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防災インタビューVol.190

台風19号による千曲川氾濫 ~福祉施設の避難と復興への道筋~

放送月:2021年7月
公開月:2021年11月

松村 隆 氏

社会福祉法人賛育会豊野事業所 元事務長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

事業再開への課題

高齢者施設が被災した際に、事業中断をして職員も一時解雇すると、その後、再開しても人が集まらず、再開するのが難しくなるという話があったので、賛育会では、職員300人は全員雇用継続としました。職員が300名いても仕事がない状況が続き、収入がない中で、支出だけが出ていくということになり、被災した10月から次の年の3月までの間で、途中で部分開業をしていきますけれど、約5億円の赤字が出てしまいました。この費用を借りられるだけの体力のある規模の法人かどうかということで、継続できるかどうかが決まるんだということを実感しました。それ以外にも被害に遭った建物全部で9億7千万ぐらいの改修費が掛かりました。その内、補助金で賄える部分が約6分の5の6億3千万ぐらいはあるのですが、残り3億4千万に運営費の5億円プラスアルファが必要だということになるわけです。しかしながら、補助金交付の条件は「現状復帰」ということになっています。古いほうの建物は、30年ぐらい前に建てられたものですので、医療福祉に関して言えば、機能的に今の現状と合わない部分がたくさんあります。例えば、こんな部屋はいらない、この間仕切りではとても使えないというのがあるのですが、とにかく現状復帰でないと補助金が出ません。また、川沿いに建てたグループホームに関しては、以前のまま、18名定員のものを川沿いの同じ場所に平屋で建てないと補助金は出ないのですが、この条件は現実には合いません。ちょっと場所を移転して、同じ規模のものを建てるのでは駄目なのかを交渉しても、「まかりならん」ということになってしまいます。

せっかく税金を使って作ることになるので、そういう意味では、今後は被災しない場所に移転して建て替えるとか、現代のニーズを満たすような形に変更して建て替えるというように、ある程度幅を持たせた再建ができるといいのですが、以前とまるっきり同じものという条件では、非常に使いづらい補助金となってしまうと感じました。完成後に監査をしに来て、査定を受けてから、補助金が出るので、元のものと同じでないと通らないという現在のしゃくし定規なやり方では、なかなか難しいので、本当にこれは何とかしないといけないと思います。ぜひ今後の課題として検討してほしいと思います。

復旧のための雇用継続

賛育会では、復旧に備えて休業中も雇用継続してきましたので、この300人の職員を地域の泥かきに派遣することにしました。泥かきは大変な作業で、川上から流れてきた泥には、下水や浄化施設が破壊されて流れ出した汚物が混ざっており、この泥が家の中に入ってしまっていますので臭いもものすごいことになっています。この泥かきに賛育会のビブスを着て職員がチームで街の中で支援をしました。

その他、この番組にも何回か出演されているレスキューストックヤードの浦野愛さんがやっている「あったか食堂」で、食堂に来る方に、住居地図を示して、今どこにいて、どういう避難生活をしているのかを尋ねて、リストを作っていくという作業を手伝いました。また、週に2回ぐらい、「あったか食堂」を開設していますが、そこでお手伝いに行った職員が、ここに来る県内外のNGO、NPOなどのボランティアの団体や地域の災害支援のネットワークの方たちと一緒になって、「支え合いセンターを作ろう」ということで、共同募金から資金をいただいて、プレハブを3つ4つ組み合わせて、たまり場を作り、そこで炊き出しをしながら住民の皆さんがどんな生活をしているかをチェックをしていくことを始めました。この場所は「ぬくぬく亭」と名付けられ、そこに民生委員さんからの情報や、行政、包括支援センターの職員、地縁自治協議会など、いろいろな所の人たちが情報を持ち寄りました。「とにかく自殺者を出さない」ということを目標に、コロナ禍ではなかなかみんなで集まることができませんが、さまざまな頂き物があるので、それをお届け物にして、気になる方の所に様子を見に行くという活動を続けてきました。この活動は今年2021年3月で終了して、住民自治協議会にバトンを渡したのですが、これは職員にとってもなかなか出来ない良い経験で、いろいろなネットワークがあったからこそできた働きだったと思います。

もともと賛育会は東大の学生YMCAで作った法人です。墨田区で最初にYMCAの賛育会病院をつくった時に、「何もない所でこそ必要な医療をサポートしたい」ということで始まっていますので、そういう場面で活躍できるDNAを持っていると思います。

このような活動をしていくには、やはり募金が必要になってきますし、今回も5億円を借り入れています。賛育会としては、普段から募金活動をして支援をしていただいていますが、今もそれは継続しています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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