1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. まちづくりと建築土木
  6. ADRAの活動を通した被災者支援
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.144

ADRAの活動を通した被災者支援

放送月:2017年9月
公開月:2018年4月

渡辺 日出夫 氏

特定非営利活動法人 ADRA Japan
国内事業(防災・緊急支援)担当マネージャー

顔の見える関係づくり

情報共有のための「顔の見える関係づくり」というと、日本では「飲みにケーション」だとかを想像されるのではないかと思いますが、私たち災害支援をやっているNPOというのは、基本的に災害支援のプロフェッショナルになるわけです。プロフェッショナルといえばかっこいいのですが、日本的にいうと「職人」です。災害というものは、一つ一つ違っていて同じ災害というのは一つもないので、支援も全く同じようにやればいいというものではありません。東日本大震災の時にやったことを熊本の地震の際に同じことをやればいいのかというとそれは違います。そう考えると、実を言うと災害支援においてマニュアルを作るということは非常に難しいわけです。どちらかというと、職人の感覚で、職人がその時の状況に合わせて少し変えながら、いろいろなことをやっているのが現実ですが、そのマニュアル化しづらい職人技を、市民の方にも分かるように見える化して、形にしていこうとしています。その活動こそが私たちの顔の見える関係づくりとなっています。その一環として、いろいろなツールを作るというところから今少しずつ始めています。
例えば、最近でいうと「水害の対応マニュアル」というものを作りました。水害が起きたら住民はどうすればいいのかというもので、「こういうポイントで写真を撮っておくといいですよ」とか、「こういうものは濡れたら使えませんよ」とか、例えば「じゅうたんとかカーペットは濡れたら使えないので処分しましょう」とか、「カラーボックスなんかは乾いても実は中の方にカビが生えていますから濡れたら捨てましょう」とか、一方で「エアコンの室外機などは、乾かすと使える可能性があるので、すぐに電源を入れたりしないで、しっかり乾かしてからやってみましょう」というようなものです。それと、皆さんも火災保険や地震保険などに入られると思いますが、保険証書が濡れてしまったり、家屋の下敷きになって分からなくなってしまった場合も、名前や住所を伝えれば、何の保険に入っていて、どんな保険が下りそうなのかを教えてくれる保険会社の総合センターがあるので、そこの連絡先を載せて災害後に配るパンフレットを作っています。このようなマニュアル化というか、見える化をするためにいろいろなツールを作ることを今進めています。
もちろん行政でも住民に向けていろいろな資料を作っていますが、住民も最近は高齢化しているので、「文字ばかりで、長すぎてよく分からない」と言われがちです。そこで私たちは、最低限ここは押さえてほしいというところを、イラストなどを入れながら作っています。例えば、家が被害を受けて、その写真を撮るときにも、行政の資料ではただ「被害を受けたお家の写真を撮りましょう」と書いてあるだけなので、「どこをどうやって撮ったらいいのか分からない」という住民の声を受けて、写真を撮るポイントを絵にして、「四つ角のこのくらいの位置から、こういう撮り方をしたらいい」というふうにマニュアル化しています。このパンフレットはインターネットからダウンロードもできます。これはアドラのWEBページではなく、「震災がつなぐ全国ネットワーク」のページでご覧いただけます。「震つな」と検索していただけると出てきます。

震災がつなぐ全国ネットワーク ~震つな~

「震災がつなぐ全国ネットワーク」、通称「震つな」では、阪神淡路大震災を機に、私たち支援団体が互いの違いを認めながら、過去の災害が教えてくれた課題を基に提言をしていくというようなネットワークを作りました。そこでは、先ほどの「水害のマニュアル」や「避難所での暮らし方」のポスターなどを作っています。全てダウンロードできますので、まずは「震つな」で検索していただくといいと思います。
このように「震つな」も含めたネットワークが日本にもいろいろあります。そういう所では、平時の関係づくりを始めていて、それによって、災害時には、今まで以上により早く情報共有をしながら、取り残すことなく被災された方全員に支援が届けられるようにと頑張っています。このネットワークも、私たち市民団体、NPOだけではできないことなので、行政や企業の力を借りながら、みんなでつくっていきたいと思っています。
そして皆さんには、被災地では、「自分たちだけが被災者ではない」ということをまず覚えておいてほしいと思います。行政の方や医者、学校の先生、消防団、社会福祉協議会、福祉施設の職員さんたち、その地域にいる全員が被災者です。被災されても、すぐに行政や支援をしてくれる方が来ることが出来ないかもしれません。その時にでも、最低限72時間、3日間は自分たちや、近所の方々と一緒になって、災害を乗り越えていく力を付けていってほしいと思っています。どうしても日本人は何か大きな災害が起きると「税金を払っているんだから、行政がやってくれるだろう」と考えてしまいがちですが、災害が起きた直後はなんとか自分自身、そして周りの人とみんなで協力し合ってほしいと願っています。最初の3日間、自助、共助で頑張ってもらえれば、私たち支援団体、NPOなどが被災地に行って活動します。「100%信じろ」とは言いませんが、8割方信じていただいて良いと思います。そして、私たちのような団体を受け入れる時は、丸投げをするのではなく、最初は「この部分をお願いしたい」というように依頼してもらえればと思います。まずは、炊き出しだとか、お茶飲みスペースの運営だとかを依頼してみて、「信頼できるな」と思ったら、もっといろいろなことを一緒にやっていくというのがいいかと思います。皆さんには支援に来たNPOを追い返すのではなく、まずはお話を聞いてもらいたいなと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

会社概要 | 個人情報保護方針