マルチクラウドとは？特徴やハイブリッドクラウドとの違いを解説

現代は多くの企業がクラウドサービスを活用していますが、近年はさらにマルチクラウドと呼ばれる運用形態に注目が集まっています。

マルチクラウドを導入すれば、クラウド利用のリスク防止などさまざまなメリットを期待できますが、「そもそもマルチクラウドって普通のクラウドと何が違うの？」「ハイブリッドクラウドとは別物？」という疑問を抱かれる方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、マルチクラウドの基礎知識やハイブリッドクラウドとの違いについて、わかりやすくまとめました。この記事を読めば、マルチクラウドのメリットやデメリット、導入手順を理解できます。マルチクラウドに興味がある方は、ぜひ参考にしてください。

マルチクラウドとは？

マルチクラウドとは、複数のクラウドサービスを組み合わせて運用する手法のことです。似たような言葉にシングルクラウドやハイブリッドクラウドがありますが、特徴が大きく異なるため注意が必要です。

ここではマルチクラウドの特徴や、シングルクラウド、ハイブリッドクラウドとの違いについて解説します。

マルチクラウドの特徴

マルチクラウドの特徴は、業務別や用途別にクラウドサービスを使い分けるところです。

インターネット上で誰でも利用できるクラウドサービス（パブリッククラウド）には、AWS（Amazon Web Services）やMicrosoft Azure、GCP（Google Cloud Platform）などがありますが、それぞれサービス内容や利用料金、外部連携のしやすさなどが異なります。

マルチクラウドではそのようなクラウドサービスごとの違いに着目し、目的ごとに適したサービスを利用することで、リスク回避やコスト削減を目指せます。

マルチクラウドとシングルクラウドの違い

シングルクラウドとは、名前の通り、単一（シングル）のクラウドサービスのみを利用する運用形態のことです。1つのクラウドにデータが集約されるため、ツールやUIが統一され、運用管理しやすいというメリットがあります。また、月額料金の請求も1社からのみとなるため、コスト管理も容易です。

一方で、そのクラウドサービスに何らかの障害が発生した場合に受ける影響が甚大で、業務が滞るリスクがあります。シンプルさや管理のしやすさを重視するならシングルクラウドが適していますが、セキュリティの高さや用途に合わせた機能を活用したいのならマルチクラウドを選んだ方が良いでしょう。

マルチクラウドとハイブリッドクラウドの違い

ハイブリッドクラウドとは、パブリッククラウドと、自社内や特定のユーザー向けに構築されたプライベートクラウドを組み合わせて使用する運用形態です。

プライベートクラウドはパブリッククラウドよりもカスタマイズ性に優れている他、高いセキュリティ環境を構築できるところが特徴です。そのため、ハイブリッドクラウドを運用している企業では、機密性の高い作業はプライベートクラウドで、それ以外の作業はパブリッククラウドで行うといった使い分けを行っています。

用途に応じてクラウドを使い分ける点はマルチクラウドに似ていますが、両者には明確な違いがあります。ハイブリッドクラウドが、種類の異なるクラウド（パブリックとプライベート）を連携させて一体的に運用するのに対し、マルチクラウドは複数の（主にパブリック）クラウドを連携させず、それぞれ独立したシステムとして使い分けるのが一般的です。

関連記事：クラウドサービスとは？種類・例・メリットや活用のポイントを解説

マルチクラウドを導入するメリット

マルチクラウドを導入すると、シングルクラウドで起こりやすいリスクの防止やコストの最適化、セキュリティの向上といったメリットを期待できます。

ここでは、マルチクラウドを導入した場合に得られるメリットを3つのポイントに分けて解説します。

ベンダーロックインを回避できる

ベンダーロックインとは、システム構築などを単一のベンダーにだけ依存した結果、他のベンダーの製品やサービスへの移行が難しくなることです。

ベンダーロックインが進行すると、特定のベンダーしか自社のシステムを理解できず、ますます他のベンダー製品への移行が困難になるという悪循環が発生します。また、同じベンダーの製品を使い続けると新しいシステムへの切り替えが難しくなり、「欲しい機能が使えない」「システム移行に多大なコストがかかる」といった問題が生じやすいです。

