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防災インタビューVol.192

災害の検証が築く未来の危機への対応力

放送月:2021年9月
公開月:2021年12月

梅山 吾郎 氏

一橋大学 国際・公共政策大学院 非常勤講師
SOMPOリスクマネジメント株式会社

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

リアルな災害を訓練で経験

福島の原発事故で被災した福島県の海側にある浜通りという地域に、新たな産業基盤の構築と広域的な視点でのまちづくりを目指して、国が主導して行っている取り組みとして、「福島イノベーション・コースト構想」というプロジェクトがあります。実際東日本大震災が起きた2011年の後から動き出していますので、かなり長い期間動いているのですが、私はこのプロジェクトに2015年から参加させていただき、特に一つのパートとして日本の防災教育拠点の設置や施設の設計など、実現可能性の調査も含めて国のプロジェクトとして動いてきました。実際の調査の中身としては、国内外のいろいろな危機や災害を通した教育訓練の内容についての調査が主で、日本では取り組みがまだまだ十分でない部分がありましたので、特に東日本大震災における危機や災害の教訓をどう生かしていくかということを考えるような教育訓練施設の内容などを検討してきました。

今福島県の南相馬市にはこの検討を踏まえて、「福島ロボットテストフィールド」という訓練施設が実際に開設されています。ここは実際に一つの大きなまちができているような感じになっていて、例えば災害などで被害を受けたような状況が再現されています。1階部分が水没してしまったような住宅がプールの中に入っていたり、市街地が模擬的に造られています。普段のまちの中では大きな訓練はできないのですが、ここでは皆さんが自由に使えるような場ができていて、実際にそこにみんなが集まって訓練をすることができる場となっています。この場所を使って訓練を提供する社団法人のふくしま総合災害対応訓練機構という団体があるのですが、私はそこのアドバイザーとして現在活動しています。この活動を通して、福島の復興や、危機管理能力の高い人材の育成といった、長期間にわたる社会貢献できるような取り組みを推進しています。今後は、災害の教育訓練の場として、未来を担う小中学生、高校生の防災をテーマとした教育をこの場所への旅行という形で実施していければと思います。現状は、コロナ禍ということもあり、なかなかいろいろな取り組みができていませんが、こういうことも必要だと思っています。

また教育訓練を兼ねたキャンプも考えていきたいと思っています。キャンプ場にはある程度資機材も揃っていますが、野外で生活するという意味で、災害教育につなげられると思います。キャンプ場とまでは行かなくても、車中泊をしてみたり、テントを張ってみたりすることで、災害時にも役に立つ智恵を得たり、学びがあると思います。例えば、災害時に使うようなヘッドランプについても、レジャー用におしゃれな物がアウトドアメーカーから出ているので、そういったものを揃えることで、日常使いもできて災害対策にもつながりますので、これからこの活動にも取り組んでいきたいと思っています。

ふくしま総合災害対応訓練機構でも、これからいろいろな企業や団体、住民の方とも一緒に活動していきたいと思っていますので、ご興味のある方は、「ふくしま総合災害対応訓練機構」と検索してみてください。私たちの取り組みの内容や、毎年実施している活動などもご覧いただけます。

日本での学びを生かす、ベトナムのプロジェクト

日本にはさまざまな災害がありますので、その災害の経験を生かしてさまざまな対策も行なわれており、この災害への対策は日本国内だけでなく、海外からも注目されています。特にベトナムには、日本の企業も多く進出しており、有数のリゾートもありますし、貿易も盛んです。そのベトナムでは風水害も多いので、日本の災害対策を学び、ベトナムの災害教育に生かしていきたいという取り組みが推進されています。

その一つとして、ベトナムの首都ハノイから車で3時間の距離にあるベトナム北部のハイフォン市での取り組みについて紹介します。この町は港町で、ハロン湾という世界遺産がある非常にきれいなところです。このハイフォン市にある消防警察の災害対応力を上げるためのプロジェクトとして、日本のこれまでの災害対応の経験を生かした取り組みが行なわれています。私も2018年から毎年現地に行き来して、取り組みを推進しています。自治体、消防警察、住民の住んでいる団地、病院などで、もし大きな災害が来たときにどう対応していけばよいかを、日本の取り組み、仕組みから学びたいという思いから、実際に2018年に日本にやって来て学んでいます。日本では一般的になっている、災害時における自助、共助、公助の考え方も、ベトナムの方にとっては、まだまだ一般的ではなく、組織だった災害に対する訓練もまだまだ確立されていなかったので、この日本での学びを通して、ベトナムにこれをどう取り入れるかを考えながら、改善を進めているところですので、ぜひ、この日本の仕組みを取り入れて、減災につなげていただければと思います。このように外国に対しても、日本の災害に対する取り組みをこれからも発信していきたいと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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