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防災インタビューVol.128

地震と震災 ~その備えのために~

放送月:2016年5月
公開月:2016年12月

平田 直 氏

東京大学地震研究所教授 地震予知研究センター長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

熊本の地震について

熊本の地震が起きてから、しばらくたちますが、現地では今もなおご苦労されている方がたくさんいらっしゃいます。ぜひ頑張っていただきたいと思います。熊本では、引き続き強い揺れを感じたということがこの地震の大きな特徴で、その結果、避難所で避難生活をされている方がまだまだ安心して暮らせないということが続いているようです。熊本で起きた地震は、地震の大きさを表す単位マグニチュードで7.3と気象庁は測定しました。マグニチュードから言うと、この地震は非常に大きな地震で、例えば1995年の阪神淡路大震災を起こした地震と同じ規模の地震だったということになります。阪神淡路大震災の時には、6千名以上の方が犠牲になったわけですけれど、熊本の地震もその阪神淡路大震災を起こしたのと同じエネルギーを出した非常に大きな地震で、そのために多くの方が犠牲になり、大きな被害が出たということを認識することが一番重要です。それと同時に、熊本の地震と神戸の地震の違いは、そこにある都市や町の様子がだいぶ違うということにあります。もう一つ比較する地震としては、2004年の新潟県中越地震というのがありますが、この時も大きな地震で大勢の方が犠牲になりました。特に新潟の地震の時には山崩れが起きたり、土砂災害が起きたことで大きな被害が出ました。熊本の地震でも、山間部の阿蘇山の傍らでは土砂崩れが起きて道路が崩壊したり、村落が孤立したりするということも起きているわけで、熊本の地震はちょうど阪神淡路大震災の都市型の震災と、新潟県中越地震の中山間地の震災と、両方の性質を持っているというような、今まで私たちが経験したことのないような大きな震災になったと思います。

日本は人口の多い所で、どこでも人が暮らしているわけですけれど、大都市であるとか、山村、山間地であるとか、その都市や社会の性質によって、あるいは海岸に近い所で海の地震で津波になるという地震の性質などによって、全体としてどういう災害になるかということを決定していると考えられています。

活断層とプレートで起きる地震

地震の災害、震災というのはもちろん、地震が多いか少ないかということが第一の基本的な要素です。そもそも日本というのは地震が多い所ですけれど、その日本の中でも関東は、少なくとも過去から現在、大きな地震がたびたび起きている場所であると言えると思います。そもそも地震というのは、地下の10キロメートルとか15キロメートル、もっと深い場合は30キロメートルぐらいのところで起きるのですが、大きな地震が起きると地表に割れ目やズレができます。今回の熊本の地震でも双葉断層という所で、田んぼにズレが出たり、畑にズレがでたりということが観察されていますが、地震というのはほぼ同じ場所で繰り返し起きるという性質があります。そのために過去に、過去と言っても1万年とか10万年とかいう非常に長い時間のなかで、そこで繰り返し、繰り返しと言っても分かるのは2回とか3回とか、せいぜい5回しかないのですが、それでも過去に繰り返し同じ場所で地震が起きると、地形が活断層地形という明瞭な地形が出来ます。その過去に地震が起きて、将来もそこで地震が起きるという場所を活断層というふうに呼んでいるわけです。これは地形、地質学の専門用語、学術用語だったのですが、1995年の阪神淡路大震災の時に、その震災を起こした地震が、野島断層や有馬高槻断層帯という所の活断層で起きたために、その後活断層という言葉が非常によく聞かれるようになりました。関東にもそういった過去に地震を繰り返し起こしたような断層があって、一番有名なのは立川断層帯で、この立川断層でも過去に地震を起こしたと言われていますが、そういった断層は、もし地下で実際に地震が起きたとしても、場合によっては地表までズレが到達しない、地表では跡が残らないで地震が起きてしまうということもあるわけです。

特に関東というのは、もともとは海の底にあって、泥が積もって、泥が溜まって、それが長い時間かけて固まって地表に出てきています。平野というのはそもそもそういう所なのですが、日本で一番大きな平野である関東平野でも、地下で地震が起きても地表には証拠が残らないということがあります。活断層が観察できなくても地震が起きるような場所においても、立川断層などの活断層がはっきりと見えますので、関東でも浅い地震が起きているということが分かると思います。

実際、関東地方は近い将来大きな地震が起こるのではないかと言われていますが、私が生きている間に関東地方のどこかで大きな地震が起こって、耐震化されていなければ家が倒れるほどの強い揺れになるだろうと思っています。というのは、実は地下の浅い所だけではなくて、プレート中、あるいはプレートの境界で起きる地震というのが、実は非常に大きな地震になる可能性があります。日本列島は主に、3つないし4つのプレートから形成されていると考えられています。地球上で最も大きい太平洋プレートというのが日本列島の東、太平洋の下に広がっています。その太平洋のプレートがアジア大陸のほうに1年間に10センチメートルぐらいの速さで押し寄せてきて、これが原因で5年前の東北地方の大きな地震、マグニチュード9という非常に大きな地震が起きたわけです。関東地方にはその太平洋プレートと、南のほうからフィリピン海プレートという、2つの海のプレートが、関東地方を形作るプレートの下に沈み込んでいるので大きな地震が起きると考えられています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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