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防災インタビューVol.177

気象予報士から見た防災

放送月:2020年6月
公開月:2020年10月

半井 小絵 氏

気象予報士 女優
NPO火山防災推進機構 客員研究員

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

情報活用の大切さ

情報というのは、伝える側が分かりやすくしっかりと受け手側に伝えるということも大切ですが、受け手側もきちんと情報の意味を知っていただかないと、その情報は本当には活用できないと思います。

ここでひとつ質問です。「土砂災害警戒情報」という気象の情報がありますが、これはどんな時に出ると思いますか?

この「土砂災害警戒情報」は、土砂災害の危険性が高い所で地盤が緩んで土砂災害が起こる恐れがある時に出るものです。気象庁のホームページにも書いてありますが、大雨警報というのは、「土砂災害」と「浸水」という2種類があり、土砂災害が起こる危険性があって危ないという場合には、大雨警報が発令されます。その上で、さらに危ない時に出るのが「土砂災害警戒情報」です。気象情報の中で注意報や警報というのがありますが、よく勘違いされているのが、警報というのは一番危ない時に出るのではないかと思われていることです。実際は、大雨警報は既に発表されていて、さらに危ない時に出る情報が「土砂災害警戒情報」なので、警報が一番危ない時に出るわけではなく、この警戒情報が出たときには、さらに注意をして行動することが必要なわけです。ですので、きちんと内容を知っていないと、どちらが危ないのか、危険度が高いのかということが分からないことになります。

典型的なものとしては、自治体が出す情報で、避難指示、避難勧告というものがあります。今は「避難指示【緊急】」というふうに【緊急】というのが付いているので、少し分かりやすくなっていますが、いまだに多くの方が、避難勧告の方が避難指示よりも危険な時に出る情報だと思っているのが現状です。各地で講演をした時によく皆さんに「避難指示」と「避難勧告」のどちらがより危険だと思うかを質問するのですが、半数ぐらいは「避難勧告のほうが、緊急度が高い」と答えています。もっと言葉を分かりやすくしなければならないという課題はあるのですが、今実際に運用されているのが、この土砂災害警戒情報であったり、避難勧告、避難指示という言葉なので、私たちはその意味をきちんと知っておく必要があるわけです。

2019年から警戒情報をレベル3、レベル4というように、大雨や土砂災害の危険がある時にレベル化して表した情報が出るようになり、だいぶ分かりやすくなってきました。ただ、それについても課題がありまして、例えばレベル4では「全員避難」と書かれていますが、この「全員避難」というのも、「危険がある所にいる全員が避難すべき」ということです。例えば「急な斜面の側にいる方は土砂災害の危険がありますので避難して下さい」ということになりますが、同じレベル4が出ているところでも、場所によっては避難する必要がない方もいるわけです。自分がどんな所にいて、何が危険なのかを知っていないと行動ができません。しかしながら、災害が起こった時では遅いので、事前に知っておかなければ間に合わないことになります。やはり基本の基本ですが、自分の住んでいる所や自分がいる会社などのリスクを事前に知っておく必要があります。まずは、ハザードマップを事前にきちんと見て確認しておき、自分のリスクを前もって知っておくということが大切だと思います。

自分の地域のリスクを知る

自分の住んでいる場所や働いている所など、自分の地域のリスクを事前に知っておくことは大変重要だと申し上げましたが、防災の先生方の中には、「自分の地域のことを知るということは、その地域で生きるための作法である」と言いきっている方もいるくらい大切なことだと思っています。例えば、水がたまりやすい低い土地に家がある方は、大雨になる場合に早めに安全な場所に避難することが必要ですが、逆に堤防が決壊して大量に川の水が流れて来る恐れのない、川から離れた場所や高い場所にいる場合は避難しないほうがいいということもあるわけです。「垂直避難」とよく言われていますが、遠くの避難所に膝まで水に浸かりながら避難している間に用水路に流されてしまうこともありますので、それならば、近くの高い所、もしくは自分の家が安全なコンクリートの2階建て以上であれば、できるだけ高い所に垂直に上がっておくことが必要です。河川の場合でも川の大きさによってリスクは変わってきます。小さな川とか用水路はその場で降った雨で一気にあふれてくる恐れがありますが、大きな川というのは、タンクが大きいので、その場で降っても一気にはあふれず、下流ではすでに降りやんでいて、晴れ間も出ているのにもかかわらず、上流で降った雨が下流に流れて来て増水するまでに半日ないし1日ぐらい時差があることもあるので、特に注意してほしいと思います。

複合的な災害

2019年11月に高知県中土佐町に講演に行った際に、津波の防災訓練を見学させていただきました。中土佐町は、南海トラフ巨大地震が来たときには、最大で22メートルの津波が20分後に襲ってくる恐れがあるというリスクの高い所で、毎年津波の防災訓練が行われていますが、そこに立ち会うことができました。この町では「津波は危険だ」ということを皆さん、しっかりと意識していまして、揺れたら高台へ避難するか、逃げ遅れた場合は、津波避難タワーという高さ20メートルのタワーがあるので、そこに行くということを徹底して訓練しています。皆さん日頃から海に面していて、津波のリスクは知っているわけなのですが、あまり頭の中に入っていないのが、その時実は最大震度7の大きな地震が同時に来ている場合もあるということです。実際には避難している道が崩れてしまって通れないかもしれないし、家が道路側に倒壊してそこがふさがれている恐れもあります。さらにその時に台風が来ているかもしれません。高知県は、度々台風が襲来する場所ですので、事前に対策を取って水はけを良くしたり、土砂災害も起こりにくいように頑丈に整備はされているのですが、実際には地震や津波が来た時に、同時に台風が来る恐れもあるということを常に考えておかなければいけません。

この中土佐町では、2019年の津波防災訓練の直後に、私の気象の講演がありましたので、そのような複合的な災害もあり得るというお話をさせていただきました。近年ではいろいろな想定をしてはいても想定外の事が多々起こりますし、今までは、台風は慣れているから大丈夫だと思っていても、想定外の被害が出てしまうこともあります。想定していることだけを気にするのではなく、想定外の事もあるということを、常に意識しておかなければならないと思います。災害は、単独で起こるだけでなく、いろいろな災害が重なって、複合的に起こる可能性もしっかりと意識しておいてほしいと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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