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防災インタビューVol.190

台風19号による千曲川氾濫 ~福祉施設の避難と復興への道筋~

放送月:2021年7月
公開月:2021年11月

松村 隆 氏

社会福祉法人賛育会豊野事業所 元事務長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

プロフィール

私は、賛育会豊野事業所で医療福祉関係の仕事の責任者を10年ほどしておりまして、その前は、病院の事務長、その前が、20年弱の間、東京YMCAで野外関係の仕事と地域活動の仕事をしていました。

賛育会豊野事業所は、医療と福祉の総合的な施設で、300名弱の利用者、入所者がいます。その中に、介護医療院、老人保健施設、特別養護老人ホームがあり、グループホーム、ケアハウスなどもありました。私は、そこで介護医療院と老人保健施設の事務長をしていました。

福祉施設での垂直避難

2017年に東北の豪雨で川沿いのグループホームが水害にあって、入居者が亡くなったというニュースがありましたが、その後から賛育会の施設でも、すぐ近くに千曲川が流れていますので、定期的に防災訓練、避難訓練、水害時の対応について、意識的に準備をしていました。

一般の方は、災害時には避難所に避難することが考えられますが、要支援でケアが必要な高齢者の方は、体育館にマットを1枚敷いた状態の避難所では生活ができませんので、行政が定めているような避難所には避難することが不可能です。そこで私たちは、「水害が起きたら、まず垂直避難をする」ということで、同じ建物内で、上の階に避難することを継続的に練習していました。

エレベーターが使えるうちは移動が可能ですが、2階に避難して、大丈夫だと思っていても、さらに水かさが増えて2階でも危なくなってくることがあります。そうすると、手製の担架を作って、階段を使って4人がかりで1人の方を運んでいかなければなりません。実際に、2019年の千曲川の氾濫の際には、特別養護老人ホームにいた約90名と、介護医療院にいた約60名を、階段を使って、職員が交代で水が迫ってくる中を火事場のばか力でなんとか3階に運び上げました。事前に余裕を持った状況で上に移動をするのであれば、ベッドごと移動できたり、大きなマットもそのまま上に上げて、そこで休むことができたのですが、この時はそれもできない状況でした。

この時の千曲川の氾濫情報は未明に出され、水が目の前に溢れてきたのは明け方でした。それから、あっという間に建物の1階の天井近くまで一気に水が来ました。幸いにして、長野県は傾斜地で標高300メートル以上あるので、朝から夕方までは全く水が動かない状況だったのですが、一晩明けてみると水はなくなっていました。やはり水は高い所から低い所に流れていくのだなというのを実感しました。

大規模な救援による全員避難

実際には、この時には24時間ぐらいで水は引いたのですが、電気もガスも水もない状態で、ボイラーも厨房施設も全て使えなくなっており、入居者が施設の中にいることができないので、避難をすることになりました。この時、他の施設では避難要請をする状況ではなく、要請をしたのが、300人弱の入居者を抱える私たちの施設だけであったのも、非常に幸運なことでした。

私たちの施設の他に、近隣には100人規模の施設が4カ所ありましたが、そこは浸水も床上30センチくらいで、一晩で水が引いたので、乾かして通常のサービス業務を開始できていましたし、車で15分くらいの距離にある病床が400床規模の救急病院である市民病院でも、玄関先まで水が来ただけで、中までは入らなかったので、避難が必要なのは私たちだけということで、真っ先に救援していただくことができて、非常に助かりました。もし医療施設からの入院患者が全員避難ということになると、私たちのところには、なかなか救援が届かなくなりますが、この時はDMAT、消防、自衛隊、警察全てが私どもの施設の避難のために集合してくれました。避難先についても、近隣の病院が引き受けてくださり、19の病院に入所者を救急車で運んでもらって避難させることができました。特別養護老人ホームの方も、DMATが3日間避難をお手伝いしてくださって、37カ所の施設が受け入れてくれました。合計で56カ所の施設が受け入れてくれたのですが、全て長野県と長野市で手配をしてくれたので、1人も犠牲になる方を出さずに避難できたことは非常に幸運でした。もし、複数の施設が被災していたら、こういうわけにはいかなかっただろうと思いました。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。