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防災インタビューVol.192

災害の検証が築く未来の危機への対応力

放送月:2021年9月
公開月:2021年12月

梅山 吾郎 氏

一橋大学 国際・公共政策大学院 非常勤講師
SOMPOリスクマネジメント株式会社

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

学んで高める子育て家庭の災害対応力

皆さんがお住まいの地域の防災に関する取り組みは、どのようなことが行われていますでしょうか? 地域によって、取り組みには差があるとは思いますが、私が今住んでいる杉並区には、地域内に善福寺川と神田川が合流する所があり、水害も度々過去に発生したような地域もあって、比較的防災に関する取り組みが進んでいます。そこで実際、杉並区で行われている取り組みについてお話をさせていただきたいと思います。

特にご紹介したいのは、地域の子育て、家庭の支援についての活動で、「地域の家庭がより安心して生活して子育てができる環境を作ることを目的に活動している、災害というよりは普段の子育て環境を支援するNPO法人「ゆるゆるma〜ma」の活動です。この団体主催で、子育て世代の人々が、実際にどのような災害時の対応ができるのかを学ぶイベントがありまして、私も協力させていただきました。

日中に災害に遭ったときに、子育て家庭においては、お父さんは都心の会社に行っていて不在、お子さんとお母さんだけで対応しなければならないという状況になるかと思います。そんなときに備えて何を備蓄しておけばいいのか、地域の危険な所はどんな所かというような身近な知恵を学ぶために、地域の公園などを実際に活用してクイズラリーをする取り組みを進めています。特に小さいお子さんがいる家庭ですと、避難所で備えているような食事で大丈夫なのか、自分の家でどんな備蓄品を備えておけばいいのか、乳幼児向けの防災用品はどんなものがあるのかなどについて、一緒に考えるためのワークショップを開いてみんなで一緒に考えています。

特に先ほどお話ししたとおり、私の住んでいる所では水害などが過去にも起こっていますので、身近な危機を知るということで水害の危険な箇所、また地震時の危険な箇所などを実際に歩いて、目で見て感じることで、行動につながるような取り組みも行っています。その中に「防災クエスト」という名前の取り組みがあるのですが、これは私たち地域で始めたもので、古地図のような地域の地図を新たに作って、それを元に親子で、あるいは子どもさんたちだけで冒険するような形でまち歩きをして、ゲーム感覚で学びを得ていくような取り組みを工夫してやっています。ここでは子どもたちが事前に配置されたクイズボードを探し出して、それに答えながら最終的に点数を出していくようなゲームにもなるのですが、子どもたちが積極的になると両親の方も積極的に参加してきますので、かなり参加者数も多くなってきています。例えばこの地域では、地震と水害で避難所の場所が違うのですが、その意味などを知ってもらったり、災害用伝言ダイヤルを使って、実際子どもが伝言を残したときにそれを親がちゃんと聞き取って合流できるかというようなゲームをしたりして、毎回災害対応につながるような工夫をしています。コロナ禍のため、なかなか人を集めてやるイベントなどは昨年度から開けていない状況ではありますが、これからもできる取り組みをしっかりやっていって、地域の災害への対応力を上げていくことが大事だと思っているところです。

自ら考え、工夫で対応力向上

子どもたちの学びの場といえばもちろん学校だと思います。私は地域の小学校のPTA活動の場でも協力する場面があり、子どもたちが主体となって、災害時も工夫して対応していけるような対応力を上げるためのやり方を学ぶことができないかを考えながら、今工夫をしながらやっているところです。

普段学校ですと、避難訓練が定期的に行われているのはご存じかと思います。この訓練は、しっかりと災害時に決められた行動を取れるようにするためのもので、とても大事な取り組みなのですが、それに加えて、私たちは今、決められた行動が災害の種類によってはうまくいかなかったりする状況もありますので、そのようなときでも、子どもたち自身が自分で状況を判断して、どうすればいいのかを考える力を学んでいけるような取り組みをしたいと思っています。

災害や危機というものは、さまざまな種類や状況があって、それぞれ完璧な答えがその場ではないと思いますが、その中でも、できる限りベストな対応力を学ぶということが必要で、そういった経験は、既存の小学校の防災訓練では難しいかと思います。そのためにも、もっと対応力をつけていけるような取り組みを目指して、今活動をしているところです。

例えば、PTAでやっている取り組みの一つとして、教室の一室を暗闇にして、地震で倒れたような配置を作っておいて、自分たちだったらどうやってその状況に対応して行動するかを実際に子どもたちだけでその場に入って感じてもらったり、考えてもらったりするような取り組みや、段ボールやそこにあるものを使って、工夫してベッドや簡易トイレを作ってもらうというようなこともやっています。そうすることで、いろいろな状況になったときにも、「実際にどうすべきか」ということを考えることができ、今置かれた状況で最大限の工夫をすることで困難を解決するような力を身に付けてもらえるようなプログラムになっています。多分こういったことを体験して、学んでおくことで、いずれそれが災害時に少しでも生きていくといいと思っていますので、引き続き取り組んでいければと考えています。

災害や危機に立ち向かうために

私が皆さんにお伝えしたいことは、災害や危機の脅威を知って、それに立ち向かうために一人一人が何をすべきかを自ら考えることの大切さです。そして人と人とが、しっかりつながりを持って、今置かれている状況に対して共通の解決すべき問題や目指す姿を見いだし、助かりたいという思いを共有して、それを確認し合ってみんなが一緒に行動できるようになることが大切だと感じています。

日本は、多くの災害、危機を経験しています。この事実をしっかり振り返って、その経験を生かして、今後どうしていくべきなのか考えていく場を企業、学校、地域の皆さまなど、いろいろな立場の方々と一緒に作っていけるといいと思っています。一緒に考えていきたいという方がいらっしゃいましたら、「ふくしま災害対応訓練機構」と検索していただいて、ホームページからお声掛けいただけるとうれしいと思っております。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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