧の靴下なども配られましたし、敷地内にテントを設置して、ボランティアによるヨガ教室なども開催され、日中はできるだけ体を動かすように、いろいろな対策を打ち出していきました。最近では揺れに対する恐怖も少し落ち着いてきたのか、空きスペースのある避難所に入られる方も増えてきています。

大規模マンションを指定避難所に ~首都直下地震に備えて~

熊本地震でもいっぱいになった避難所がありましたが、首都直下地震が起こった際には、首都圏ではマンションで暮らしている方も多くいて、その人口の多さからも絶対的に避難所に入りきらないということが言われています。特に高層階の方々は、益城町のように精神的な不安から自室にいられないという方もいると思うので、そういった方々をどうするかという問題が出てくるかと思います。私は、特に世帯数の多い大規模マンションは避難所に準じる準避難所として指定するべきではないかと考えています。それは、単にエントランスや共用部分に一時的にマンション居住者を収容すればいいという枠の話ではなくて、まさに避難所として、人的、そして物的支援を含めた措置への拡大が必要だと思っています。

熊本の避難所では、避難所で暮らしている人と、それ以外に「外の人」がいます。ここで言う「外の人」というのは、避難所以外の自宅にいたり、車中泊をしている人たちのことで、この方たちのためにもお弁当を準備しています。そういった外の人たちは、お弁当の配布時間になると避難所に取りに来るのですが、これを首都直下地震で考えた場合、今までの避難所とは違って圧倒的に人口が多いので、お弁当をもらいに行くためだけに、その時間帯に大移動が始まるのではないかと思います。首都圏は地方と違って、小学校もそれほど大きくはないので、狭い敷地の小学校に食事を取りに行く人が大移動をした場合、その道路上の混雑も起こりますし、避難所にも入りきらなくて溢れてしまうというようなことが起こり、お弁当一つもらいに行くだけで大混乱になりますので、1日2回食事を配布したら、それだけで毎日大きな問題になるのではないかと思います。それを防ぐためにも、大規模マンション自体を指定避難所として指定すれば、自衛隊や業者さんが直接マンションに食糧などを持って行って、そこで居住者の方々に配れば大移動もないので混乱も防げると思います。これは食べ物だけのことではなくて、例えば断水してトイレが使えなくなったら、近くの避難所に行って仮設トイレを使うという方もいるでしょうし、必要な物資ももらいたいということで移動があると思います。こういった食事やトイレや物資のために、マンション居住者の方が一日に何回も避難所を往復することの移動の課題を考えれば、やはり大規模マンションは、指定避難所として位置付けていたほうがいいのではないかと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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