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防災インタビューVol.183

地域医療と防災 ~地域からのエンパワメント~

放送月:2020年12月
公開月:2021年4月

加古 まゆみ 氏

広島大学大学院 医系科学研究科
国際災害看護学 准教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

地域医療における課題

最近では「地域医療」と言って、病院での治療を受けた後、早期に退院して、地域でできる治療は地域で行うために、訪問介護ステーションや診療所で治療、療養者を引き継ぐということが行われています。しかしながら、地域医療を行う組織は比較的、病院に比べて小さな組織が多く、BCPと呼ばれる事業継続計画を立てることが難しい状況です。BCPを考える時間がない、何から考えていいか分からないと感じている組織もたくさんあります。その中で実際に何ができるのかということを考えたときに、やはり組織として、個人として、地域としてできることから、まずは取り組んでいただくことが必要だと思っています。特に小さな組織においては、例えば、組織内の職員などに、コロナの感染者が出てしまうと、その後の受け入れができなくなり、事業自体が行き詰まってしまう、閉鎖になってしまうことにもなります。もし、職員が働けなくなったとしたら、小さな組織では代替の職員なしに、医療サービスを提供することも難しく、医療サービスが止まることによって、健康が維持できなくなる方も出てきてしまいます。そのような際には、一つの組織だけで完結するのではなく、その周りにあるネットワークと連携して事業継続、BCPを考えていく必要があると思います。

小さな組織の中で、この支援のネットワークを広げていくためには、どのような事をすれば良いかを学ぶために職員を研修に行かせることも有効ですが、小さな組織においては、なかなか職員を研修にも出せないということが課題として出てきます。現在はコロナ禍でいろいろな方法での研修も行われていますので、アクセシビリティが高い媒体で、オンライン講義やeラーニングなどを活用して、学習機会を提供していくことも必要だと思います。ただ、このような形の学習に切り替えていこうという風潮はありますが、実際には地域医療の当事者である看護師の方たちが本当に必要としている情報、知識が身に付くようなオンライン研修というのは、まだまだできておらず、これから構築していく必要があると、実際に調査をしてみて感じています。

地域医療と災害

コロナ禍においては、住民の方の社会心理的な影響も心配です。このような状況で災害が発生して避難しなければならなくなった場合、「もし避難所で咳をしたら、コロナだと思われてしまうのではないか?」というのが心配で、避難所に行けないという方もいます。実際に避難所においても、どのように感染対策を行うかということが、大きな課題になっています。

避難所のこと以外にも心理的な課題としては、医療者が働いている施設で感染者が出た際に、その医療者の子どもが通っている保育所での影響など、センシティブな問題も発生していますので、心理的なフォローアップも必要になってきます。看護の当事者としては、良かれと思ってやっていることが、あだで返されているという気持ちになってしまうこともあるので、その辺りの気持ちを共有できる場を作ることも非常に重要です。そのためにも、また地域における小さな組織の人材不足を補うためにも、地域のリソースを生かした、ネットワーク、システムづくりが必要ではないかと思っています。

地域医療の現場においては、現在、だんだんと感染者が増えてきているので、どのくらいの有床率があるのかということがモニタリングされています。その上で、医療機関のネットワークを生かして、どのように患者さんを治療していくかについての計画を立ててはいますが、患者さんが増えてきて、サージと言われるベッドが埋まってしまう状態になってしまうと、その対応に追われることになります。Bプラン、Cプランという形で対応しながら、自分できちんと様子を見られる人は自宅療養するという方向で、治療の目安も今後、コロナの広がりに沿って、変化していくのではないかと思いますが、コロナ禍になってから時間も経過していますし、システムづくりについてはトレーニングも積んできているので、徐々にシステムはできていると思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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