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防災インタビューVol.164

「ペットのための防災対策」

放送月:2019年5月
公開月:2020年1月

田中 奈美 氏

武井動物病院
学術担当・獣医師

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

ペットとの同行避難

災害時は、動物の命を守るためにも、まず飼い主さんの命を守ることが大前提です。その上で「ペットと一緒に同行避難する」ということが推奨されています。ペットと同行避難をすると聞くと、どのようなことが思い浮かぶでしょうか。
同行避難というと、避難所に一緒に逃げていいのだろうかと思われる方もいるかもしれませんし、避難所で飼い主さんとペットが一緒に過ごしている姿を想像される方もいるかもしれませんが、同行避難の言葉の定義は、「ペットと共に安全な場所まで避難する」、つまり「移動する」ことを示しています。安全な場所というのは時と場合によって異なると思います。災害の種類に応じて指定されている指定緊急避難場所や、避難生活を送る指定避難所、横浜市では地域防災拠点と呼んでいる場所かもしれませんし、近くの高層ビルや自宅の2階かもしれません。同行避難は一緒に移動するということを示しているので、避難所の室内でペットと同居するということではありません。
避難先でペットと飼い主さんがどのように過ごすか、それは避難所の方針によります。受け入れは可能でも、スペース確保や衛生上の問題から室内での飼育が難しいために屋外の指定された場所で飼育すると決められている所が多いと思います。2018年7月の西日本豪雨では岡山県の倉敷市で一部ペットと室内同居できる避難所ができたということがニュースでも取り上げられていましたが、人口の集中している地域で大規模な災害が起こった場合は、そういった対応は現実的には難しいかもしれませんし、衛生管理の問題も残ると思います。ですので、自治体そして避難所の状況に合わせた検討が必要だと思います。また避難所には動物アレルギーや動物が苦手な方もいて、そのような方への配慮も大切だと思います。動物アレルギーの方は触れるとくしゃみが出たり、身体が痒くなるという方や、呼吸が苦しくなってしまうという方もいます。このような方の健康を害する可能性がありますので、避難所で動物を受け入れる場合は原則として飼い主さん以外の方が動物のいる場所に出入りしないよう、はっきりとアナウンスする必要があると思います。  
まずはご自分がお住まいの地域ではどのような扱いになっているか、地域の防災計画や避難所の運営マニュアルなどをホームページなどで確認しておくとよいと思います。参考までに横浜市の青葉区の防災計画を見てみますと、地域防災拠点でのペットとの同行避難対応ガイドラインに基づき、地域防災拠点などでの飼育ルール作りを推進することや、飼育場所などの事前準備を進めていくということが記載されています。
状況にもよりますが、避難所で過ごすことだけが前程ではなく、避難後に自宅の安全が確認されれば、在宅避難をする場合もあると思いますので、その場合の準備をしておくことも重要だと思います。また一時的な預け場所として、親戚や友人、動物病院やペットホテルなどもリストアップしておくとよいと思います。ペットを飼育している人もしていない人も、どのような状況でどこにどうやって逃げるのかということを具体的に決めておいて、家族や友人などと情報を共有しておくことが大切だと思います。さらにペットを飼育している方は、実際にペットと一緒に逃げるとしたらどうするのかを考えておく必要があります。一緒に逃げるためには首輪やリード、キャリーケースも必要です。大型犬の場合はけがの防止のために靴下をはかせるということも可能ですけれど、これは実は普段から慣れさせておく必要があります。さらにペット用の備蓄品も用意しなければなりません。今すぐ行動できるように準備を進めていく必要があると思います。

飼い主の自助による災害対策

災害対策の基本は自分自身で自分の命を守ること、つまり自助だと言われています。これは動物を飼っていても飼っていなくても共通のことだと思います。2018年9月には環境省から飼い主さん向けのガイドライン、「災害、あなたとペットは大丈夫?」が発行されました。これは2018年3月に発行された「人とペットの災害対策ガイドライン」の一般飼い主編と言われるもので、普段からできることとして7つの対策を挙げています。
1つ目は住まいや飼育場所の防災対策です。家具などの転倒防止の他、ケージなど、ペットが隠れられて安全な場所を作るということです。2つ目、3つ目として、ペットのしつけと健康管理、そしてペットが行方不明にならないための対策も必要です。4つ目はペットの避難用品や備蓄品の確保、5つ目は情報収集と避難訓練です。地域のハザードマップの確認や避難所の受け入れ態勢の確認、そして実際に避難ルートをたどってみて、危険な場所はないか事前にチェックしていきます。6つ目に家族や地域住民との連携です。緊急時の連絡方法や集合場所などはあらかじめ共有しておき、いざというときに協力できるペット仲間を見つけておくとよいと思います。7つ目としては、ペットの一時預け先の確保です。
ペットの備蓄品の確保については、さまざまな状況が考えられると思うのですが、まずは在宅避難を1週間することを目標に準備を始めてみたらいいいのではないかと思います。人でも同じですけれど、ペットのためにも、まず命と健康に関わるものというのは確実に準備していきます。優先順位が高いものは水、そしてペットフードは普段食べているものを多めに買い足すようにして、古いものから順番に消費していくようにしてください。動物でも例えば腎臓が悪い子には療法食といって負担を減らすような処方になっているフードがあります。療法食は災害時には特に手に入りにくくなりますので、多めに準備しておくことをお勧めします。また継続して使用している薬がある場合は、それらも準備しておきます。排泄物を処理するための袋やペットシーツなどのトイレ用品も必要だと思います。次に必要なものとして、ペットの基本情報や写真、健康に関する情報、例えばワクチン接種の記録などを控えたものが挙げられます。これらは避難先や預け先で重要な情報となってきます。また動物を清潔に保つために必要なブラシやウェットタオル、ビニール袋などもあるとよいですし、お気に入りのおもちゃは動物のストレスを減らすことができます。他にも猫の場合には洗濯ネットを用意しておくとよいと思います。興奮しやすい猫の場合はこのネットに入れると落ち着いたり、それによって人がけがをしなくて済むということもあります。さらに、災害時では屋外などで獣医師による巡回診療が行われる場合があるので、そういった時に逃走防止のために備えてあると重宝します。このように、これら必要な物を持ち出し袋にも入れて、家の中に分散させて置いておくといざというときに役に立ちます。 
詳しい備蓄品のチェックリストは環境省のホームページからパンフレットをダウンロードできますので、ぜひご覧いただければと思います。当院では動物のことも考えつつ、自分や家族の備えも再確認していただけたらという願いから、「人と動物のための備蓄品チェックシート」という、表が人のため、裏が動物のためのチェックシートを用意しています。飼い主さんがペットの防災について考えることは、ペットだけではなく自分や家族を守ることにつながると思います。ぜひ家族や友人と備蓄品の備えについてどのような工夫をしているのか、話題にしてみてください。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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