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防災インタビューVol.173

体験に学ぶ 防災対策

放送月:2020年2月
公開月:2020年6月

奥村 奈津美 氏

フリーアナウンサー

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

災害への備え

東日本大震災以降9年間、私は、災害のたびに被災地を訪れて取材やボランティア活動に参加してきました。そこで学んだ教訓を地域の防災訓練などでも伝える活動をしています。まずは、熊本地震から学んだ「家の中の地震対策」についてお話しさせていただきます。2016年4月14日、夜9時過ぎ、熊本県を震源とするマグニチュード6.5の地震が発生して、益城町で震度7など激しい揺れを観測しました。そしてその28時間後にさらに大きなマグニチュード7.3の地震が発生しまして、益城町などで再び震度7を観測したという地震でした。地震の後、益城町でボランティア活動を行った時に出会った女性の話をさせていただきます。地震が起きた時は夜9時過ぎということで、その方はベッドに入っていました。揺れと同時に停電になって、真っ暗闇の中でベッドの足にしがみついて体が飛ばされそうなのを必死で耐えていたそうです。この方は普段から防災への意識がとても高い方で、ベッドの周辺に懐中電灯、車のカギ、けが防止のスリッパなどを用意していたそうです。揺れが収まってから、停電して真っ暗闇の中で、手探りでこれらを探したそうなのですが、何一つ見つからなかったということでした。後で分かったそうなのですが、全て2、3メートル飛び散っていて、懐中電灯は真っ二つに割れていたそうです。震度7クラスの地震が来ると、物は飛んでいってしまいます。懐中電灯を備えている方は多いと思いますが、枕元に置くのではなく、フックに掛けたり、ベッドの足にくくりつけたりすることをお勧めしています。

この熊本地震の特徴は、皆さんも記憶にあると思いますが、余震が何回も襲いました。1日に200回、ひどい時は5分に1度の間隔で、震度4、5くらいの大きな余震もありました。そういった中で熊本市内の被災したお宅にお邪魔したら、冷蔵庫や開き戸の扉などをガムテープやゴムで押さえていたのですが、余震のたびに食器などが落下して割れてしまって危険だったそうです。余震が来る度に片付けても、また余震で落ちてしまう、というのを繰り返していたそうです。やはり事前の対策をしていない家というのは、被害を大きくするだけでなくて、復旧も遅くなりますし、家の中で避難生活を送ることも不可能になるのだということが分かりました。

私自身、去年出産しまして、お母さんになったのですが、赤ちゃんがハイハイしだすと家の中のいろんな所に行きますので危険がいっぱいだということに気付きました。例えば、うちの息子は、引出しが大好きで、開けたり閉めたりしては、指を挟むということを繰り返します。事前に引出しや扉にストッパーを付けていたら、子どもがけがするのも防げますし、ひいては防災にもつながります。防災について、ママを対象にお話しさせていただく時は、「赤ちゃんにとって安全な空間というのは、つまりは地震が起きても安全な家づくりにつながります。これは、防災のチャンスです」とお話しさせていただいています。防災グッズや準備しておく物のリストなど、いろいろあると思いますが、やはりそれぞれ、それが必要な意味がありますので防災訓練などでお話しする際には、先ほどの熊本地震のお話しのように、なるべく具体的な過去の災害のエピソードを交えてお話しすることで、各家庭で実践してもらえるようにお伝えさせていただいています。

在宅避難のためのローリングストックの勧め

「在宅避難」という言葉は、最近は身近になってきたかと思いますが、これは小学校や公共施設などの指定された避難所に行かず、自宅で避難生活を続けることを言います。特に都市部で災害が起きますと避難所に入りたくても入れない人が大勢出ます。建物の倒壊や火災で自宅を失った人は避難所に入るかと思いますが、建物自体に被害がない人は入れない可能性があるので在宅避難の備えを日頃からしてほしいということです。

実際に東日本大震災の時も仙台市内などの都市部では多くの方が在宅避難を経験しました。報道では、津波の被害や原発事故もあったので、なかなかそういう部分はお伝えできなかったかと思いますが、仙台市ではマンションの住民が避難所に行っても満員で入れなかったということもありました。また熊本地震でも避難所となっている場所が天井や照明の一部が落下して使えなくなるということもありました。そのような中で、実際に在宅避難をした方を私は取材しておりまして、その方の体験談をもとにどんなものを備えたらいいかということをいつもお話しさせていただいています。特に、在宅避難について取材させていただいた方に対して、後日「在宅避難経験後、意識は変わりましたか?」という質問をさせていただいているのですが、皆さん共通している答えは、「食糧などを備蓄するようになった」ということです。東日本大震災でのライフラインの復旧状況は、私が取材した仙台市内のご家庭ではプロパンガスは3日後の朝に復旧したそうですが、都市ガスは遅い地域では完全復旧に1カ月半かかりました。電気は5日後に復旧、復旧しても余震のたびに停電してしまったりしていたようで、水道は6日後に復旧したというお話しがあったのですが、復旧してからしばらくは飲めるような水ではなくて、サビが出ていて、完全復旧までには10日ぐらいかかったそうです。またガソリン、食糧も不足しました。

今後の災害でもこういった状況になることが予想されるので、水は1人1日3リットル×1週間分、そして食糧も1週間分の備蓄が必要だと言われています。皆さんいろいろと備蓄されていると思いますが、私のお勧めは「ローリングストック」です。ご存じの方も多いと思いますが、この「ローリングストック」というのは、カセットコンロなども備蓄しておくことが前提となりますけれども、カップラーメン、パスタ、カレールーなど、普段食べているものを1日3食×4日分、12食ぐらいストックしておいて、月に1、2度それを食べて、食べたら入れ替えてというのを繰り返していくというものです。それによって消費期限が1年とか半年とか短いものでも備蓄になるという方法です。冷蔵庫の中にも食材はありますが、停電になると機能しなくなるので、まず冷蔵庫の中の物から食べて3日ぐらいもたせて、その後ローリングストックの4日分と合わせて、なんとか1週間しのげると思います。このローリングストックを本当に重要だなと思ったのが、やはり東日本大震災の時で、あの時、最初は乾パンやアルファ米などの非常食を私も食べましたが、やはり炊き出しのおにぎりやお味噌汁にはかないません。この時、お腹が満たされるだけでなく「ああ、幸せだな」と、心も満たされたと感じたのを覚えています。このように、普段から食べているものが災害時に食卓に並ぶというのは本当に心の安心にもつながるので、ぜひ進めていただきたいと思います。こういった在宅避難ができるように皆が備えることで地域全体の防災力も高まることになるので、1人でも多くの方にきちんと備蓄をしてほしいと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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