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防災インタビューVol.173

体験に学ぶ 防災対策

放送月:2020年2月
公開月:2020年6月

奥村 奈津美 氏

フリーアナウンサー

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

地球環境を考え、防災に生かす

2017年に九州北部豪雨が起こり、河川が氾濫、土砂災害が発生して、福岡、大分、合わせて40人以上の死者、行方不明者が出ました。その被災地、福岡県東峰村にボランティアで入りました。東峰村の山間というのは植林された杉の人工林が多く、根が浅いため大量の雨が降ると地表面の地層とともに木々が崩れ落ちる表層崩壊が発生しやすいそうです。現場では直径50センチを超えるような大木が流木となって積み重なっている光景に衝撃を受けました。このような、かつて林業が盛んだった地域において、木の管理が行き届かなくなると、木がそのまま山に放置されてしまい被害を大きくする要因の1つとなることが分かりました。防災という観点からもやはり林業、森林整備を考えていかなくてはいけないなと感じた出来事でした。

最近では、地球温暖化の進行に伴って特に各地で気象災害が多発するようになっており、雨の量も降り方もこれまでとは変わってきていますし、台風も変わってきています。2019年の台風19号は皆さんも記憶に新しいと思うのですが、台風が来る前日、近所のスーパーマーケットに行って棚の商品がほとんどなくなっていることに驚きました。恐らくメディアの呼び掛けで、多くの人が危機感を持って行動されたのかと思いますが、もし日頃から災害に対して備えていたら、そこまで慌てる必要はなかったかもしれません。それでも台風をきっかけに少しでも備えが進んだということに私自身は希望を感じました。最近では、毎年のように災害が起きているので、皆さんの意識も少しずつ変わってきて、災害に対する備えも少しずつできているように感じています。

先日、2019年の台風で堤防が決壊した長野県の被災地を訪れた際に、そこで被災された方が、「気候変動が大きくなって、この地域がまた浸水するのではないか」という心配をされていました。専門家も、「地球温暖化の影響もあり、これまでにないような激甚な災害が起こることを前提に備える必要がある」と警鐘を鳴らしています。世界に目を移しますと、気候変動を起因とする災害が多発しています。2019年9月から被害が拡大し続けているオーストラリアの森林火災では、日本の半分の面積が焼けてしまったという報道もありました。熱波、乾燥、豪雨、洪水、高潮などなど、地球温暖化によって災害が新たなフェーズに入っているように感じます。私たち皆が、地球全体で力を合わせて、二酸化炭素の排出を防いで温暖化を抑えることが大切であり、それがひいては、防災減災につながるのだということを心に留めていただければと思います。

地球温暖化対策と防災

日本は、二酸化炭素の排出量が、世界で5番目に多い国となっています。排出の内訳を見てみますと、エネルギー転換部門がおよそ40%、産業部門が25%、続いて運輸部門、家庭での排出量というのは5%となっています。そのような中で、地球温暖化対策として、具体的な取り組みを考えると、個人では節電する、極力車に乗らないなど、コツコツ毎日の生活の中で積み重ねていくしかないことになるのかと思うのですが、一方で、どんな選択をして消費活動をするのかということもエネルギーの転換部門や産業部門を変えていくことにつながっていきます。例えば、日々の買い物をより環境にやさしい選択にしていく方法としての「フードマイレージ」という言葉を聞いたことがあると思いますが、その食べ物がどれぐらいの距離を運ばれてきたかを考えるということです。輸送にはCO2が伴いますので、輸入されたものよりも国産、地産地消、地域のものを選んでいくことで、自分の選択で変えていくということです。売り場ではまず値段が大きく表示されていますが、それと同時に「フードマイレージ」、輸送の過程や生産で出たCO2の量が表示されていたらもっと意識も変わりやすいかと思います。また自分の会社についても、企業でできるCO2の削減の方法を考えてみるのもひとつの方法かと思います。

去年話題となったスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんのように徹底した生活を送るのはなかなか難しいと思いますが、彼女は、「未来の全世代はあなたたちに注目している」と話しています。私たちは今まさに地球温暖化の危機に直面していて、その歴史の転換点を生きています。ですので、これからは防災と環境をセットで発信していく必要があるのではないかと感じています。

環境に関して、もうひとつお話しさせていただきたいのが、「原子力災害」についてです。東京電力福島第一原子力発電所の事故について取材していますが、福島を何度も訪れて被災された方のお話しを伺っている中で、ひとつ忘れられない言葉があります。それは、「近くても遠い故郷」という言葉で、原発の傍らに暮らしていた方がおっしゃっていた言葉なのですが、その方はいわき市内に避難されていて、自宅はいわきからすぐで、車で行ける距離なのですが、自宅に帰ることができないということです。「近くても遠い故郷」これは、とても重い一言です。私も、警戒区域内を取材しましたが、季節の移り変わりとともに桜が咲いたり紅葉したり、これまでと変わらない自然な時間が流れていて、匂いがするわけでも何か感じるわけでもない、さらに言えば空気はつながっているわけで、でもそこに住むことができないわけです。2020年3月をめどに避難指示を解除する、一部解除するというような話を聞いていますが、震災から9年たっても故郷に住むことができないし、廃炉はまだまだ何十年もかかるそうで、本当に原子力災害がもたらすものを突き付けられています。

エネルギーの地産地消という動き、皆さんも共感して使っているかもしれませんが、地域で電力を作って地域で使う、この動きというのは災害が起きたときのライフラインを考えても、より災害に強い地域づくりにつながります。そのため、エネルギーのことを考えることも防災につながることだと思います。

最近、「SDGs:持続可能な開発目標」という言葉を聞くことが増えたように思いますが、SDGsとは、国連サミットで採択された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。2030年というと、これからちょうど10年後であり、これからの10年でこの防災と環境をセットにして考えた取り組みが全国で広まることを祈るとともに、私自身もその動きを取材して伝えていきたいと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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