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防災インタビューVol.146

子どものための「防災キット」

放送月:2017年11月
公開月:2018年5月

野村 昌子 氏

株式会社 電通サイエンスジャム

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

プロフィール

私の本業は、電通サイエンスジャムで省庁や自治体企業さまをクライアントに、広報やコミュニケーションの戦略、プランニング、製作から実施までを仕事としている一方で、主婦であり中学3年生の娘を持つ親でもあります。特に省庁や自治体の仕事では「ソーシャルソリューション」といわれる領域、つまり社会の課題を解決するために、どのような情報をどのように発信すればよいのかを考えて実際に行うという仕事をやっています。伝える内容によっては、ある時はアワード、イベント、ある時は冊子を作ったり、ある時はSNSで発信したりなど、仕事の中身も多様なものになっています。
仕事のテーマについても「ソーシャルソリューション」ということから社会保障や食料自給率、教育やダイバーシティなど多岐にわたっています。「ソーシャルソリューション」とか「社会的課題の解決」などと言ってしまうと、とても大きなテーマに聞こえますが、実際は社会を構成する私たち一人一人が直面している課題や、身近な人たちが関わっているテーマがほとんどです。毎日の暮らしによく目を凝らして、主婦ならではの、ぬかみそ臭い発想で仕事をしているのが実情だと思っています。その他にも少し変わったところでは、音楽祭や子どもたちを対象とした教育のイベント、アートイベントなどもお手伝いしています。
防災については、東日本大震災の支援活動をきっかけに、支援から防災へと仕事の領域が広がって、防災士の資格を取ったり、東大の先生と防災の教材を開発したり、あるいは東京都が2年前に全戸配布した「東京防災」のお手伝いもさせていただきました。その他、学校の保護者や地域の方々を対象とした防災セミナーの講師なども、お引き受けしています。防災に関わるきっかけになったのが東日本大震災の支援活動で、実は東日本の孫さんが作った財団をお手伝いし、それが広がって、防災の仕事をしていく中で「東京防災」にも関わっていくという流れができてきたという状況です。しかしながら私は防災については決して専門家ではないと思っております。さまざまな領域の仕事をお手伝いさせていただいているうちに、防災を考えるヒントが逆に生まれてきたり、専門家ではないからこそ、子どもを持つ親の視点や主婦の視点を大切にしながら防災を考えて、少しは違う目線からお役に立つということで仕事に結び付いているのかと思っています。

親の視点から作製した「防災キット」

このたび製作しました学習塾のオリジナル「防災キット」について、ご紹介させていただきます。実は、これまで携わってきた他のテーマでの経験や、子どもを持つ親の視点からの考え方なども、その防災キットにたくさん入れ込んでいます。そして、さまざまな領域でお世話になった方々の知恵やスキルもお借りして、この「防災キット」を製作いたしました。
この防災キットは、東京、埼玉、千葉、神奈川で学習塾を展開するスクールFCの生徒、小学校3年生から中学3年生の子どもたちを対象に開発したものです。東急沿線には用賀校とあざみ野校があります。その学習塾の生徒たちの塾の行き帰りに「もし地震が起こったら」ということを想定して、最低限持っておいたほうがいいだろうと思われるものを考えて、セットにして配布しました。具体的には、スクールFCの生徒であることが一目で分かる視認性の高いポーチ、地震で閉じ込められたり、身動きが取れなくなったときに助けを呼ぶための防災ホイッスル、そして塾への通学中に地震が起きた場合、子どもたちが直面しそうな状況をイメージしてもらい、行動を考えるために用意した防災メモです。この防災メモはスクールFCの校舎が立地する自治体の災害対応とか、あとは生徒の通学状況に合わせて開発し、東大の目黒公郎先生と沼田宗純先生に監修していただきました。さらに塾から帰る時は学校から帰る時と違っていて、夜間で暗くなっていることが多いことも考え、停電に備えたミニライト、家族と連絡を取るときに必要なテレホンカードや小銭、少しでも不安な気持ちを和らげるためのキャンディーなど、ポーチの中に入れるものを家族で話し合って準備していただくよう、保護者の方々にお願いしています。
この開発のきっかけとなったことが、大きく二つあります。一つは3年前に聞いた小学校6年生の男の子の一言、「僕たちが働き盛りの30代、40代になったころの日本って、財政破綻していて、首都直下地震や南海トラフ地震の復興で大変な時代になっているんじゃないかな」というものでした。彼の言葉はとても衝撃的で、今後30年の間に70%の確率で発生すると予測されている首都直下地震や南海トラフ地震について、大人は起きたときのことを心配している人がほとんどですが、起きた後の日本についてイメージしている人は、そんなに多くはないのではないでしょうか。それを子どもたちが自分のこととして心配している。しかも起きた後の日本の姿をイメージしているという事実に、大人としてどう応えればいいのだろうかと、とても考えさせられました。もちろん社会全体が災害対応力を付けて、なるべく被害を少なくすることも大切だと思います。しかし被害を受け、復興に携わる当事者の世代の子どもたちが、その時代を自分事として心配しているという事実に、大人として親として、きちんと目を向ける必要があるのではないかと感じています。
彼の言葉にはもう一つ、「災害に対する危機意識は大人より子どものほうが高いのではないか」ということも感じました。大人が防災をやらない理由の一つとして、よく言われるのが「これまでも地震が来ると言われて大丈夫だったから、何とかなるんじゃないか」という意識、いわゆる正常化バイアスが働いていると言われますが、子どもたちの世代では、まだこの正常化バイアスが働いていないため、地震に対しても本当に素直に恐れる意識があるのではないかと感じています。加えて、学校では防災訓練が頻繁にあり、社会見学などに行って、起震車で地震の揺れを体験する機会もあるなど、危機意識を持ちやすいということも言えます。とすると、防災教育には適切な情報を、子どもの発達に合わせた適切な時期に、適切な方法でインプットすることも有効ではないかと考えています。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。