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静かな退職がもたらす影響と防止策7選|従業員の離脱を防ぐ職場づくり

働き方改革や価値観の多様化が進む中で、「静かな退職」が広がりつつあります。静かな退職とは、必要以上の努力を避け、最低限の仕事にとどめるという働き方を指します。従業員の心身を守る手段として注目される一方で、企業にとっては生産性の低下や離職率の上昇といった影響を及ぼす可能性もあります。

この記事では、静かな退職が企業にどのような影響をもたらし得るのかを整理し、その防止策として7つの方法を紹介します。従業員のエンゲージメントを高め、安心して働ける職場づくりを進めたい人事担当者や経営層の方は、ぜひ参考にしてみてください。

静かな退職(Quiet Quitting)とは?

「静かな退職(Quiet Quitting)」とは、会社を辞めるわけではなく、与えられた業務を最低限こなし、それ以上の責任や追加業務を引き受けない働き方のことです。Z世代や20代・30代の若手を中心に広がりを見せていますが、過労や責任過多を避けたい40代・50代からも共感を集めています。

似た言葉に「サイレント退職」と「騒がしい退職」があります。サイレント退職とは、上司や同僚に相談せず、水面下で退職の準備を進めて職場を離れる行動のことです。一方、騒がしい退職は、いつも通り働いていた人が突然、同僚や上司に「辞めます」と告げ、そのまま突発的に退職してしまうケースを指します。

静かな退職が広がる背景

静かな退職は「退職を前提としない働き方の選択」であり、会社に在籍しながら自分の労働をコントロールしている点に特徴があります。つまり、静かな退職は必ずしも「ネガティブな退職予備軍」とはいえません。

しかし、静かな退職が広がる社会的背景を理解することは、働きやすい職場環境を構築する上で欠かせません。ここでは、なぜ静かな退職が広がっているのか、その要因について解説します。

心身を守るための自己防衛

静かな退職が広がる一因として、自分の生活や健康を守るための自己防衛という側面が考えられます。長時間労働や過度な責任感によって心身に不調をきたすケースは少なくなく、実際、「過労死」や「メンタル不調」といった社会問題が取り上げられることもあります。そうした状況の中で、無理をしてまで働き続けることに疑問を持つ人が増えています。

仕事より私生活を優先する価値観の広がり

「仕事第一」という価値観(ハッスルカルチャー)から、ワークライフバランスを重視する方向へシフトしていることも要因のひとつです。つまり、「キャリアの成功」よりも、「日々の充実」や「家族や趣味の時間」を大切にする人が増えているのではないかといわれています。

働き方の柔軟化がもたらす静かな離脱

働き方改革やリモートワークの普及により、従来のように「長時間の残業」が評価される時代ではなくなりつつあります。

テレワークやフレックスタイムを利用することで、勤務時間や働く場所をある程度コントロールできるようになりました。その結果、業務に必要な最低限のアウトプットを維持しながら、自分の時間を確保することが可能となり、こうした柔軟さが静かな退職を実行しやすくしていると考えられます。

女性・シニアの社会進出

静かな退職は、女性やシニア層に多い傾向があるとされています。これは、女性・シニア層が仕事と私生活の両立に直面しやすいためといえるでしょう。例えば女性の場合、子育てや介護など家庭の役割を担うことが一般的に多く、生活を重視して仕事をセーブする選択を取るケースがあります。

また、シニア層では、健康面や体力面を考慮し、「無理のない範囲で働く」ことを望む人も少なくありません。さらに、社会全体で女性やシニアの就業者数が増えていることも背景にあり、こうした層の価値観が労働市場に反映されることで、静かな退職が広がっている可能性もあります。

静かな退職がもたらす企業への影響

静かな退職は、必ずしも「問題行動」として捉えるべきものではなく、従業員が心身の健康や生活の質を守るために選ぶ働き方のひとつとも考えられます。ただし、企業側の視点に立つと、その動きが広がることでネガティブな影響が生じる可能性も少なくありません。

ここでは、静かな退職が企業にどのような影響をもたらし得るのかについて解説します。

生産性が落ちる

静かな退職は「必要以上の努力をやめる」という考え方でもあるため、仕事に対して受動的な姿勢が強まることがあります。その結果、チーム内で積極的に意見を出し合う機会や、新しい発想を生む対話が減少するおそれがあります。

創造的なアイデアや改善提案といったプラスアルファの取り組みが少なくなることで、組織全体の生産性に影響が及ぶ可能性もあります。企業にとっては、こうした状況をいかに防ぎ、活力を維持していくかが課題となるでしょう。

チーム全体のモチベーションが下がる

チームワークは相互の協力によって成り立つため、一部のメンバーが受動的な姿勢をとると、他のメンバーのモチベーションが低下する場合があります。特に、成果や評価がチーム単位で行われる職場では、「自分だけが頑張っているのではないか」という感覚が生まれ、全体の雰囲気が徐々に沈んでしまうこともあり得ます。

