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防災インタビューVol.174

記者の目から見た災害時のメディア

放送月:2020年3月
公開月:2020年7月

杉浦 美香 氏

編集者・ライター

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

災害時にはどんな情報を信じれば良いのか?

北海道胆振東部地震のときは、私は産経新聞の札幌支局長として札幌にいたのですが、実際に現場に行っているといろいろな情報が流れて来ます。そんな情報の中でなぜか大量に札幌市から「水道は止まりません」という情報が流れてきました。なんでなんだろうと思って調べてみると、SNSで「水道が止まってしまう」という情報が流れていたのです。実際に私の友達からもSNSで拡散希望というのが回ってきまして、「自衛隊の方からの情報で、大きな余震がもうすぐ起きるということです。この情報は大変な情報なので皆さんで共有してください」というメッセージが流れてきました。そのメッセージを下さった方がそれなりの立場の方だったので、自衛隊が被災地に実際に入っていて、何か断層に関する情報などを得ているのかもしれないと思って調べてみましたが、完全にデマでした。このときのデマはもう1つありました。「北海道電力の電力社員の方が復旧作業に行っているが、大きな余震が何時間か後に発生する」というような情報も流れてきて、それを受けた人もみんなに拡散しなければいけないと思うわけです。これは善意拡散しようとしているわけですが、その情報がどんどん拡散され、デマがどんどん広がってしまったということが、実際に北海道胆振東部地震のときにもありました。

また、これとは別に熊本地震のときに「町にライオンが逃げてしまった」という情報が流れたことを覚えていらっしゃるかと思いますが、あのときは本当に悪意のあるデマで、ライオンが町を歩いている写真まで出回り、後でこれは合成写真だったと分かったのですが、当初はそれが拡散され信じた方も多くいました。

災害時というのは非常に心も不安定ですし、そういうデマが広がりやすい傾向にあります。これは関東大震災のときにも同じことが起こったのですが、現在は情報社会であるからこそ、ソーシャルメディアを通じてデマが広がってしまうと、その拡散度合いが非常に大きいわけです。悪意のあるデマはもちろん許せませんが、善意のデマの拡散も、今の時代にはありがちなことです。皆さんも、災害時の情報には特に気を付けていただきたいと思います。

情報を見極める目を持つ

デマが流れるというのは災害時に限ったことではなく、現在のような新型コロナウイルスの感染が広がっているような事態のときも、新型コロナウイルスに関するデマが流れやすい状況です。デマだと分かりやすいものだと「おかしいな」と気付くのですが、意外とありそうな情報が流れるとやはり信じてしまいます。これをどのように防げばいいのかというと、実際にソーシャルメディアでメッセージが来たときに、大体は慌てて早く教えてあげなければいけないと思って、友達に一斉にメールしてしまったりするかと思いますが、非常時だからこそ、まずワンテンポ置いて、ちょっと考えることが必要なのではないかと思います。

実際にソーシャルメディアを正しく使っていくには、ある意味「教育」というのが必要なのではないかと思います。まず、その情報のソースがどこから来たのかというのが非常に重要です。情報が真実を伝えていない可能性もあることを考えておかなければならないと思います。

私が既存メディアである産経新聞に30年いたから言うわけではないのですが、既存メディアの記者は、情報発信についてはきちんと訓練を受けて書いており、それをデスクが受け取って、さらにチェックをして、「この情報はおかしいのではないか」ということを何人かの手を通ってチェックした上で新聞に掲載したり発信したりしています。しかし、ソーシャルメディアでは、生情報がそのままダイレクトに来てしまいますので、そこでのチェック機能というのは働かず、それを受け取った方々がまたドンドン拡散してしまいます。以前は、情報を持っているメディアは「第四の権力」と言われた時代だったのですが、今は個人がそういう情報発信の武器を持ってしまっているので、自分の発信力が混乱を起こしてしまうこともあるということを知っていただきたいと思います。そのためにも、情報発信するときにちょっと間を置いて、ひとつのソースではなく、別のソースもチェックしながら考えてみることも必要になってきます。

その意味では、私はメディアにいたから言うわけではないですが、既存メディアの信頼性というのはまだまだ捨てたものではないと考えておりまして、既存メディアは災害時にも、こちらのラジオも含めてですけれど、皆さんへの大きな発信力がありますし、信頼性のある情報をできるだけ出そうと心掛けています。もちろん自治体側も、防災に関するいろいろな情報を発信していっていると思うので、受け取る側の方たちもしっかり考えていく必要があります。実際には、意識が随分高くなってきている方も多いとは思いますが、そうでない方との差も非常に大きいので、その差をどう埋めていくかというのが現在の課題ではないかと思います。

既存のメディアも間違った情報を流してきたこともありますので、それについては反省すべきところもたくさんありますが、いわゆる悪意のものを発信しようと思っているわけではありません。発信する側も間違った情報伝達を防ぐためにはどうしたらいいかを日々考えていますが、受け取る方々もその辺りをぜひチェックしていただければと思います。

私が実際に北海道胆振東部地震のときに水道に関する情報が流れてきたり、SNSで情報を受け取った際に、まず実際はどうなのか、私の知らないところで何かがあるのかもしれないと思って、まず自治体の防災担当や消防に直接聞いて調べました。新聞社だからこそ、直接自治体などにアクセスしやすいということはありますが、一般の方々も、まず自治体の情報などを見たり、警察署では流れているデマなどについて情報を発信していますので、自分自身でチェックしていくことが重要です。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。