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防災インタビューVol.178

災害看護におけるケア

放送月:2020年7月
公開月:2020年11月

神原 咲子 氏

高知県立大学
災害看護グローバルリーダー養成プログラム教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

コロナ禍の中での災害看護

感染症ということを考えると、災害が発生した場合での避難所のあり方については、コロナ以前から非常に懸念されていたことですが、特に水害の時には、今まで住んでいた場所に住めなくなってしまって、人が移動しなければならなくなることが課題になっています。これまでも地震対策として避難所を設置している所は多いのですが、水害の時にはいつも避難所が足りなくなってしまうという状況があります。避難所自体も耐震はしているのですが、水害で浸水してしまえば、たとえ避難所は用意していても、実際には使えないことになってしまいます。そうなると、限られた数の避難所に避難することになり、いわゆる密になる状況になってしまいます。もともと密になる状況が想定される中で「密を避けた避難をしてください」というのはかなり難しいと思いながら、各自治体が対応しているというのが現状です。

自治体によっては、避難所運営マニュアル、自主防災組織の避難マニュアルや避難行動マニュアルなどがありますが、密を避けた形の内容に書き換えているところもあります。例えば「受付での密を避けるために、距離を空けて並びましょう」「入った後のスペースも定員を4分の1ぐらいに減らしましょう」「換気しましょう」「消毒しましょう」という、一般的に今言われている衛生対策を強化する形に書き換えています。しかしながら、豪雨などの際に避難所に避難して来た人を実際に追い返すことはできないため、難しい課題だと思います。それと同時に、分散避難といって、体育館などの指定避難所だけに集中せず、それ以外の安全な場所に分散して避難したり、ハザードマップで心配がないということであれば、自宅の2階に避難するというような避難方法も考えるよう啓発をしていこうと思っています。

在宅避難の場合で注意しておかないといけないことは、自分の家は浸水しないとしても、かかりつけ医やいつも行くお店が浸水してしまったり、駅まで行けなくなってしまい、物が買えない状況になることもあり得ますし、浸水しなくても断水や停電ということも起きます。2019年の台風19号の際にも暑い時期に停電した中で暮らしている映像もあったと思いますが、そのような状況は今後も起こり得ます。外部支援が届きにくい在宅避難に備えて、普段から備蓄が必要であり、自立して生活することが求められますので、多めの備蓄の準備をしておいていただければと思います。 

備蓄をする時には、特に季節性を考えた方がいいと思います。日本の災害対応は阪神淡路大震災や東日本大震災の教訓を元に作られており、備蓄品のリストやアイデアは地震対策用で、しかも寒い所の地震対策ということもあるので、暑い中での水害対策を考えると違う部分も多くなります。中身を変えて夏用の衛生用品に変えることが必要になります。

水災害に備えた準備

夏の時期の水災害に備えた備品の準備としては、暑くなると衛生状態も悪くなるため、衛生用品や日常品を多めにストックするとともに、洗濯をすることが出来なくなる可能性もあるので、捨ててもいいようなタオルやTシャツを準備しておくのがいいかと思います。特に浸水した時には、使い捨てで雑巾代わりに使えるようなタオルやTシャツが便利なので、断捨離をする前にそれらを取っておいて、水害に備えるというのもいいかと思います。いろいろな支援物資も届くことは届きますが、衛生状況の悪い中で泥だらけになるとやはり洗ってまた2回使うということはなかなかできません。特に断水したときには洗うことができませんので、使い捨てにするしかないため、あればあるほど助かるので、何かにつけてストックは多めの方がいいかと思います。 

その他に準備しておいた方が良いものは、水害とは限らないのですが、意外に忘れられがちなのは、やはり情報収集の面で大切なスマホの充電です。台風19号の時にも情報収集しながら必要な物を得ていくために、非常に役に立ちました。衛生物品では、ウエットティッシュのようなものも準備しておいてほしいと思います。飲み水はあっても、シャワーなどはなかなかない場合もありますので、衛生を保つために、体を拭いたり、手や顔を拭いたり、消毒がもしなかった場合にも水代わりに使えるので多用することができるのではないかと思います。

皆さんは、よくチェックリストを用いて一般的なものを用意することがあると思いますが、実際には、それらが自分の必要なものではなかったということもあります。特に個人ニーズのもの、例えば薬やコンタクトレンズなど、コンビニやドラッグストアではなかなか買えないものは、足りなかったときに非常に困るので事前の多めの準備が必要です。個人ニーズのものには、手に入れようと思っても、災害が起きると手に入りづらいということがありますし、このようなものは、プッシュ型支援ではなかなか届かないものなので、特に要注意です。あとは例えば銀行の通帳のコピーもあると便利ですが、水害を想定するとスマホで写真に撮って保存しておくことも有効だと思います。

また、コロナ禍の現在は、避難所は密になる可能性があるので、特に分散避難を推奨していますが、分散避難とはどのような場所が考えられるか、避難をした先で自分は本当に安心して生活ができるのかということを事前に考えておく必要があります。その場所を2、3カ所選んでおくだけでもだいぶ違います。自治体が出している地域の情報を見ると、どうしても自治体の中での避難所しか書いてありませんが、自治体を越えて少し遠くても、親戚の家や友人の家に行くことも考え、そこが安心して暮らせる所なのか、例えば足が不自由な方でしたらそこは自分で行ける場所なのかということも含めて考えておかなければならないと思います。あるいは在宅避難を考えている人は、大切な物を2階に上げておくことを忘れると1階で浸水してしまうことも考えられるので、平時から準備しておくことが大切です。

このように、コロナ禍における分散避難については、事前にその場所をできれば2カ所3カ所考えておく、行った先で1週間ぐらい過ごすための準備をしておくことが大事ですし、これは、安心な生活への移動と考えられるのではないかと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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