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防災インタビューVol.180

特別支援学校における防災

放送月:2020年9月
公開月:2021年1月

湯井 恵美子 氏

福祉防災コミュニティ協会
福祉防災上級コーチ

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

大阪府立支援学校PTA協議会での活動

私はまず吹田支援学校のPTA会長を務めたのですが、その次の年に大阪府全体のPTA会長が集う協議会、大阪府立支援学校PTA協議会の会長に就くことができました。そちらも半分立候補したような形だったのですが、「ぜひ防災をやりたい」という思いと、PTA会長1年目に聞いた鍵屋先生の講演会を大阪で開催して、もっとお話をしてほしいという思いで会長に立候補しました。この大阪府立支援学校PTA協議会は、「府支P」と縮めて言うのですが、私たち府支Pは、昭和40年代から校長先生の組織である校長会と一緒になって支援学校の環境整備などに取り組んできました。今ではOB会があって、実は私はこの府支PのOB会の防災担当も務めています。

なぜこういうPTAの協議会ができたかといいますと、特別支援学校にはいろいろな障がいを持つ子どもたちがいますが、その中でも呼吸器のケアが必要であったり、直接命に関わるような装置を付けた医療的ケアの必要な子どもたちもいて、一日中保護者が学校で待機をしていなければならないケースもあるのが現実です。やはりこのような実情に対しては、もっと看護師の数を充実させて、保護者が外で仕事ができる体制も作ってもらいたいというような要望も出てきますし、学校での教育のことについても府支Pは保護者と先生方の要望をまとめて大阪府に毎年要望書を提出しています。その内容は例えば「教室や学校自体の数を増やしてほしい」「通学バスが片道1時間以上にはなってほしくないのでバスを増やしてほしい」、あるいは「自然教育をもっと充実させてほしい」「外国人の先生も入れてほしい」というようなものであったり、大きな項目としては「災害時の子どもたちの安全安心」です。特に大阪では付属池田小学校の事件を受けて防犯にもとても力を入れています。そういった要望を毎年校長先生とPTA会長が一緒になってまとめてきたものを、今度は大阪府全体でまとめて、それを大阪府の知事部局と教育委員会に提出して、「もっともっと子どもたちがより健やかに育つような環境を作ってください」というお願いをしています。最近では東日本大震災以来、毎年のように地震や水害が起きています。2018年には大阪北部で地震もありました。そういったこともあって、要望書の内容も防災に特化したような内容も入るようになってきました。

特別支援学校における事業継続計画

私は、PTA会長2年目で全体の協議会の府支Pの会長となったのですが、この府支Pの会長というのは特に大阪では、ある程度の力のある代表になります。そうなると大阪の危機管理部局や福祉部局の上の方の方とお話をする機会も多くなりますが、いろいろな意見交換をしている中で、その時の特別支援学校には事業継続計画がないということが分かって驚きました。

普通の防災の災害対応マニュアルは全校にあったのですが、災害時の避難の方法だけでなく、学校が災害でやられてしまった際に、子どもたちと先生がどこで夜を過ごせば良いのか、そのための備蓄品はどうするのか、被災時の福祉業務をどうするか、教育の業務をどう継続していったらいいのかというような事業継続計画がないことには、避難所で過ごすこともできません。備蓄品だけを置いていても備蓄品の購入計画もありませんでしたし、まず自分たちが被災をして、学校とは違う場所で一晩過ごす可能性に対する覚悟がなかったことに驚きました。私がこのことを知ったのは、ちょうど東日本大震災から3年しかたっていない時だったので、特に驚いてしまったのですが、「これはいけない」と思いまして、まずは大阪府全体の学校の防災の状態を知るためにアンケート調査を実施しました。

このアンケートでは、学校に防災計画があるか、どのような防災学習を行っているかということをお伺いしました。お伺いした内容は各学校にきちんと学校の名前を入れた上でフィードバックをして役立ててもらおうとしました。平成25年、26年の2年間にわたってこのアンケートを行い、ほとんどの学校から回答を頂くことができました。その中で、防災計画は学校だけで作られていることが多いという印象は持っていたのですが、やはりその通りで、ほぼ70%ぐらいの学校が保護者、あるいはPTAの役員を入れずに学校だけで防災の計画を作っていました。また、その作った計画を保護者に配布していた学校というのがその時には32校中わずか5校だけしかありませんでした。その他の学校では、保護者が学校の防災計画すら知らなかったということに驚き、これではいけないと思いました。

私が、会長顧問と2年間府支P協議会の代表を務めていた間に鍵屋先生に来ていただいて、大阪府立の支援学校だけではなく、その当時大阪市立の支援学校、国立の支援学校や八尾市立の支援学校、堺市立の支援学校など、全ての支援学校の校長会、また教頭先生、PTA会長、防災担当、それから大阪府教育委員会の支援教育課の職員の方をお呼びして、2年連続のBCP作成研究会を実施しました。今では、オール大阪の取り組みになったこの特別支援学校のBCPですが、これは恐らく大阪だけだと思いますが、今は大阪府立の支援学校46校全てでBCPが作られています。このことにより、万が一、学校が駄目になっても、被災をした後でも、どこかで支援教育や被災後の生活を継続できるための計画があるということに、ある程度は安心できる状況ができて良かったと思っています。ぜひ、全国の特別支援学校でも被災後の生活までを考えた事業継続計画を立ててもらいたいと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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