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防災インタビューVol.174

記者の目から見た災害時のメディア

放送月:2020年3月
公開月:2020年7月

杉浦 美香 氏

編集者・ライター

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

被災地での取材のあり方

東日本大震災のときにも新聞記者として取材をしてきましたが、私は社会部出身で事件取材もしてきましたので、同じような体験を被災地での取材でもしてきました。東日本大震災のときには、山形から被災した現場にボランティアの方々と一緒に取材に行くことになりました。私は新聞記者としてそこに行ったのですが、単に記者として取材をするというのが嫌で、実際に現場でボランティアとしてがれきのヘドロをかき出しながら、その中で話を聞かせて下さる方の話を聞いて、バスで戻ってくるということを何度か繰り返しました。最初のうちは新聞記者としてメモを取ろうと思っていたのですが、共感しながら話を聞いているとメモも取れなくなってしまい、話し終わると被災者の方が、「聞いてくれてありがとうございました」と言ってくださり、それを聞いて帰ってくるということが何度もありました。後になって、「新聞記者として、これはどうなのだろう?」とちょっと自問自答することもありました。

新聞やテレビを含めて取材が殺到してしまうことを「メディアスクラム」と言いますが、これが被災者の方々のトラウマとなってしまったり、傷つけてしまったりすることもありますし、私自身も自分でも気付かずにそういうことをしてしまっていることもあったかなと思っています。記者の態度について非難されることもたくさんあるとは思いますが、メディアの人間にとっても災害時の取材というのは非常に辛いことであり、非常に悩みながら取材しているという現実もあるのです。

避難所の取材にも何度か行きましたが、皆さん、とても優しいです。避難所に行ったときに食べ物が配られていても、避難所で配られる食べ物は被災者のためのものなので、記者は絶対に食べません。それを見た被災者の人たちは、「食べなさい」と言ってくださるのですが、断ると「これは私のもらった分だから食べなさい」と優しく言ってくださり、断るのに困るくらい気を使って勧めてくれます。そういうことが何度もありました。取材で被災地に行った記者たちは同じような経験をよくされているかと思います。

災害時におけるメディアの役割

災害時にはメディアが取材に行きますが、特に取材が殺到している場所だけに支援物資がたくさん集まってしまうこともよくあります。2019年の台風15号のときもそうでした。そうなるとメディアに取り上げられた所ばかりに物資が集まってしまって、必要な所に行き渡らないという偏りが起きてしまいます。取材する側も、取材しやすい所、目に見える所にどうしても行きがちになり、それがまた被災者の負担になってしまうという悪循環も起こってしまいます。

通常ですと、メディアというのは独立独歩のところがあって、各メディアが何かを一緒にやるということ自体を非常に忌み嫌う傾向があるのですが、災害時には集中してしまうことがあります。今後は、私たちメディアもそれぞれ分散して取材をすることも必要になってくると思います。誘拐犯罪のような場合は報道協定というのがあって、一定の期間は取材をしないように足並みをそろえます。このように、災害のときにもそれぞれが調整しあって、偏ることなくいろいろな所を取材していくことができるのが理想です。現在この偏りを補うのは、既存のテレビや新聞ではなく、SNSで情報発信される個人からの情報であり、メディアが多様化している中でのひとつの解決方法となるのではないかと思っています。

新聞はまさに既存メディアで、東日本大震災のときは、石巻の壁新聞が非常に大きな役割を果たしてくれたということがありました。災害時には、電気がなくパソコンも使えなくなったり、スマホもバッテリーが切れてしまったりすると使えなくなってしまいます。そのような中で、避難所の壁に貼られたアナログの新聞が非常に役立ったということもありますので、メディアも、先般お話ししたキャッシュレスに全て移行して1つにまとめてしまうと使えなくなったときに本当に困るという状況と同じで、1つの手段に絞るのではなく、いろいろな手段がある方がいいと思っています。また、情報を得るということでは、ブラックアウトした北海道においては、ラジオが非常に役に立ちました。ラジオはテレビと違って電池で動いてくれるし、どこでも入るので、ラジオの役割は非常に高かったと思います。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。