マルチクラウドを導入すれば、特定のベンダーへの依存度が下がるため、ベンダーロックインのリスクを回避できます。

コストを最適化できる

マルチクラウドの場合、用途に応じたクラウドサービスを選択することで、コストを最適化できます。例えば、高度なデータ分析を行う分野は処理能力の高いクラウドサービスを選ぶ一方、単純なデータの保管にはリーズナブルなクラウドサービスを利用すれば、無駄のないクラウド運用を行うことが可能です。

また、マルチクラウドなら新しいシステムへの移行を比較的スムーズに行えるため、既存のサービスが値上げをしたときに他社サービスへの移行を検討しやすいというメリットもあります。

セキュリティの向上を図れる

各クラウドサービスは独自のセキュリティ対策を講じていますが、サイバー攻撃などを受けてサーバがダウンするリスクはゼロではありません。マルチクラウドは、このような障害発生時のリスク分散の手段としても有効です。

シングルクラウドの場合、利用しているサービスがダウンすると業務を継続できなくなり、多大な損害を被る恐れがあります。その点、マルチクラウドならいずれか1つのクラウドサービスがダウンしても、残りのクラウドサービスに切り替えればすぐに業務を再開できるため、損害を最小限に押さえることが可能です。

関連記事：クラウドストレージとは？メリットや比較するときのポイントを解説

マルチクラウドを導入するデメリット

マルチクラウドの導入はメリットだけではなく、気を付けなければならないデメリットもいくつかあります。導入後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないよう、注意点もよく理解してから導入しましょう。

以下ではマルチクラウドを導入する際に懸念されるデメリットを3つご紹介します。

コスト管理が複雑になる

クラウドサービスを利用する場合は、毎月利用料金を支払う必要があります。しかし、マルチクラウドは複数のサービスを利用するため、コスト管理が複雑になりがちです。各サービスで料金体系や契約期間が大きく異なるためです。従って、それぞれのサービスにかかる料金や、決済日などを把握した上で、適切に管理しなければなりません。

また、2つ以上のクラウドサービスでサービス内容が重複している場合、知らない間に余計なコストがかかる可能性もあります。

運用ルールの設定が難しい

クラウドサービス導入の際は運用ルールを設定するのが基本ですが、マルチクラウドの場合、特徴や機能が異なるクラウドサービスの一つ一つに適切な運用ルールを設定しなければなりません。そのため、手間や時間がかかる上、実際に運用する際も各々のサービスごとに運用ルールを切り換えて使用する必要があります。

特にクラウドサービスを使い慣れていない場合、2つ以上のサービスを併用すると現場の混乱を招くかもしれません。

このような問題を解決するためには、利用者の教育・指導をしっかり行った上で、スモールスタートする必要があるでしょう。

教育に時間がかかる

前述したように、クラウドサービスはベンダーによって機能や操作性などに違いがあるため、従業員は各々のサービスの使い方をマスターする必要があります。それぞれのサービスに精通した担当者がいれば問題ありませんが、一から人材を教育する場合、スムーズに運用できるようになるまでにはかなりの時間を要します。

「今すぐマルチクラウドを導入したい」という場合は、社外から専門家を招いたり、ITに詳しい人材を募集したりする方法もあります。しかし、そちらにも相応の時間やコストがかかるところが難点です。

マルチクラウドを導入する手順

マルチクラウドをスムーズに導入するためには、適切な手順を踏むことが大切です。まずは目的を明確にし、クラウドサービスを選ぶ軸を定めるところからスタートしましょう。

ここでは、マルチクラウドを導入する際の基本的な流れを5つのステップに分けて説明します。

目的を明確にする

まずは、マルチクラウドを導入する目的を明確にするところから始めましょう。

目的が曖昧なまま導入を進めると、自社に適したクラウドサービスを選定できず、思ったような効果を得られなかったり、無駄なコストを支払ったりする原因となります。

マルチクラウドを導入する目的は、企業によって異なります。自社が抱えている課題や問題を洗い出した上で、マルチクラウドを導入する理由や、各クラウドサービスを利用する業務の範囲などをはっきりさせましょう。また、クラウドサービスの管理をどの部署が担当するのかも決めておきます。

クラウドサービスを選定する

クラウドサービスを導入する目的を明確にしたら、その目的の達成に適したサービスを選定します。クラウドサービスは複数存在しますが、具体的な比較ポイントは以下の通りです。

