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防災インタビューVol.180

特別支援学校における防災

放送月:2020年9月
公開月:2021年1月

湯井 恵美子 氏

福祉防災コミュニティ協会
福祉防災上級コーチ

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

災害時の避難場所として望まれる特別支援学校

私は、実は現在大学院生なのですが、大学院で学ぶきっかけとなったお話や大学院での学びのことについて少しお話をしたいと思います。現在、私はドクターの2年目で、2017年に兵庫県立大学大学院、減災復興政策研究科という所が開講した際に第1期生としてこの学校の修士に入りました。センター長は室﨑先生で、関西地区では非常に有名な先生です。被災者の自立的な復興に寄り添う、そういう先生の姿勢に学びたいと思っており、とても尊敬できる先生です。先生は被災地としての責任を発信するために、神戸の地に私たちの大学院を作ってくださいました。ちょうど8月は私のゼミの先生である澤田先生がこの番組でもお話をしてくださっていましたが、澤田先生はとても美しい先生でして、何が美しいかと言いますと、先生の書かれる論文が本当に美しいのです。いつもゼミでお話をする時に、「あったままの、あるがままの事象をそのまま受け止めて、それをきちんと研究者として表現しなさい」とおっしゃっています。いろいろな意味で正直な澤田先生について学べて良かったと思っています。

ちょうど修士の1年目に九州北部豪雨があり、2年目の修士論文を書く時に、6月に大阪北部地震が起こって、私は年内いっぱい、大阪北部地震の支援活動を行っていました。澤田先生には、そういう面でも非常にご苦労をお掛けしたのですが、またドクターの1年目の2019年には台風19号での被災地支援に長野に入りました。被災地支援に入るたびに、「ああ、災害は弱い人や弱いところを本当に直撃するんだな」というふうに感じています。

私の修士論文では大阪北部地震で被害にあった3つの特別支援学校の対応のアンケート調査を行って、地震の被害にあった特別支援学校の学校がどう考えるのか、またお父さんお母さんたち保護者はそれをどのように考えるのかということを調査しました。その中に「災害が起きて家が被災をした場合にどこに逃げますか」という項目があり、複数回答にしたところ、1番目に並んだ施設が2つありました。1つは自分の住んでいる地域の小中学校、あともう1つは特別支援学校でした。特別支援学校は大体自分の自宅から歩いて行こうと思うと不可能な距離にあったりしていて、何時間もかけて歩いて行かなければならない場所にあったり、車で行くのに大変苦労したり、公共交通機関が止まってしまったらとても苦労する場所にあることが多いのです。大阪北部地震が起こった時にも、子どもたちを迎えに行くのにとても苦労したというご意見があったにもかかわらず、やはり次の震災が起きても特別支援学校に避難したいという意見が多かったことは、やはり障がい特性を理解してくれている、そういう場所に避難をしたいと思われているのだということが分かりました。この結果から、障がい特性を理解さえしてくれていれば子どもたちはより健やかに被災生活を送れるのだということを保護者の方たちが教えてくださったというふうに感じています。

災害を一緒に乗り越えていくために

たとえどんなに重い障がいがあっても、高齢者でどんな重い認知の症状があっても、あるいは日頃からゴミ屋敷の住人のように、地域でちょっと問題のある人だと思われている人でも、必ず力があります。その力を集めて、地域の勇気にして、自分たちみんなで一緒に助かる防災の取り組みが出来たらいいなと思います。また私たち自分自身、障がいのある子どもを持つ親御さんたちに対しては、自分たちのことを自分たちで決めるために、やはり自分たちで行動すること、自分たちで学びを深めて仲間と一緒に頑張って、助けるとか助けられるとかそういったものではない「一緒に助かる」という状態を作っていけたらうれしいと思っています。そのためにも特別支援学校というその強みを生かして、地域と一緒に特別支援学校の持つ弱みを補完し合う形が作れたらいいと思っています。

特別支援学校というと昔から、郊外に作られたり、山間に作られたり、コロニー政策で作られたりという、立地の問題がある場合が多く、特に土砂災害警戒区域や洪水や津波の浸水エリアにある学校もあります。そういう学校では校長先生たちや防災の担当の先生方から、「子どもたちを助ける順番を決めなければならないのか」というものすごく切実な悲鳴のような声が聞こえてきます。しかしながら、本当は、子どもたちの命の順番を付けるだけではなく、「子どもたちも教職員も一緒に余裕を持って助かる」、そのような取り組みにつなげていくことが一番大事だと思っています。そのためには、学校の防災減災を学校だけで考えないことが大事なのではないかと思います。その形として、今、地区防災計画という取り組みが各地で行われようとしています。その地区防災計画に取り組む中で、障がいがあってもできることがあることを知ってもらい、「障がいの特性が分からない」という地域の方には、親がその子どもたちの障がいの説明をしっかりとしていき、そのつなぎの役割になることが大切です。また、それを形にしたSOSファイルの取り組みを特別支援学校ではやっているということがみんなの勇気につながるのではないかと思っています。

特別支援学校の防災減災、障がいがある子どもたち、大人の障がい者にとっての防災減災を考える時に、障がいを持っている私たち当事者の方から「助けてください」とお伝えすることで、周りの支援者の方たちもそれに気付いて、「私たちが助けるよ」という力をまた掘り起こすことにもつながると思います。そのような形が特別支援学校を中心として作られていったらいいなということを私はずっと強く思い続けて研究を進めていきたいと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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