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防災インタビューVol.128

地震と震災 ~その備えのために~

放送月:2016年5月
公開月:2016年12月

平田 直 氏

東京大学地震研究所教授 地震予知研究センター長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

大地震への備え

旧耐震の家は耐震診断をしてまずは補強していただきたいのですが、それは、補強すれば大丈夫ということではありません。新しく今の耐震基準に合格していて、さらにもうちょっとしっかりとした絶対に倒れそうもないようなお家を建てられても、それで安心してはいけないのです。それはどうしてかというと、家が倒れなくても揺れますので、もし家具が固定されていなければタンスが倒れてきてしまうことがあります。寝室の枕元に立派なタンスがあれば、耐震化されている現在の新しい家で、家自体は倒壊しなくても家具が転倒してきて押しつぶされてしまって亡くなるということは大いにある話です。

最近の高層マンションに住んでいる方についても、日本で高層ビルが出来てから、本当に大きな揺れを経験したことがないのですが、それは技術者が一生懸命考えて造っていますから、手抜き工事をしていない限り倒れることはないと思います。しかし、高層ビルは大きな地震のときに、非常に長い間ゆっくりと、しかし非常に大きな揺れがあります。ですので、そこではタンスが倒れるということもありますし、例えばオフィスであればコピー機や大きな机やロッカーが走り回るということがあるわけです。エレベーターは必ず止まります。エレベーターが止まるというのは、これはエレベーターというのは揺れると最寄りの階まで行って、止まって、ドアを開けて、それで止まるという仕組みになっているので、止まることが正しい設計なのですが、一旦止まってしまうとエレベーター会社の人が点検するまでは動くことができないわけです。1台2台のエレベーターが止まるだけだったらいいのですが、首都圏で大きな震災になったときに、首都圏中のビルのエレベーターが止まってしまえば、エレベーター会社の人が来てくれるまでに非常に長い時間がかかりますから、つまり高層ビルに住んでいる方は、まずエレベーターは1カ月くらい使えなくなるかもしれません。それから家が倒れていなくても停電になることはありますので、水が使えなくなります。高層ビルの水というのは、下から汲み上げて水を使っているわけですから、水が使えなくなり、電気も水もない状態になってしまうということです。確かに家が倒れない、ビルが倒れないというのが基本ですが、そのままでは生きていくことは難しいという状況になると思います。

過去にそういうことが繰り返し起きており、次に首都圏で大きな地震があったときには、今から準備をしておかなければそうなってしまうだろうということです。しかも5年前の東日本大震災の時を思い出していただくとすぐ分かるのですが、都内では、公共交通機関はストップしてしまい、車は大渋滞になります。もし家が倒れたり、家具が転倒してけがをして119番を押しても、救急車はすぐに来てはくれません。地震が起きて家が壊れたり、地域が被災したときには、通常は周りからいろいろな人が助けにきてくれるはずなのですが、大きな震災になってしまうと、最初の3日、あるいは1週間は誰も助けに来てくれないということが予想されます。この時には、基本的には自分の命は自分で守る、そうは言っても一人では生きていけませんから、周りの人と助け合う、家族、あるいは職場の仲間と助け合って生きていくということが重要です。しかしながら、地震が起きたときにいきなり地域の人が仲良くなることはできませんから、普段から十分に地域で協力する体制というのをつくっておく必要があると思います。

「首都直下地震」

私は最近「首都直下地震」という本を書きましたが、実は首都直下地震というのは、地震学、理科の教科書には書いていない言葉です。それは何かというと、1923年の関東地震とか、兵庫県南部地震とかは地震の名前ですが、首都直下地震というのは、首都圏に大きな被害を及ぼすような地震、ある意味防災行政的に作った言葉、あるいは防災をするために特別に考えた言葉です。ですからこれは単に地下で岩石がズレるように破壊するというような意味の地震ではなくて、震災をもたらせてしまうかもしれない地震ということが「首都直下地震」という言葉です。私はこの本では「理学として地震はどういうものか」ということももちろん書いたのですが、非常に強調したのは「どうしたら、あるいはなぜ震災になってしまって、どうしたら震災の被害を少なくすることができるか」ということで、いくつか提案したいと思っています。

これは、割と簡単なことだと私は思いますが、揺れても倒れない家を造るというのがまず基本です。家が倒れなくても家具が倒れてきてしまっては駄目なので、家具も倒れないようにするということも含めてその建物を強くすることが重要です。実は建物や構造物が倒れなくても、水がなくなったり電気がなくなったりしますし、あるいはけがをする人がいたときに生き延びるためには、やはり日ごろからみんなで助け合う仕組みをつくっておくということが重要なことです。

それからもう一つは、一人一人がやるべきこととしては、「最初の何十秒、最初の3分間はやはり自分で自分の身を守る」ということが最も重要なことです。小さなお子さんがいる場合には、お父さんやお母さんが子どもを守ることが必要ですけれど、まず基本は、最初の3分間は自分で自分の身を守る、具体的に言うならば、よく言われているように、机の下にもぐるとか、頭を防ぐということが必要ですけれど、机の下にもぐるというのは、上から物が落ちてきて頭にぶつからないようにするということです。ただし、机自体が十分な強度を持っているわけではないので、上から大きな物が落ちてきたり、家が倒れてくれば、やはり命を落としますから駄目ですが、それでも「自分の最初の3分間は、飛行機に乗っている際の身の安全を確保する体勢をとれ」というふうに言われますけれど、そういう体勢をとる必要があると思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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