離職率が上がる

最低限の仕事しかこなさない人が増えると、その分の業務が他のメンバーに集中する可能性があります。こうした状態が長く続けば、不公平感や疲労感が蓄積され、結果的に離職を検討する従業員が増えることも考えられます。

静かな退職は、直接的に退職を引き起こすわけではありません。しかし、組織内の人間関係や業務バランスを崩すことで、結果として離職率を押し上げる要因になり得ます。

【関連記事:従業員の退職を防ぐ効果的な対策は?定着率を高める組織・環境づくり

静かな退職の兆候

静かな退職は、外見上は大きな変化がなくても、日常の仕事ぶりの中で少しずつ表れることがあります。もちろん、これらの兆候が必ずしも静かな退職に直結するとは限りません。ただし、組織として早めに気付くことができれば、従業員の負担を軽減したり、環境改善につなげたりすることが可能です。

以下に、代表的な兆候の例をピックアップしました。

  • 会議やミーティングでの発言が減る
  • 新しい業務や役割への挑戦を避ける
  • 定時退社が増える、残業をしなくなる
  • チーム内での雑談や交流が減る
  • キャリアに関する意欲的な発言が減る
  • 感情を表に出さない

これらの兆候が見られたとしても、必ずしも「静かな退職」であるとは限らず、個人的な事情や一時的な疲れである場合もあります。重要なのは、兆候をきっかけにコミュニケーションを図り、働きやすい環境づくりに取り組む姿勢だといえるでしょう。

静かな退職を防ぐ7つの対策

静かな退職によって組織力や生産性に悪い影響が及ばないようにするためには、従業員が安心して意欲的に働ける環境を整えることが重要です。具体的には、モチベーションやエンゲージメントを高める仕組みの導入や、職場環境の改善などが効果的と考えられます。

ここでは、静かな退職を防ぐための7つの対策を紹介します。

1.定期的に面談を実施する

静かな退職を選ぶ背景には、日常業務では表面化しにくい悩みや不安が隠れていることがあります。こうした小さな変化に気付くには、定期的な面談が有効です。ただし、上司が一方的に評価を伝える場ではなく、従業員が率直に意見を話せる双方向のコミュニケーションの場とすることが大切です。

キャリアへの不安や職場環境に対する違和感を早期に共有できれば、改善につながりやすくなります。あわせて、従業員のエンゲージメント向上につながる具体的な対応も検討しやすくなるでしょう。

2.人事評価制度を見直す

人事評価に対する不公平感は、モチベーション低下の大きな要因になり得ます。努力や成果が正しく評価されていないと感じた従業員は、頑張る意味を見失い、最低限の業務だけにとどめる可能性が高まります。そのため、評価基準を透明化し、誰もが納得できる仕組みにすることが重要です。

例えば、成果だけでなく、プロセスやチームへの貢献度も加味する多面的な評価制度を導入するなどの工夫が考えられます。

3.従業員の適性に応じた業務・役割を与える

興味や適性に合わない業務が続くと、不満を抱きやすくなり、やる気の低下につながります。一方で、自分の強みを発揮できる役割を担うことができれば、仕事へのやりがいや達成感を得やすくなります。

従業員一人一人のスキルや志向性を把握し、適材適所で業務を割り振ることにより、「この仕事は自分にしかできない」という責任感も生まれるでしょう。自分の仕事に責任を持てるようになると、主体的に行動する意識が育ち、静かな退職を考える余地が小さくなる可能性があります。

4.エンゲージメントサーベイを実施する

エンゲージメントサーベイとは、従業員の仕事に対する意欲や会社への信頼感、働きやすさなどを可視化するアンケート調査のことです。これを定期的に実施することで、現場に存在する不満や改善点を客観的に把握できます。

結果を数値として分析することで、課題の特定や施策の優先順位付けがしやすくなる点も大きなメリットです。また、従業員の声に耳を傾ける姿勢を示すこと自体が、エンゲージメント向上につながる可能性もあります。

5.柔軟な働き方・制度を取り入れる

ワークライフバランスの実現は、従業員満足度を高める上で欠かせない要素です。リモートワークやフレックスタイム制度、副業の許可などを導入することで、自分に合った働き方を選べるようになります。

特に家庭や育児、介護との両立が求められる従業員にとっては、安心して長く働ける理由となるでしょう。働き方の自由度を高めることは、静かな退職の予防に加え、離職率の低下にも寄与します。

6.従業員のキャリア構築をサポートする

将来のキャリアに不安を抱えていると、現在の仕事に意欲を持ちにくくなります。例えば、「このまま働き続けても昇進できないのではないか」「給与が上がる気がしない」といった不安を感じれば、モチベーションが低下するだけでなく、外部への人材流出にもつながりかねません。

