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防災インタビューVol.200

人の幸せのための社会デザイン

放送月:2022年5月
公開月:2022年8月

中村 陽一 氏

立教大学 前教授
社会デザイン研究所 前所長
社会デザイン学会 会長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

コミュニティデザインとまちづくり

防災と絡めてコミュニティデザインという言葉を使って話しましたが、これもベースに「まちづくり」という観点があるかないかで、かなり違ってくると思います。特に都市部で気を付けなければならない点は、一つは、シニア層が取り残されることにならないように、ということです。また、日本に住む外国人の方も増えてきて地域にはいろいろな方たちが住むようになってきていますので、最近は行政もいろいろな言語を使用するように工夫はされていると思うのですが、いわゆるダイバーシティと呼ばれる多様性についても考える必要があります。地域にはいろいろな人たちがいて、もちろん障害を持った方もいるでしょうし、小さなお子さんもいるでしょうし、たとえ日本人同士と言えども、何でも以心伝心でうまく伝わるものだと思い込んではいけないと思います。お互いの状態を通訳し合うような、そういう配慮も必要になってきます。

まちづくりについては、この間2年余り、ずっとコロナ禍ということで、私たちは大変な思いをしてきましたが、この状況はまだこの先続くかもしれません。それによって、いわゆるリモートでオンライン会議をしたり、お互いがやりとりをすることも増えてきたことを考えると、これまで以上に職住近接についても考えていく必要があると思います。働く場所と住まいが遠い所にあることで、以前でしたら通勤ラッシュの電車にもまれて会社に行くということもありましたが、今は必ずしもそういう働き方でない働き方でやれるのではないか、やれる仕事も多いのではないかと人々が気付き始めています。これは企業の取り組みと地域の取り組みの両方から、ある種ここでもダイバーシティな、多様な働き方を認め、それが実現できるようなあり方を考えていく必要があるのではないかと思います。コロナ禍以降、この多様性についてみんな気が付いてきています。これまでも社会の中にそういう問題は既に出ていたのですが、コロナ禍でやはり改めて目の前に具体的な形として突き付けられることで、「なるほど、そういうことがあるんだな」というふうに皆さんが、気付き始めたということです。本当に最初は大変だったと思いますが、世代を問わず、皆さん慣れてきたと思います。その分リアルなコミュニケーションもたまに欲しいね、という気持ちも一方で起こってきていますから、そのリアルなコミュニケーションとオンラインなどでできるコミュニケーションのバランスとか兼ね合いを考えていく時代に入ってきています。私も仕事柄学生さんといろいろ話す機会が多いですが、本当に私が全然知らないようなコミュニティというのがたくさんできているので、非常に面白いところです。よく若い人たちの歩きスマホのことなどが問題視されていて、それはもちろんやめた方がいいのですが、僕は若い世代が上手にそういう新しいツールを活用して、コミュニケーションをする方法を自分たちで発見しているというところは大事なことなのではないかと思っています。例えば、私が言った言葉がなんのことか分からないと、学生たちは割とパッと調べて、「先生、これですか?」と見せてきますので、「ああそう、これこれ」なんていうところで通じ合うものがあるので、これはツールとして活用することができ、いろいろなコミュニケーションも進むと思います。

子育てと両立する働き方

最近は職住近接という環境になってきているという話をしましたが、今までは小さいお子さんがいる家庭では、子育てと働くことが、ともすれば別々のものになってしまって、主に女性がそういったところでいろいろな困難を引き受けざるを得ない状態がありました。最近では、やはりコロナ禍で家庭にお父さんもいる機会も多くなってきています。ここが本当に大事なのですが、家庭にお父さんがいるけれど、何もやらない、ということも起こってきており、家庭内でけんかになるようなケースもあります。そこはきちんとやらないといけないのですが、家庭に両親がいて、それぞれ仕事をしているような状態を子どもが見ながら育ち、仕事と育児と家庭のことを、うまくその家庭ごとのバランスややり方とかを編み出して工夫していくことが大事な時代になったと思います。それはコロナ禍がもたらしたことで、もちろん大変ではあるのですが、逆にうまく発想を切り替えていけば新しい家庭像にもつながり得るのではないかと思います。

また、テレワークによって家で働いている親の姿を、実際、子どもが見ることが出来るということは非常に大事で、これまでだと一緒に遊びに行ってほしいのに、お父さんは日曜日は疲れて寝ている、なんかダラダラしているだけで全然パッとしないというようなイメージがあったと思うのですが、「やはり大人ってこういうふうにして働いているんだ」という姿を見せることは、大事だと思います。一方、男子学生も育児ということも視野に入れて就職先を考えたいという声が、今までよりかなり出るようになってきています。これからはそういうことをあらかじめ念頭に置いた男性たちが就職してきますから、企業の側も選ばれる企業になるためには、そういう意識に見合った働き方を提供できる企業になっていくことが大事になってきます。

コロナ禍や東日本大震災などの本当なら起こってほしくなかった災厄や災害が起こったときに、世の中で進み始めていたことがあらわになり、そこに対して自分たちは工夫していかなければならなくなります。この状況で新しい動きが顕在化していくことは、不幸中の幸いというとなんですが、災い転じて私たちの社会をなんとか前に進めるために大事なことだと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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