復旧復興までが早いマンション、遅いマンション
熊本地震において、マンションもかなり被災しておりまして、もう1年以上たっていますが、実際はまだ復旧復興がなかなか進んでいないという現実もあります。その理由の一つとして、マンションは共有の建物ですので、必ず多数決による合意形成が必要です。今回の熊本地震の際は、親戚の家が九州内にある方も多く、そちらにいち早く避難してしまった方もいて、管理組合総会が開催できないことによる遅れが一番多かったと思います。
通常は、管理組合総会が開催できないと何も決められないし、何も進みません。そうすると、どんどん復旧復興が遅れていくことになります。現在も、別の場所に避難した区分所有者と連絡がつかないことが、やはり一番問題になっています。この手続きが遅れて時間がたつと工事業者さんも取り合いになりますし、オリンピックの時期とも重なって人手が足りないということで、地方から出てきた作業員も多く、作業単価も上がるため工事費も高騰しています。普段では相見積もりなどを取って、きちんと検討して決められることも、緊急時は、とにかく早く直すことが基本なので、相見積もりなどは難しくなります。それが何とか通ったとしても、今度は修繕費用が工面できない、地震保険に入っていない、入っていたけれど思ったほど補償金が出なかった、保険金が全然出なかったということもあります。逆に、罹災証明書があれば、公的な義援金も受けられますので、こういう知識があれば、義援金を受けて復旧復興をしようということになりますが、そういう知識がなく自分たちでお金を出して修繕することになると、なかなか合意が取りにくいということもあります。
熊本地震で復旧復興がスムーズにいったマンションの話を、震災から1年後ぐらいに聞く機会がありました。熊本地震の場合は震度7が2度来ましたが、そのマンションではベランダ被害や部屋の中の被害について、地震から2日後には全戸アンケートを取って被害調査をして、保険会社とも交渉しました。ちょうどこのマンションは大規模修繕と重なっていて、委員会も立ち上がっていましたので、皆さん、設備にもとても精通していましたし、リニューアルしようということで、いろいろな手法をずっと検討していたので、すぐに対応ができ、復旧復興がスムーズに進みました。
「マンション防災認定管理者制度」
マンション防災を進める上で、やはり備えが大事になってきますが、なかなか自分のマンションで何をしたらいいのか分からないという方もいらっしゃると思います。そこで私どもの団体では、管理組合の方向けに「マンション防災を進めたいけれど何をしたらいいのか分からない」ということを解決するために、認定資格として「マンション防災認定管理者制度」をつくりました。これは今まで説明してきたことを全て学べるようになっていて、実際のマンションの設備を見ながら、災害時にどういうリスクがあるのかを解説したり、マンションの具体的な防災計画、MLCPをつくるための策定のポイントや、合意形成をするためのワークショップやワールドカフェなどを行って、技術を習得していただきます。また、実際に発災時の初動対応について、災害対策本部を立ち上げ、どういう動きをするか、シミュレーションをしながらワークショップで学んだりしています。これは2日間の研修ですが、かなり集中的にみっちり行いますので、今まで本当にどういうことをしたらいいのか分からないといった方、また今までいろいろやってきたけれどもなかなか具体的に計画が進まないマンションなど、実際の計画を立てるのに、とても勉強になるような研修になっていると思います。
この研修においては、マンションの管理組合の方、防災組織に携わっている方、管理会社の方や警備会社の方など、マンション防災に関わる全ての方を対象にしていますので、非常に勉強になるようなプログラムになっています。これは年に1、2回行っていまして、MALCAのホームページを見ていただければ募集要項なども載っています。この研修を終えた方に「マンション防災認定管理者」という資格を授与しています。今後さらに上級の資格試験についても考えているところです。こういう講習も一度受けておくと、本当にいろいろ役に立つと思いますので、ぜひ参加していただければと思います。
