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防災インタビューVol.172

自ら考え行動するための防災教育

放送月:2020年1月
公開月:2020年5月

森本 晋也 氏

文部科学省総合教育政策局
安全教育調査官

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

防災教育で一番大切なこと

これまでは釜石東中学校の生徒たちの行動を通して、防災教育について考えてきましたが、これを踏まえながら、「これからの防災教育で何が一番大事なのか」というところを少し整理してお話しできればと思います。 

まず1つ目ですが、子どもたちの言葉の中にも「先生が大事なものとして防災について教えていた」「熱意を持って教えていた」という言葉があるように、教職員もそうですが、私たち大人が、まずこの防災教育の必要性をきちんと認識することが大事だと思います。これだけ自然災害や気象災害が頻発していますし、本当にこれから首都直下や南海トラフの巨大地震の発生が懸念されている中で、「多分大丈夫だろう」というのではなく、「これは起こり得るんだ」「これからの子どもたちはそういう災害に遭う可能性が高いんだ」ということをあらためてわれわれがきちんと認識した上で防災教育をやっていくということが非常に大事だろうと思います。

2つ目に大事なのは、やはり実践的な防災教育だと思います。今文部科学省では防災教育や安全教育を、各教科で学習したことをきちんとつないで、教科横断的に進めていくこと、カリキュラムマネジメントで進めていくことが大事だと言っています。例えば釜石東中学校の生徒の1人が、ちょうど校門から出ようとした所で地震があって、地面がバァッーと引っ張られるような感覚で長く続いているのを感じて、「これは今プレート海溝型の地震が起きているのだ」と思い、「この後津波が来るから避難しなきゃ」と思ったと言います。なぜ、そう思えたのかを別の機会に聞いてみたところ、彼女は、理科の時間に直下型の地震について学習し、総合的な学習の時間にスマトラ島のプレート海溝型の地震のことを学習した後、修学旅行で防災館に行ったそうです。彼女は生徒会のリーダーでもあり防災ボランティーストのリーダーでもあったので、地域の人たちのために自分が何ができるかを考えて、自分で調べてチラシも作ったりしていたそうです。この地域ではどんな地震があり、どれくらいの時間で津波が来るかも頭に入っていたので、あの時に「あっ、これは今プレート海溝型の地震が起きている」というふうに思えたと言うのです。まさにこれが学校での学習という学びの意味です。何のために各教科でいろんなことを学んでいるか、知識を身に付けているかという本当の意味を彼女の言葉から私はあらためて感じることができました。そういった意味で、いろいろな教科での学習をつなげ、子どもたちが自分で考えたり、判断したり、主体的に行動できるようになるための防災教育が非常に重要であると、あらためて思っています。

例えば理科や社会など、各教科の中での学習は充実してきていますし、教科書を見ても東日本大震災のことが入ってきているのですが、それが子どもたちの中で実感として学習がつながっていっているかどうか、ここが非常に重要なところです。「どこか他人事のような学習になってはいないか」というところが、この実践的な防災教育を進めていく上でも重要なキーワードになってくるだろうと思っています。

学校、家庭、地域と連携した防災教育

実践的な防災教育をしていくためにも、やはり私は自助や共助、公助の視点をきちんと防災教育に入れていくことが大事であり、自分たちの地域を自分で歩いて、ここにはどんな災害が起こり得るのか、起きたらどうなるのかを学ぶフィールドワークが非常に重要だと思います。そのためにも学校、家庭、地域、関係機関が連携していくことが非常に大切です。

例えば釜石東中学校の生徒も地域を歩きながら、「あっ、ここまでかつて津波が来たんだ」「この地域には高齢者の方がたくさんいて、ここで津波が来たらとんでもないことになる」ということを実感した上で、「じゃあ、自分たちには何ができるか」ということを学習していますので、このように、あらためて地域と連携しながら自分たちができることをやっていくということが重要です。地域でも避難訓練や防災訓練をされていると思いますが、そこに子どもたちができるだけ主体的に関わっていくことが重要だと思うので、各地域でやっている訓練に子どもたちに役割を持たせたり、子どもたちが自分たちで考えたことを何か実践してみるというような機会を作っていただけるとありがたいと思っています。

ある生徒が聞き取り調査の時に「先生がこれだけ大事な学習として防災について教えてくれているということは、本当に津波が来るんだと思った」と言った生徒がいました。私はこの言葉を聞いた時に、教師として、教育実践に携わる者として、何よりも私たちの姿勢が問われているんだということを子どもから学びました。これは先生だけではなく、大人がどんな姿勢でいるのかということにもつながると思いますので、これからの未来の子どもたちを守っていくためにも、まず私たち大人が「災害が来るんだ、他人事ではないんだ、自分事なんだ」ということをきちんと認識をして、自分たちができる防災活動をやっていければ、子どもたちもその姿勢を見て自ら学んでいくのではないかと思います。ぜひ地域で子どもたちを育てていくという意味からも、地域と連携して、この防災教育に取り組んでいただければと強く思っています。

このように子どもたちが地域と関わって防災に取り組むというのには、いろいろな方法があると思いますが、例えば地域で災害が起きたら、その後実際にどういうふうになっていくかを想像して、タイムラインを一緒に作って考えてみたり、実際に防災活動に参加してみるという方法もあると思います。最近は、気象災害も非常に多いので、それを例にとって、「こういう気象情報が出たら家族でどうするか、どのように行動するか」ということを自分たちで考えてどんどん書き出して、タイムラインを作ってみるというのも1つの手法だと思いますので、ぜひそういうものをきっかけに家庭や地域の人とやってみていただければと思います。行政の方々が避難訓練の呼び掛けを地域の方にしても、なかなか参加しない方もいるというのが実情ですが、高知県のある地域では、子どもが「参加しよう」と声を掛けたところ、参加者が増えていったり、子どもたちが地域の防災訓練に参加することで、今までなかなか参加しなかった若いお父さんお母さん方も参加した訓練ができたというようなケースもあります。まずは、工夫を凝らして、いかにみんなを巻き込んで訓練をするかを考えていくことが非常に重要になってくると思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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