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防災インタビューVol.144

ADRAの活動を通した被災者支援

放送月:2017年9月
公開月:2018年4月

渡辺 日出夫 氏

特定非営利活動法人 ADRA Japan
国内事業(防災・緊急支援)担当マネージャー

支援団体の連携

被災地でのNPOの活動にはさまざまなものがあるということをお話ししましたが、実際にはその支援する側にも解決しないといけない問題があります。そのひとつが、支援団体同士の連携の必要性です。被災地にはたくさんの団体が来ますが、なかなか支援団体同士がつながることが難しいということが大きな問題になっています。
東日本大震災の時は非常に被害が大きかったので、いろいろな支援団体が避難所にやって来ました。メディアが取材に行く避難所には、10も20も支援団体が来るのに、別の避難所には支援団体が全く来ていないという事態もありました。それにはいろいろな理由もあるのですが、支援する側もお互いに情報共有をしながら、場所による支援の濃淡を減らしていこうという動きも、東日本大震災の後に少しずつ出てきています。
2015年の関東豪雨水害の時に、私も少し関わらせていただいたのですが、行政と社会福祉協議会と支援団体が一緒になって官民共同で情報共有をしましょうという動きができました。課題は何なのかを洗い出して、行政で解決できる課題は行政が、行政では無理な課題はNPOが担うというような形でやり始めたのが、つい最近の2015年になります。2016年の熊本の地震の時にも体制を整えて官民共同で活動しましたし、2017年の九州北部の豪雨でも一緒に活動を行い、今も続けています。特に最初の頃は皆さん毎日夜6時半ごろに、昼間の活動を終えたら集まって、「今日どういう課題があったのか?」を確認しあったり、「この課題はうちの団体じゃ解決できないんだけれど、どこかできませんかね?」というようなことを言うと、どこかの団体が「ああ、それならうちができますよ」とか、「うちはできないけれどそれができそうな団体を知っているから紹介しますよ」というような情報共有が行われるようになってきています。
今までこの仕組みがなかなかできなかった理由のひとつに、日本の場合は、ある意味行政が非常に強いので、何でも行政でやろうという体制になっていますので、行政が頑張り過ぎてしまうことが挙げられます。一方海外では、この支援団体側のネットワークというのが既にできていて、「共有会議」が持たれています。日本では行政が頑張ってしまうという長年の文化というか歴史があって、NPOとの連携をしてこなかったのと、NPOの認知度が低いために「どちらかというと怪しい人たちで、何をするか分からない」というところがあって、行政との連携がうまくできなかったのですが、海外を見習って、もっと情報共有をしていくべきだと思います。
海外では、やはりNPOも歴史が長いですし、キリスト教文化のような奉仕やボランティアというのが根付いた文化であることによるのかもしれません。一方、言い方は悪いかもしれませんが、海外の行政というのは、「私たちではできません」と両手を上げてしまって、「支援団体さん、お願いします」と言ってしまうところもあり、日本とは逆になっています。

調整会議 ~コーディネーションミーティング~

実を言うと、国連では「調整会議」、一般的には「コーディネーションミーティング」と言っていますが、国連が主導して、いろいろな支援団体を集めて、分野ごとに「子どものテーマのグループ」「衛生のグループ」というような分科会的なものを持ちながら、支援者の調整を長年してきました。東日本大震災の時も国連から援助の申し出があったのですが、日本政府がそういう国連の仕組みを受け入れておらず、要するに行政が「私たちが出来ますから」というところがあったので、日本ではうまく機能していませんでした。そこで、東日本大震災の際に場所によって支援の濃淡が出てまった苦い経験を生かして、私たち支援団体でも、「それならば自分たちでやっていこう」ということで今動き始めています。熊本の震災でもそれを生かして、少しずつ活動していく上で、熊本の行政にも認知してもらうことができ、2017年の福岡の災害の時には、同じ九州ということもあり、熊本の行政から「ここは大丈夫だから、ここと一緒に組んでやったらいいよ」という働きかけもあり、内閣府の方も後押しをしてくれまして、行政も入れた支援の調整会議というのが、かなり早い段階から出来るようにはなってきています。このように、少しずつではありますが、良いほうに変わってきています。
避難所の運営についても、行政で全てを見られるわけではありませんし、外国人もいれば、障がい者もいますし、高齢者もいますので、行政だけでは人手も足りません。しかしながら、災害支援の経験がある専門知識を持ったNPOがそこに加わることで短期間に改善できることもたくさんあります。実際に、東日本大震災の被災地ではこのような共有会議が持たれていますが、今後も同じような大きな被害がどこかで出てしまった際に、突然集まって来ても、すぐに円滑に活動ができるわけではないので、災害が起きる前の平時から顔の見える環境をつくっておくことが大切です。そのためにも、顔の見える関係をつくるための活動も今少しずつ始めています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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