1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. イメージすることで備える 防災への取り組み
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.193

イメージすることで備える 防災への取り組み

放送月:2021年10月
公開月:2022年1月

佐々木 奈央 氏

元東急電鉄株式会社 鉄道事業本部 工務部

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

鉄道の土木工事における防災

私はこれまで、鉄道の土木工事の業務に携わってまいりましたが、その中で感じた、防災の考え方と鉄道土木工事との共通点についてお話しさせていただきたいと思います。

鉄道土木工事と防災との間には、たくさんの共通点があると思います。これは鉄道に限らず建設部門一般で言われることですが、「安全を確保する」ということが最重要事項として意識されており、そういった意味で、危機管理という面で防災とよく似ている部分が多いと思います。

特に建設分野の中でも鉄道工事においては、山の中や空き地というような何もない所での工事というのはほとんどなく、営業している線の改良工事や修繕工事が主ですので、施工する作業員、施工会社の安全だけでなく、通常の鉄道運行や鉄道を利用するお客さま、工事現場の周辺に住んでいらっしゃる方々の安全も確実に確保していかなければなりません。その視点に立って安全を考えていくということが、鉄道工事の中では、非常に特徴的なところだと思います。特に私が施工管理の部門にいた際には、担当者レベルまで周知させ、事故を未然に防ぐための取り組みを行い、万が一事故が発生したときにもスムーズに対応できるようにするための取り組みがなされていました。事故を未然に防ぐ取り組みとしては、社内はもちろん、協力会社、施工会社などと過去の事故情報を随時共有したり、施工をしようとしている工事の内容が書かれた、施工計画書を見ながら、類似している工事の内容を調査して、「他の工事では、こんな事故が起こった」というような事故情報を洗い出すことで、施工計画の段階で事前にどこが危険で、何に気を付けないといけないかということを調査し、危険予知を行っていました。また、施工計画を確認する際には、社内では「二重防護」という概念を重要視していました。これは、事故を防ぐための対策を二重に行うことで、1つの対策が機能しなかった場合に備えて、他の対策も併せて実施していくことで、安全が確保される確率が高まり、最悪の事態を防ぐという考え方です。それと同時に、万が一の事故が発生した際の連絡系統、連絡体制も事前に整え、事故が発生した際の一時対応、緊急対応を事前に確認し、訓練も実施しています。これは、防災の分野での取り組みにも非常に似ているところかと思います。

災害が発生したときの被害を未然に防ぐ防災という考え方において、災害を防ぐ手立てを考えるのと同時に、仮に被害が防ぎきれなかった場合でも、ダメージを最小限にする減災という2つの考え方があるというのも、先ほど申し上げたような二重防護の考え方と非常に近いと思いますし、災害が発生したときに何が起こるのかを事前に考えておくという、災害をイメージする力が重要だということも、防災の分野における危険予知と非常に似ていると思います。

災害イマジネーション能力を養う

災害を事前にイメージしておく力は「災害イマジネーション能力」と言われ、目黒研究室の中でも目黒先生が災害を防ぎ、減災を考えるには、非常に重要だとおっしゃっていたことです。災害が発生したときに何が起こるのか、例えば、インフラが機能しなかったり、避難所がすぐに開設されるわけではなかったり、電車も止まるというような、「災害時には何が起こるのか」ということを事前にイメージできているか、いないかで、実際に災害が発生したときに対応できる能力というのも変わってきます。そういったことをイメージできる能力を事前につけておくことがとても重要です。災害時は、日常生活とは全然状況が変わってしまうので、普段だったらできるようなことが全然できなくなります。それを事前に分かっているかどうかが重要ですが、実際これは、訓練しないとなかなか難しいことだと思います。

目黒研究室では、「目黒巻」という災害イマジネーション能力を上げるための方法が提案されておりまして、保育園や小学校での防災教育系のワークショップの中でもご紹介させていただいていました。これは、土砂災害や洪水や地震などいろいろなパターンの災害について、災害が発生してから10分後、1時間後、2時間後、1日後という形で、時系列に応じて何が発生していくのかと、そのタイミングで自分たちは何をしていくのかということを巻物のような紙に書いてもらうもので、書いた後でお互いに見せ合って、「これって災害が発生したときには実際はできないよね」「災害が起きたら電車が止まって歩いて帰らないといけないね。パンプスだと歩きにくいからスニーカーを用意しておかないといけないね」などということを発見していくためのものになっています。このように、災害発生後に時系列に沿って、どうなっていくかをイメージしながらまとめていくことで、より有効な対策が取れるようになってくると思います。

災害時のマニュアルは、会社や自治体でも作っていると思いますが、それを読むだけだとなかなか自分の行動にまで落とし込んでいけないので、目黒巻のように、災害をイメージして、時間ごとに自分の行動を考えて巻物に書き込んでいくことで、具体的な対策を考えるようになるのがこの目黒巻の狙いであり、よりイメージしやすくなると思います。自分の行動だけではなく、ワークショップの中で他の人の作った巻物を突き合わせてみたりすることで、お互いに新たな発見も生まれてきます。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

会社概要 | 個人情報保護方針