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防災インタビューVol.132

地域を守り、会社を守るためのBCP

放送月:2016年9月
公開月:2017年4月

中澤 幸介 氏

新建新聞社取締役、リスク管理.com編集長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

熊本地震での企業のBCP

熊本地震は、14日の夜9時25分に起きた地震よりも大きな地震が16日の未明、夜中の1時過ぎに起き、最初に起きた地震を前震、後からの地震を本震という呼び方をしていますが、2回にわたって大きな地震に見舞われました。その中で、富士フィルム九州という、精密機械に使うフィルムを作っている会社では、地震の直後は24時間体制で動いていました。14日の前震が起きた直後から社員全員の安否確認を直ちに行って、全員の無事を確認すると、直ちに対策本部を立ち上げ、本社と連絡を取り合って被害状況の報告をしています。その後の本震の後も、それまでの地震対応でへとへとに疲れている中でしたが、やはりすぐに従業員対策本部の役員が集まって、対策本部を立ち上げて被害状況を確認し、本社との連携を取っていました。

この会社では、実際に安否確認が取れる体制ができていた、対策本部に集まれたということ自体が、非常に大きなことです。また、事前に本社の天井が崩れたり、壁が崩壊しかかったりした場合に備えて、本社の外の倉庫に対策本部を設けるというようなことをしっかりと準備しており、非常用発電機や大きな照明、被害状況がすぐに確認できるようなホワイトボードや通信機器、食糧や水というようなものも、全て揃えてあったからこそ動けたという非常に良い事例ではないかと思います。これはやはり普段から準備をしていないとできない事例です。

もうひとつ、地元の住宅を造っている工務店、アネシスという会社では、前震が起きた夜9時半ぐらいに、ほとんど全社員が会社に集まって、それから夜中の1時ぐらいまでかけて、お客さんに電話連絡をしました。「非常に大きな揺れだったので安全を確保してください。明日以降、住宅で心配なことがあれば、改めて電話をください。家は大丈夫だと思うので、落ち着いてください。」ということを伝えるために、全社員で声掛けを行ったということです。やはり、これを可能にしたのは、繰り返しやってくる台風などの自然災害に対して、普段から災害に備えるという姿勢が社員一人一人に根付いており、災害の際にはいち早い支援が求められるので、そういう中で日常的な行動として、何か変わったことがあれば全社員で対応に当たるということが、組織の文化として根付いていたということだと思います。

これは、「企業として社会に何が求められているのか」ということを社員一人一人が分かっていないとなかなかできない対応だと思います。もちろん小さいお子さんがいる社員は駆け付けることができないにしても、強制的ではなくて自主的に集まって来る、こういう文化を築いていくというのは非常に素晴らしいことで、尊敬に値する会社です。

外からの支援と現地の連携

熊本地震の別の事例で言うと、大企業では、現地の子会社やグループ会社に対してどれだけ早く支援ができたかが、うまく対応できた企業とできない企業の差になったと思います。これは、どういうことかと言いますと、早い時点から支援スタッフを送った会社のほうが、現地の負担は小さかったのではないかと思っています。ただ、これは数を送ればいいということではなく、どういう支援が現地に必要なのかを判断できる本社側の人間が先遣隊として、混乱している現地に入って、現地はこういうことを今困っている、こういう支援が欲しい、こういう専門家が欲しいということを見極め、調整をするということが大きなポイントになっていると思います。現地では、実際に会社に出てこられる人数も少なくなっているような状況で、支援が欲しくても、それを発する声も出ないような状態の中で、調整役も含めて本社側から先遣部隊を送ることで、現地は負担が非常に軽減されたという話を多く聞きました。

反対に、いろいろな支援が外部から入ってきても、多くの方は土地勘もありませんし、被害の全体像というものが見えない中で、何から手を付けていいのか、どう動いていいのかというのが、支援部隊だけではやはり分からないという状況も発生します。そのような中で、新産住拓という会社では、県外の職人さんが集まって来る中で、自分たちの抱える現地の職人と外部の職人をうまくミックスさせたグループを作ることによって、現地の職人が司令塔になって「こっちに行って仕事をしよう、あっちに行って仕事をしよう」ということでうまく機能したという例もあります。

このように、本社側と現地の連携、外からの支援と現地の連携、こういう連携というものが今、これは熊本地震に限らず、これからいろいろな地震、災害でポイントになってくる部分ではないかと思っています。これは行政にも言えることで、被災した自治体というものは職員も大変ですし、避難所の開設や、その他やらなければいけないことがたくさん出てくる中で、県外からたくさんの支援が来るわけですけれど、やはりここの連携がうまくいかないと、自治体も回らなくなってしまいます。こういう部分は行政であっても民間であっても同じことだと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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