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防災インタビューVol.169

支え合う仕組みづくりで減災

放送月:2019年10月
公開月:2020年2月

宮下 加奈 氏

一般社団法人 減災・復興支援機構
専務理事

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

避難所での高齢者対策の重要性

避難所での生活の中で、誰にどんな配慮をするのかを考えることはとても大事ですが、特に、高齢者への対策が非常に重要だと思っています。よく私たちがやってしまうのは、「ご高齢の方だから何もしなくていいですよ」と言いがちで、当然高齢者に対して、守ってあげないといけない、見守っていかないといけないということで、どうしても私たちが手を掛けてしまいがちなところがあります。しかしながら、避難所の生活を担う若手が少ないという現実もあるので、そんな中で高齢者に配慮をしながら、どんなふうに生活をしてもらうのかということを考えていかなければいけないと思っています。

私が生活していた三宅島も本当に高齢の方が多くて、避難先でも高齢の方が孤立しないように、また、健康状態を保つためにいろいろな配慮をしてきましたが、その配慮のあり方が非常に難しいと思っています。「高齢だから何もしなくていいよ」「これは私がやってあげるから」ということを言いがちなのですが、実は意外とこれは高齢者のためになっていないということに気付いていません。高齢の方に配慮してあげる、手助けをしてあげることは非常に大事ですが、配慮をし過ぎることで高齢者の方の生活が成り立たなくなってくるということに気付かなくてはいけません。この気付きと配慮をどうバランスよくしていくのかということが課題です。高齢者にも、できることは自分でしてもらうことが非常に大事です。なぜかというと、高齢の方も普段は洗濯をしたり、掃除をしたり、食事の支度などは自分でされているのですが、こういった避難生活となると、突然そのようなことをやらなくてもよくなってしまいます。避難所では、自分で作らなくても、3食食事も出ますし、いろいろな人が来ていろいろお手伝いしてくれるので、基本何もしなくていい状況になってしまいます。そうなるとどんどん身体が弱くなってしまって、被災する前は元気だった方が、元の生活に戻れないという現象が起きてしまいます。ですので、手を掛けすぎてしまわないように十分に配慮していかないといけないと感じています。

高齢者には、避難所のお掃除のお手伝いをしてもらったり、小さな子どもたちの遊び相手になってもらうなど、周りできちんと仕事を振ってあげることが大切だと思います。高齢の方は、意外と特技をたくさん持っていて、例えば、折り紙が上手だったり、お話が上手だったりすることもあるので、積極的に子どもたちと関わってもらうなど、地域の方々と一緒になって活動しながら、避難所生活を送ってほしいと思います。

若者と高齢者が支え合う仕組みづくり

私は、高齢者の方にもぜひ地域の活動、避難所の活動に積極的に参加してほしいと思っていますが、これは避難所の生活に限ったことではありません。今の日本の社会でも、若者が高齢者を支えるという世界は破綻に近い状態です。年金制度でも同じ事が言われています。

若い人は、日中は自分の家の片付けに行ったり、仕事に行ったりして避難所には居ないことが多いので、高齢者も協力してお掃除などをすることが必要になってきます。例えば昼間は高齢の方が、夜や朝早い時間帯は若い方がというように避難所の仕事を分担することが必要です。高齢者が避難所で何もせずにいると、医療用語でいうところの「廃用症候群」、寝たきりになってしまうケースも出てきますし、何もしないでいると筋力が落ちてきて、生活ができなくなってしまいます。避難所というのは、一生涯生活をする所ではなくて、必ずそこを出て元の生活に戻る、自立をしていくことが必要になってくるのですが、いざ自立をする時になって、それまで健康だった体が動かなくなってしまうのは、本人にとってもつらくて残念なことです。社会としても、面倒を見なければいけない人が増えてしまうのは、非常にマイナスです。

ですので、避難所などではできる人ができることをやり、みんなが積極的に運営に関わって、高齢者にも活躍の場を作ってあげることが必要だと思います。高齢者だから何もさせてはいけない、休んでいてもらいたいということで、ボランティアが力を出し過ぎてしまっては、かえってその方の生活を奪ってしまう結果になりますので、ボランティアに行く側も、相手にとって何が必要で、何をしてあげるのがいいのか、そして避難している人の自立のためには何を一緒にするのがいいのかをよく考えながら活動していくことが求められています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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