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防災インタビューVol.128

地震と震災 ~その備えのために~

放送月:2016年5月
公開月:2016年12月

平田 直 氏

東京大学地震研究所教授 地震予知研究センター長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

頻発する地震

最近、被害を及ぼすような地震がしょっちゅう起きているような印象ですが、実は調べてみると、過去にも大きな地震はたくさん起きているので、普通な状態ではないかと私は思っています。もちろん自然現象ですから、風には息があるといって風が強くなったり弱くなるように、地震活動が活発になったり静かになったりということがありますけれども、統計をとってみると、マグニチュード7ぐらいの地震というのは、1年に1回ぐらいは日本列島のどこかで起きています。これは海域での地震も含めて、北は北方領土から南は台湾に近い所まで、非常に広い範囲でマグニチュード7の地震は年に1回か2回は起きているのですが、それがたまたま熊本県の熊本市の下で起きたり、神戸の下で起きたり、東京や横浜の下で起きたりすると、これは大震災になってしまうわけです。ですので、人間の都合では、地震が起きる場所を制御することはできませんので、起きるものだと思って、それに備えるしかないと思います。

マグニチュード7と言いましたが、実はもっと大きい地震は東北の時に起きているわけです。東北の東日本大震災を起こした東北地方太平洋沖地震というのは、マグニチュード9で、この地震は阪神淡路大震災や熊本の地震を起こしたマグニチュード7の地震の千倍のエネルギーを出します。これはとてつもない大きな地震で、めったに起きない、500年とか600年に1度しか起きない地震だというふうに地震学者は考えています。非常に大きな地震はたまにしか起きませんけれど、それでも現に起きていて、よく話題になりますけれども、次にどこで起きるかは残念ながら申し上げることができません。南海トラフといって、静岡県から愛知県、四国、九州の沖合ぐらいまでの広い範囲のどこかで、マグニチュード8から9、つまり東北で起きたような大きな地震が起きる可能性もあると考えられています。この非常に大きな地震はたまにしか起きませんが、マグニチュード7は1年に1度、マグニチュード6はひと月に1度ぐらい、マグニチュード5は10日に1度、毎日地震というのは起きているので、地震の研究者にとってみれば、地震が起きるというのは当たり前なことなのです。ですので、一般の方が心配なさるような、まれにしか起きない非常に大きな地震が急に起きたので、「最近なんか地震が多いんじゃないか」とご心配になるかもしれませんが、地震というのは日本中でしょっちゅう起きていて、その中で時々大きな地震が起きる、という状態が続いています。

繰り返しになりますが、日本では過去に大きな地震が起きて、大きな震災になってしまったことがたびたびありますから、やはり地震というものは来るものだと思って、例えば家を建てるときには、基準よりはちょっと丈夫な家を造る、それから家具の配置はちゃんと考えておく、普段から近所の地域の活動をして、非常時には皆さんで助け合うために日常でもちゃんとしたコミュニケーションをとってお付き合いをするということは非常に重要なことです。それをしておくことで、地震が起きて、災害が発生したときに、その被害を少しでも減らすということにつながるのではないかと思います。

地震予知について

地震予知については、この話題は避けてきたのですが、やはり最後にはしないわけにはいかないのでお話ししたいと思います。私は実は地震研究所の地震予知研究センターという所の教授をしていますので、地震予知の研究をするのが私の本務です。しかし、これがちょっと難しいのは、私は地震予知をしているわけではなくて、地震予知のための研究をしているということです。まあ言い訳になってしまいますが、少なくとも科学的には地震予知は、今は一つの例外を除いてできないというふうに考えられて、私もそうだと思います。まず普通の意味では、「何月何日にどこどこでマグニチュードいくつの地震が起きる」というふうに言うのが地震予知だと思っていますが、時々週刊誌や何かにXデーが出てきて、「Xデーに何とか地震が起きる」というのが出てきますが、現在の地震学の知識では、そういう地震予知はできないと私は考えます。私自身もできないことを目指しているということではなくて、役に立つ情報として地震予知、地震がいつ発生するかを研究することは重要なことなので、続けて努力はしていますが、「現時点ではできない」ということが重要です。そうは言っても、世の中には地震予知の情報というのはあふれていますので、これは十分気を付けていただいて、皆さんが、いつ地震が起きるかということについて関心を持っていただくという観点では有益な情報かもしれませんが、防災的な観点からはそういった情報は意味がない、科学的には意味がないというふうに考えます。地震がどうして起きるかという仕組みを理解して、地震の性質を理解した上で、その地震が将来発生するのか、しないのかということをなるべく誰もが納得できるようなデータで説明するのが科学的な地震の予知だと考え、日々取り組んでいます。実は実験室の中で岩石を二つに分けて、その割れ目に粘土か何かを間に挟んで、力を加えて地震を起こすという実験をすると、地震予知はできます。それはどうしてかというと、どれだけの力をかけ合っているか、どれだけ変形しているかということをきちんと測ると、あと何分後に地震が起きるかということは、予測することができるからです。ところが実際に野外で起きる地震というのは、どれだけの力がかかっているかということも、それからどれだけ変形しているかということも、正しく測ることはできないので、推定することはできますけれども、実際には予知はまだできません。

地震の予知というのも、天気予報と同じように、将来は「来月の関東地方に、マグニチュード6の地震が起きる確率は何パーセントです」ということが言えるようになれば、これは地震予知が実用化したということですが、残念ながらまだそこまでは行っていません。今はどういうことができるかというと、過去に何回この地方で、どのぐらいの地震が起きたかを調べることができれば、過去に起きたことと同じようなことが将来も起きるだろうという仮定、前提のもとに将来の地震がどのぐらいの確率で起きるかが言えるというのが今の地震の予測なわけです。ですので、残念ながら、何月何日にマグニチュード8の地震がどこで起きるとは、今の段階では残念ながら言うことはできません。しかし首都圏で、私が生きているうちに震度7になるような地震がどこかで起きるということは、間違いないと思いますので、これは地震予知とは言わないですが、地震の災害を減らす知識としては役に立つものですので、ぜひ防災に役立ててほしいと思っています。今は大ざっぱな言い方しかできませんが、これからの将来においては、もう少し細かい地域でどれだけの間隔でどのぐらいの地震が起きるかということもだんだんに言えるようになってくるとは思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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