• サービス内容
• 料金体系
• セキュリティ
• サポート体制

サービス内容については、自社の課題解決や導入目的に適した機能・サービスを提供しているかどうかをチェックします。既存のサービスを連携させたい場合は、外部連携の可否も確認しておくと良いでしょう。

クラウドでは重要な機密情報なども管理するため、導入されているセキュリティシステムも比較のポイントです。さらに、万一のトラブルが発生した場合のサポート体制も確認しておきましょう。

なお、初めてクラウドサービスを利用する場合は、導入と運用もサポートしているベンダーを選ぶのがおすすめです。

管理体制を構築する

導入するサービスが決まったら、クラウドの管理体制を構築します。マルチクラウドでは複数のクラウドを横断して運用するため、一元管理できるシステムや、マルチクラウドに対応したセキュリティツールなどの導入も検討しましょう。また、いずれかのクラウドにトラブルが発生した場合の対処方法なども決めておくことが大切です。

自社だけで管理するのは難しいと思ったら、社外サービスに管理を委託するのも一つの方法です。社外サービスを利用すれば、人材の募集や教育にかかる手間やコストを省けます。しかし、アウトソーシングの利用料が発生するため、費用対効果を慎重に分析して検討しましょう。

データを移行する

管理体制を整えたら、データの移行を開始します。

ただし、膨大なデータを一度に移行するのは時間がかかる上、一気にマルチクラウド化を進めると現場が混乱する恐れがあります。そのため、導入当初はデータの一部のみを移行し、スモールスタートさせた方が良いでしょう。

もしマルチクラウドの運用で何らかのトラブルや問題が生じたとしても、規模が小さければ業務への影響を抑えられます。移行後に大きな問題が起こらなければ、データの移行を進めていき、徐々に規模を拡大していきます。

課題を把握して改善する

マルチクラウドを現場に導入すると、想定外の課題や問題が見つかることがあります。思ったような効果が出ないと思ったら、どこに問題があるのかを精査し、必要な対応や措置を講じましょう。

特に大きな問題が発生していない場合でも、定期的にマルチクラウドの効果を定量的にチェックし、常に適切な状態を保つための改善を加えていくことが大切です。そのためには、マルチクラウドに関するPDCAサイクルを回す体制を整えておく必要があるでしょう。

関連記事：クラウド化５つのメリット！従来のスタイルよりも業務がはかどるその魅力とは

コンテンツの管理・共有ならイッツコムの「Box」がおすすめ！

イッツコムが提供する「Box」は、ビジネスのコンテンツ管理に便利な法人向けクラウドサービスです。

容量無制限で利用できるため、ストレージの空き容量を気にせず大容量ファイルをやり取りできます。ファイルの共有・編集・検討・承認を一元化でき、複数のメンバーで同時に編集を行ったり、予定やチェックリストを一緒に作成したりすることも可能です。

また、ビジネスで多用する外部サービスと幅広く連携できるところも魅力の一つです。SFAやMA、Web会議システム、チャットアプリなどと連携すれば、運用幅をさらに広げられます。これにより、マルチクラウドで利用しているさまざまなツールとBoxを連携させ、コンテンツハブとして活用することも可能です。

なお、プランは「Businessプラン」「BusinessPlusプラン」「Enterpriseプラン」の3つから、ニーズに応じて選べます。

まとめ

マルチクラウドは特定のクラウドのみを利用するシングルクラウドに比べて、ベンダーロックインの回避やコストの最適化、セキュリティ向上などさまざまなメリットが期待できます。一方で、コスト管理や運用ルールが複雑になりやすいため、人材の教育や必要に応じたアウトソーシングの利用などの下準備をしっかり行っておくことが大切です。

なお、クラウドサービスはベンダーごとに特徴や機能が異なります。自社の目的や課題解決に適したサービスを選定しましょう。

イッツコムでは場所を選ばず誰とでも簡単に大容量ファイルの共有・編集を行えるクラウドサービス「Box」を豊富なプランで提供しています。米国司法省をはじめとして、多数の政府機関や金融業界、医療業界でも採用されているサービスです。

マルチクラウドの導入を検討されているのなら、ぜひイッツコムまでお気軽にご相談ください。