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防災インタビューVol.140

気象災害から身を守るための知恵

放送月:2017年5月
公開月:2017年12月

村中 明 氏

元気象庁予報課長、CeMI環境・防災研究所

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

人が人を動かす防災

私は長い間気象予報や災害防災に関わってきましたが、気象防災の目標というのは、気象災害による人的な被害をゼロにすることだと思います。例えば強風が吹いたり雨が降って川の水が溢れたりした際に、不幸にして田んぼが水に浸かってしまったり、ビニールハウスが潰れてしまったり、果樹が落ちてしまうことがありますが、そういうものは移動させることができないので、残念ながら被害に遭ってしまうこともあります。しかしながら、人間は少なくとも危ないと思ったら、避難して安全な所に逃げるという行動をとればいいわけですから、そういう意味では気象災害が起こったとしても、人的な被害はゼロに必ずできると思っています。

私は自治体や防災に関心を持っている方にお話しする機会がよくありますが、「防災の基本というのは、やはり人が動く防災」、あるいは言い方を変えると「人が人を動かす防災」でなくてはいけないと伝えています。例えば自らが避難する、自分が動くというのもそうですし、避難勧告や避難指示が出たときにも、自治体側としてはそれを発表するだけではなくて、具体的に人が行動を起こせるように、住民が何らかの形でスムーズに行動に起こせるように考えていくことこそが、気象災害を防ぐという意味では一番のポイントではないかと思います。

今まではどちらかというと、自治体が「避難してください」「避難が必要ですよ」という情報をもっぱら流して、それに従って「避難勧告が出れば避難する」ということをしていましたが、それでは「人が動く防災」という意味では十分ではありません。やはり防災の基本は、自治体などが住民を助ける「公助」ではなく、公に頼らずに自らが自分を助ける「自助」、あるいは地域や家族など、お互いが助け合う「共助」が非常に大事な部分だと思います。公助、共助、自助の中でも、まずは自分自身で身を守る自助が一番重要です。

最近では高齢化が進み、一人暮らしの方や、お年寄り二人だけで暮らしていて、相手が寝たきりの方も多くなっています。実際に避難しなければならなくなった場合に、山間地で歩いて避難するしかない方が、危険な状態の時に歩いて移動をするのは困難です。また、そのような方、一人一人に対して、市や町が全部フォローできるのかというと、限られた要員で防災を担っていくのは非常に難しいです。やはり集落や地域で、そういう方をフォローしていくこと、車に一緒に乗せて避難所に連れていくというようなことが非常に大事になってくると思います。実際、自治体などのタイムラインの取り組みを見ていますと、非常に問題意識が高まってきていて、地域みんなで必要な援助、支援をしようという輪が広がりつつあります。こういう動きは、10年前、15年前と比べて、全然違ってきていることを実感しています。

「もしも」に備える

災害では自助が非常に大事だとお話ししましたが、そのためには、一人一人が、天気予報やニュースを聞いて、台風が近づいている、雨が強くなっているということを判断して行動することが必要になってきます。ここで大事なことは、気象災害をもたらすような気象現象をどこまで正確に予測できるかということになります。現在はかなり予測技術が進んではきていますが、気象現象というのはやはり自然現象ですので、完全に正確に予測できるというわけではありません。例えば集中豪雨の場合は、これから今夜にかけて起こる可能性があるということは最近の技術ですとかなりの精度で言うことはできるのですが、何時にどの場所でどのぐらいの雨が降るのかというところまでは、今の予測技術ではまだ難しいです。

私も長い間気象庁にいて、「予報が当たらない」「警報を出すけれどいつもオオカミ少年じゃないか、降ったためしがない」というような苦情を聞いてきましたが、「オオカミは来なかったけれど、隙があったら襲うぞ、すぐ隣の藪の中で見ていたんだ」と思っていただければと思います。これを災害に置き換えると、「たまたま今回は隣の町で大雨が降ったけれど、これはご自身の頭の上では降らなかっただけで、大雨に対する警報や情報が出ている時というのは普段に比べると格段に危険が高くなっている」と考えていただきたいのです。オオカミ少年じゃないかと思うのではなく、何かの対策をしなければいけないと思っていただけたらと思います。気象防災に対しては、「まさか」ではなくて、常に「もしも」ということを考えていただき、「もしも自分の所に大雨が降ったらどうなるか」ということを考えて行動していただければ、防災に対する考え方も違ってくるのではないかと思います。

気象災害というのは、一般の人々にとっては、普段起こらないことで、非日常のことで、それがある日突然、自分の身の上に降り掛かってくるわけですから、非日常のことを日常から切り替えて考えるということは、非常に難しいことだと思います。その非日常の世界に対して、どんなタイミングで切り替えるか、スイッチを入れて防災行動を起こすかということが非常に大事で、そういう意味では先ほどの「まさか」ではなくて、常に「もしも」ということを考えておいていただけるといいと思います。

そういう目で見ると、恐らく自分の身の回りにあることも、すごく違った目で映るのではないかと思います。例えば目の前にある下水の排水溝が落ち葉で詰まっている。日常生活の中でそれに気付いて取り除くだけで、場合によっては浸水が防げるかもしれませんし。また、自分の前を流れている小さな川が、雨が降るとどのぐらいの時間で水位が上昇してくるのだろうというようなことをちょっと注意しているだけでも、防災行動というのは全然変わってくると思います。常に「もしも」ということを考えて、そういう目で周りを見ていただければ、世界が変わってくるのではないかと思います。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。