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防災インタビューVol.200

人の幸せのための社会デザイン

放送月:2022年5月
公開月:2022年8月

中村 陽一 氏

立教大学 前教授
社会デザイン研究所 前所長
社会デザイン学会 会長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

コミュニティにおける社会デザイン

「社会デザインとは何か」ということを手短にお話をさせていただいた際に、キーワードは「つながり」とか「関係性」だというお話をしましたが、これをもう少し近年言われている言葉とつなげていくと、「ネットワーキング」ということになります。これは「ネットワーク」という言葉のing現在進行形ですから、ネットワークが取り結ばれていく状態のことで、こうしたことが非常に大事だということになります。とりわけそれをコミュニティ、ここではコミュニティという言葉を「地域」というふうに訳したいと思いますが、地域レベルでの社会デザイン、コミュニティデザインとも言い換えられます。それをどのように進めていくかが大切で、地域におけるさまざまな人と人、人と組織、あるいはいろいろな活動をつなげていく、そんなイメージが大事になってくると思います。

防災という観点でもコミュニティというのは、非常に大切です。最近では防災という区切りにとどまらず、減災のための事前の対応や準備、心構えが非常に大事だと言われています。もちろん個人レベル、家庭レベルでもいろいろなことを考えて準備をしておいたほうがいいのですが、それだけでは、何か大きな災害が起こったときには対応しきれないと思います。隣近所から始まって、住んでいる近隣のいわゆるコミュニティの協力体制が、いざというときにどれぐらい取れるかが重要になってきます。昔だったらご近所で「どこそこにおばあちゃんがいますよ」とか、「あそこは小さなお子さんがいるよ」とか、そういうことが割と分かっていたのですが、今は都市化された生活の中では、ちょっと見えづらくなっています。なかなか見えにくくなった背景には、やはり「家庭生活を他の人に把握されているは嫌だ」「プライバシーを守りたい」という気持ちがどうしても皆さんにありますから、それは当然のことなのですが、いざというときにお互いが助け合うことができるような体制とプライバシーの問題を普段からどういうふうにバランス良く持つことができるかを考える必要があります。そのためにも、やはり日常的に災害時の対応の予行演習的なものをやっておくことも大切です。従来でしたら、町内会や自治会がそういう役割を果たしてきたのですが、最近は町内会に入っていない家庭も割とあると思いますので、NPOのような地域の市民の集まりがその役割を果たすか、もしくはやはり自治体や行政がもう少し地域の人たちと連携して協力して普段から備えをしておくことが大事です。各家庭で防災グッズを用意しておくことが重要なのと同様に、当たり前のことではありますが、事前にきちんと考えておくことが大事だと思います。しかしながら、地域のコミュニティの状況は、やはり地域差があります。例えば大きなマンションなどでは、どうしてもどんな人が住んでいるのかよくは知らないという状態も起こりやすいです。最近はマンションなどでも管理組合の中でもっと積極的に考えていった方がよいという動きは起こっているのですが、それを進めていくための担い手がやはり必要です。

コミュニティデザインのための「つながりづくり」

防災と絡めたコミュニティデザインについてのお話をさせていただきましたが、その中で、地域のつながりを作る場や機会を作っていくことが非常に大事です。ただ、今までと180度違ったことを急にできるわけではないので、まずはそのチャンスとなる場を作っていくことが重要です。例えば、その地域におけるお祭り的な場も含めた集まりの場も大事ですし、単に防災の講習会をやってもなかなか人は集まりにくいので、何かそこに少し面白みというか、エンターテイメント的な要素を入れて、大人も子どももゲーム感覚で楽しんでやれるような、防災をゲーム仕立てで考えるワークショップなども最近はやり始めている方もいます。このようなラジオ放送の形態で、親しみやすくさまざまな情報が得られる番組も出てきましたが、番組作りの中で、このような投げ掛けをもっとやっていただければと思います。また、世代にもよりますが、最近はネット社会になってきて、従来と情報の取得の仕方が変わってきていますので、それこそYouTubeのような映像を活用したものも有効ですし、シニア向けには、やはり顔と顔が見える関係での話の方が伝わりやすいので、そこはもうリアルで伝えていくことも大切です。最近はコロナ禍でなかなか集まりを持ちにくいということはありますけれど、ソーシャルディスタンスを取って、換気や消毒の工夫をしながら、場を少し小さめの単位で持っていくのがいいのではないかと思います。その際に大きなコミュニティだと、何かをやっておしまいということになりがちなので、小さなコミュニティでつながりを持ってもらえればと思います。

 特にそのような場を作る際には、町内会だけで呼び掛けても人が集まりにくいということもありますので、やはり一つの組織だけが呼び掛けるのではなく、地方でいえば地方自治体とその地域のさまざまな企業とか事業者の皆さんでやることも大切です。地域には、商工会議所や青年会議所のような組織もありますし、いろいろなテーマに取り組んでいるNPOもあります。こういうところを私は「クロスセッター」と呼んでいます。これまでは、行政は行政、企業は企業、NPOはNPOというように別々に活動してきましたが、そうではなくて、協働、コラボレーションをしていくということが大事です。そのときには、どっちが偉いとか何とかということではなくて、フラットな関係でやれるようにすることが大事ですので、多分これから求められるのは、それをコーディネートできる人の存在です。それと同時に、ラジオ局にも参加してもらって、いろいろな催しをしたり、呼び掛けができるといいと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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