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防災インタビューVol.180

特別支援学校における防災

放送月:2020年9月
公開月:2021年1月

湯井 恵美子 氏

福祉防災コミュニティ協会
福祉防災上級コーチ

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

防災研修会の実施とSOSファイルの作成

大阪の協議会で特別支援学校の事業継続計画を作成したお話をしましたが、実は私自身も最初は「BCPってなんだろう。BCPって何の略だろう」というところから始まりました。そこで、まずは自分の息子をきちんと訓練するところから始めようと思い、私の息子に防災訓練を実施しました。これは家庭での訓練ですが、まずは緊急地震速報に慣れてもらうところから始めました。この緊急地震速報の音は非常に嫌な音で、特に知的障がいのある子にとってこの音は非常に問題でして、学校によってはこの音は使わずに防災訓練をしている学校がまだ一定数あります。まずは、この音を聞いたら玄関に移動して、そこに置いてあるヘルメットをかぶって靴を履く。ここまでを徹底して1年間ほどかけてできるように訓練をしました。その後、大阪北部地震が2018年6月18日、朝8時ごろに起きた際には、まだこの日は彼はベッドで寝ていて、私はその横に居て、ちょうど私の携帯をベッドの脇で充電をしていた、そんな状態でした。揺れが始まった時に、ゴゴゴゴッーという地鳴りが聞こえてきて、それと同時にものすごく大きな揺れが襲いました。2人ともベッドの上で固まっていたのですが、その揺れの後に緊急地震速報が鳴ったのです。そうしましたら彼はベッドからパッと飛び起きて、玄関に移動してヘルメットをかぶって靴を履こうとしていたのです。その時に、私は「危ないからここに居て」と叫んでいました。息子の訓練はしていたのですが、実際自分の訓練はしていなかったのが、とても大きな反省でした。

「自分の息子にこういう訓練をしている」ということをいろいろなPTAの茶話会などでお話をしていたら、「PTAの防災研修会に来てください」という話を徐々に頂くようになりました。こうすればわが子も強くなれるということに、お母さん、お父さんたちも気付いてくれて、それがきっかけになってくれたのだと思います。それと同時にSOSファイルにも取り組んでいましたが、やはり私たち障がいのある子どもの親にとっては、親亡き後の問題というのは、とても大きな問題です。

災害が起きて親の方が思いがけず亡くなってしまう可能性もありますが、そのような時には、やはり大好きなお父さんお母さんがいなくなって、ただでさえ悲しい時に、ケアのやり方を間違うことで、もっとわが子を泣かせてしまうのではないかと思います。1回でも多く泣かせることはしたくないという思いで本当に細かな情報までこのSOSファイルには書き込んであります。例えば私の息子の場合は、右の耳からお風呂で洗わないと機嫌が悪くなってしまいます。あるいはなかなか口頭で伝えられない、例えば性処理の問題ですとか、そういったことも詳しく書いてあります。言葉では伝えられないけれど書いたものだから伝えられるということをファイルに残して、学校やおじいちゃんおばあちゃんや、あるいは仲の良い友達とかに残しておくような、そういうSOSファイルの作成の活動をいま一緒に行っています。

特別支援学校での防災計画

PTAの防災研修会でお話をさせていただくうちに、今度は学校の先生たちから支援学校での防災計画のお手伝いをしてほしいという話が来るようになってきました。支援学校では子どもたちの障がいの特性などの個人情報を多く扱うこともありますが、親の同意があれば、非常に使いやすくすることもできますし、また障がいがあるからということで、特別の災害備蓄品も用意しなければならないのですが、お金のかかる災害備蓄品に関しては、これは大阪だけの取り組みかもしれませんが、PTAに災害対策費という項目を作って、学校に置いておく備蓄品を購入している学校も多くあります。個人備蓄としてもPTAが率先をして、わが子の備蓄品は親が準備するという個人備蓄の取り組みも徐々に進んできています。

このようにPTAと学校が防災に一緒に取り組むことのメリットは、親がその真ん中のつなぎとしての役割を担うことです。これにより保護者が強くなるということが私は一番のメリットだと考えています。学校だけが防災力を高めても家庭の防災力が弱かったら立ち行かなくなると思います。逆に、例えばSOSファイルの取り組みや防災備蓄品の取り組み、そういったことをきっかけにして、家庭の防災力が上がれば今度は学校の役割を小さくできるようになります。学校の役割を小さくできたら、もっともっと子どもたち一人一人に目線を移した防災の対策ができるのではないかと思っています。

そう思っていた時に大阪府の教育委員会の方から学校防災アドバイザーの派遣の話がありまして、今は大阪の特別支援学校3校と一緒に防災の事業継続計画作りを行っています。大阪府教育委員会が行っている学校防災アドバイザーのユニークな点は、その特別支援学校だけではなくて、近隣の他の学校1校以上と必ず一緒に取り組むことが義務付けられていて、またそれも学校だけで取り組んではいけない、地域の人や行政職員などと一緒に取り組んでいくことが規定されていることです。これはとてもユニークな方法で、これに取り組んでいく中で自然と地域との協働の形が出来上がっていくというものになっています。

昨年度から取り組んでいる、富田林市の富田林支援学校では、学校バスの通学時間帯に災害が起きたらどうしようということがとても大きな課題でした。そこで、その学校の通学バスルート上に緊急の避難場所を複数設定する取り組みを行うことにしました。ちょうどこのアドバイザー事業で複数の市町村の行政の方とご一緒することもありましたし、他の学校や小中学校と一緒に取り組んでいく中で、複数の緊急避難場所を作ることが出来てきました。この際の大切なキーワードとしては、やはり支援学校の側から「子どもたちの安全のために力をお貸しください」とお願いすることで、行政の方も他の学校の方も快く引き受けてくださり、自分たちはいつでも支援する用意があるということをお互いに協働する中でその形を確かめ合い、そういう活動につながったと思っています。このように協力して下さる方が多いのは、やはり特別支援学校のことを大事に思ってくださる方も多いからなのかなと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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