1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. 気象予報士から見た防災
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.177

気象予報士から見た防災

放送月:2020年6月
公開月:2020年10月

半井 小絵 氏

気象予報士 女優
NPO火山防災推進機構 客員研究員

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

避難 ~難を避けるために~

やはり命を守るために一番大切なのは、安全な場所に行くこと、つまり避難することです。避難というのは「難を避ける」ということなので、安全な場所に行くことなのですが、今年は新型コロナウイルスの感染リスクがあるために、避難所は3密と言われています。人がたくさんいると感染リスクが高まるので、この 3 密を避けなければいけないわけです。そこで私が会員として関わっていて、企画委員として文章を一緒に作成した、日本災害情報学会からの提言をご紹介させていただきたいと思います。

そこで一番言いたいことは、「避難所に行くことだけが避難ではない」ということです。自宅が浸水する場所にない時、つまりそれほど危険がない時、または土砂災害で土砂がドッと押し寄せてくるような場所にいない時、その場合は避難所に行って3密になるよりは、例えば近くの親戚や知り合いの家に避難したり、自分の家にとどまるという選択も1つとして考える必要があるということを提言しています。

もちろん平屋建てだったり、大きな川のそばや土砂崩れの起こりそうな場所にいる方は前もって避難するのは当たり前ですが、比較的頑丈なマンションの上の方に住んでいる方は、「避難をしない」という選択も考えなければいけないということです。その場合でも、実は準備しておかなければいけないことがあります。水が止まってしまったり、食糧の買い出しに数日間行けないという恐れがありますので、電気ガス水道のインフラがストップした時のために、水やガスボンベを準備しておくことが必要ですし、食糧も十分備蓄しておかなければなりません。現在は、新型コロナウイルスのリスクが高くて、スーパーに物がなくなるのではないかということで、買いだめをしている方もいらっしゃるかもしれませんが、毎年起こる恐れがある自然災害に備えるためにも、普段からやはりある一定の備蓄をしておくことが大切だと思います。

リスクを知り、イメージし、備える

情報を発信する側は、「分かりやすく情報を伝える」ということが大切で、受け手もきちんと情報内容を知っておいていただくことが大切だということはお伝えしましたが、例えば「土砂災害警戒情報」という名前を知っているだけで、分かった気になっていることはありませんか? 例えば、「竜巻注意情報」が出たら、自分はどういう行動を取るべきかを考えていますか? このような情報が出る前に、普段からそれがなんであるかを知らないと行動することができないので、平時から災害のリスクを知って、イメージしておくことが大切です。

また現在はコロナ禍で外出自粛している状況で、家にいても何もすることがないので、テレビを見ることが多くなっていると思いますが、前向きになれないような情報もたくさん飛び込んで来ます。リスクをあおっていたり、「あれもできていない、これもできていない」ということが気になって、前向きな気持ちになれなくなることもあるかもしれません。そのような時には、逆の発想で、「こんなこともできている」「周りで助け合って、こんなこともできている」「こんな良いことがあった」と思うことで、心がほんわかしてきて、プラスのスパイラルができてきます。このような気持ちで世の中を回していけたらいいなと思います。

新型コロナに立ち向かって、最前線で働いている方たちは、本当に頑張ってくださっていますが、実は私たちも本当は仕事がしたい、外に出掛けたいという思いを我慢して外出自粛期間を過ごしてきました。最前線の方とは全く立場は違いますが、やはり自分なりに頑張ってきたわけです。それなのに、「まだできていない」という評価ばかり聞こえてくると、「自分はこんなに頑張っているのに評価されていない。もっと評価してほしい」というネガティブな気持ちになってしまいがちですが、ポジティブなパワーこそが必要な時期ですので、やはり前を向いて、上を向いて、希望の方を見ていくことが大事だと思います。暗い顔をしているよりも、笑っているほうが良いことが近寄ってくるものです。

私自身もツイッターやフェイスブックで自分の意見をほそぼそと発信していますが、その際にできるだけ前向きな発言をするようにしています。大きな影響のあるテレビ、ラジオやインターネット、ネットテレビなどに関わっている皆さんも、ぜひ私たちが希望を持って生きていけるような、そんな情報をもっと発信していただきたいと思います。

最近読んだ本に「人はなぜ逃げ遅れるか」という本があるのですが、そこに「大災害はそれまでの社会システムの欠陥をクローズアップして見せることで、いわば変動期型の社会をつくり出す。別の言い方をすれば、歴史の歯車を1回転前進させることで、移行期の社会を醸成すると言ってもよいだろう」と書かれています。

言い方は良くはないのですが、「災害が社会の効率化をもたらす」と書かれていて、例えば、過去にペストという感染症で中世ヨーロッパの人口が激減した災害がありましたが、その時に労働者が不足して、それを補うために労働の集約化、技術革新が生まれたということです。ペストが終息を迎えた翌年1666年にロンドン大火という大きな火災があり、感染症の巣窟であった不衛生なまちが焼けて新しいまちに生まれ変わったそうです。このような多くの犠牲を払った変革を効率化と呼んでいいのかということは、甚だ疑問ではありますが、いろいろな意味で、「困難をプラスに変えていく」ということが、これからの私たちにも大切なのではないかと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

会社概要 | 個人情報保護方針