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防災インタビューVol.183

地域医療と防災 ~地域からのエンパワメント~

放送月:2020年12月
公開月:2021年4月

加古 まゆみ 氏

広島大学大学院 医系科学研究科
国際災害看護学 准教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

阪神淡路大震災からの復興

阪神淡路大震災の時、私の実家は震源地から離れていて、それほど被害はなかったのですが、学校で一緒に学んだ友人が亡くなったり、同級生の家族が亡くなったりということを身近に経験しました。

学生の時からボランティアとして、地域での入浴介護サービスに関わっていましたが、留学をしている間は、休みの期間に日本に帰って来て、ボランティアのサービスに参加させてもらいました。海外にいたため、地域の方々との日々の関わりはできなかったのですが、1年に1度日本に戻ってきた時に、入浴介護サービスのボランティアに出かけて行く際に、神戸の町がどのように変化しているのかを見ることができました。被災した家がなくなり、空き地が目立つようになり、その後また新しい家が建つようになって、人通りも増え、新しいお店も出来てきているのを見て、神戸がまた元気になってきていることを知ることができましたし、見た目には、震災から復興をしつつあるのを感じました。その一方でまだ仮設住宅に住んでいる方もいて、その方たちの健康をどう保つのが良いのかということが課題になっていました。

その後帰国して教員をしていた時期があり、その時にも同僚の教員と一緒にボランティア活動をしました。その時期には、仮設住宅から恒久住宅に移られた方がほとんどでしたが、神戸製鋼の跡地に建てられた「HAT神戸」のような、高層の災害復興住宅に住まわれている方にとっては、今までの平屋とは違って、高層住宅では横のつながりがあまりなく、お互いが行き来しにくいという状況でした。そこで教員と学生が一緒になって、月に1回、「健康相談」という形のイベントを企画して、普段会わない方たちにも外に出てきていただいて、健康のことだけではなく、悩み事について話をしたり、季節のイベントなどをしながら語り合える場を作るというボランティア活動をしました。

当時の皆さんの悩み事としては、生活習慣病や、糖尿病の方が血糖コントロールができない、一人でこういう所に住んでいるのは寂しいと言われる方もいました。特に病気がない方にとっても、毎回同じ人が顔を見せに来てくれることで、安心して話ができたり、健康管理を超えたつながりを求めている方がいたりして、このように何かを話す機会、話す場はとても大切だと思いました。

1995年以降、発災してから10年、20年という形で見てきましたが、被災された方たちは、今はもう高齢で、亡くなっている方も多くなっています。神戸の町も、見た目では復興しているように見えますが、高齢で地域に残って復興住宅に住んでいる方にとっては、近所の方がだんだんいなくなる中で、孤立されるケースもまだあるのではないかと思います。これに対して、神戸では自治会やNPO団体などがネットワークを組んでイベントをして、健康的に生活を続けていくための取り組みなども続けられています。

東日本大震災の時は、直接支援には行かなかったのですが、後から、被災者への調査ということで、岩手県の仮設に住んでいらっしゃる住民の方にインタビューをさせていただきました。お話を聞いて、神戸と違うと思ったことは、住民の方が、「仮設住宅に住んでいても、近所の方、前からの知り合いの方が近くに住んでいるので、とても心強い」とおっしゃっていたことです。特に地域のつながりが強い所でしたので、その中のリーダーの方の存在もあって、皆さん前向きに取り組まれていて、自分が出来ることを一生懸命するんだとおっしゃっていたことが、非常に素晴らしいと思いました。この事は、住んでいる地域と住民のつながりということでいろいろ考えさせられた場面でもありました。

災害時の看護師の役割

災害医療、災害看護というと、建物が崩れている中に飛び込んで救急の手当てをするというようなイメージがあると思います。もちろんそのようなトレーニングを受けて、知識と技術を持って救命活動されている方もいますが、看護師には、それ以外の分野での役割もあると思います。病院の中ではいろいろな科で働く看護師もいますし、地域の中に出て訪問看護をしたり、診療所で働く看護師もいます。医師が少ない離島では、医師ができる職域の技術についても認定を受けて行っている「専門看護師」と呼ばれる看護師もいて、いろいろな分野で働いている看護師がいるということ自体が大事なことだと思います。このようにいろいろな場面で看護師は活躍していますが、得意な部門もそれぞれの方にはあると思います。災害においては、発災直後のいろいろなことが起こり、混沌としている状況、急性期の救急支援、それが少し落ち着いてきて、リハビリテーションなどが必要になってくる復興期がありますが、その場面場面で、それぞれの看護師が得意とする技術や知識を発揮できる場があることがとても大切だと思っています。

災害時というのはいろいろな場面が想定され、いろいろなニーズがありますが、時間とともにそのニーズも変わってきます。そのことを看護師自身が知ることも大切ですが、それを生かせる支援やシステムを作り上げることも重要です。最近ではデジタル技術がいろいろと進んできているので、それを生かすことも大切です。また、人的な支援システムについては、例えばDMATを派遣したり、支援ナースを送るシステムもありますので、県と県を越えた地域でも、お互いの助け合いのシステム構築を続けることも必要だと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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