一方で、会社がキャリア形成を支援してくれるという安心感があれば、長く働き続けようという意欲にもつながります。具体的な取り組みとしては、スキルアップ研修や資格取得支援、キャリア相談窓口の設置などが効果的です。

7.業務を効率化して負担を減らす

非効率な業務や過度な負担は、従業員の心身の疲弊を招き、「静かな退職」の引き金となる恐れがあります。無駄な業務に時間を奪われ、本来注力すべき仕事に集中できない状況は、モチベーションの大きな低下を招きます。

ITツールの導入による定型業務の自動化や、会議の時間短縮などを通じて業務を効率化することは、従業員の負担軽減だけでなく、生産性の向上にもつながります。時間的な余裕が生まれることで、従業員は創造的な業務にも取り組めるようになり、満足度やエンゲージメントの向上にも寄与するでしょう。

【関連記事:業務効率化に効く!アイデアを実現するツールや進め方をわかりやすく解説
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人事担当者【必見】HRテックとは?「静かな退職」を防ぐための人事評価について

「静かな退職」は、人事評価制度の不透明さや不公平感が一因とされることがあります。成果や貢献が正しく評価されていないと感じた従業員は、努力を控え、必要最低限の業務だけにとどまりやすくなるためです。

そのため、従業員のやる気を引き出し、長く働き続けてもらうには、公正で納得感のある評価制度を整えることが不可欠です。そこで注目されているのが「HRテック」です。

HRテックとは、人事(Human Resources)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた概念であり、データやAIを活用して採用・評価・育成・配置などの人事業務を効率化・高度化する仕組みのことを指します。

HRテックを導入すれば、従業員のパフォーマンスや行動データを数値化し、客観的に可視化できます。こうした公正な評価制度は、従業員の納得感を高めるだけでなく、静かな退職や離職の防止にもつながるでしょう。

【関連記事:HRテックとは?導入が広まる背景やメリット、活用例や関連サービスを解説

業務効率と働きやすさを支えるイッツコムの法人向けツール

「静かな退職」を防ぐには、企業が主体的に従業員の働きやすさをサポートし、業務の効率化を図ることが大切です。イッツコムでは、情報共有の効率化や営業活動の可視化につながる法人向けツールを提供しています。ここでは、その法人向けツールを紹介します。

「Box」で情報共有を効率化!業務の属人化を防ぐ

「Box」は、コンテンツの管理・共有・アクセスを可能にするクラウドコンテンツ管理ツールです。ストレージ容量が無制限のため、動画や写真といった大容量ファイルも気軽に取り扱うことができます。ファイルは場所を問わず誰とでも共有・編集が可能で、リアルタイム通知により最新の更新を見逃す心配もありません。

さらに、複数人で同時に作業できる機能や、予定やチェックリストの作成機能により、プロジェクト管理を大幅に効率化できます。アプリを活用すればモバイルやタブレットからもスムーズに操作でき、140種類以上のファイル形式をダウンロード不要で表示できる利便性も特長です。

情報が属人化せず、チーム全体でスムーズに共有される環境は、業務負担の偏りを防ぎ、従業員が安心して働ける職場づくりにもつながります。

「ホットプロファイル」で営業活動を可視化・標準化

営業活動をサポートする「ホットプロファイル」および「ホットアプローチ」を活用することで、従業員の負担を軽減し、営業力の強化と働きやすさの両立が実現できます。

ホットプロファイルは、営業プロセス全体をデジタル化するツールです。名刺をスキャンするだけで顧客データベースを自動作成し、社内の人脈を可視化できます。SFA(営業進捗管理)機能により、営業活動を最小限の工数で見える化できる点も特長で、営業担当者・管理者・経営層それぞれに適した情報が得られます。

ホットアプローチは、未開拓企業への新規開拓を強化するためのツールです。フォーム営業機能を活用すれば、接点のない企業にも効率よくアプローチが可能です。加えて、480万社以上の企業データベースから営業リストを作成できるため、無駄のない新規開拓が実現できます。

まとめ

静かな退職は、従業員が心身のバランスを守るために選ぶ働き方のひとつです。ただし、企業にとっては生産性の低下や離職率の上昇といった影響を及ぼす可能性もあります。そのため、従業員のモチベーションを維持し、安心して働ける環境を整えることが重要です。

「Box」や「ホットプロファイル」といった法人向けツールは、情報共有や営業活動の効率化に貢献し、業務の属人化や過度な負担を防ぐうえで有効です。従業員の働きやすさを高め、静かな退職の抑止やエンゲージメントの向上につなげるためにも、積極的な活用を検討してみてはいかがでしょうか。