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防災インタビューVol.128

地震と震災 ~その備えのために~

放送月:2016年5月
公開月:2016年12月

平田 直 氏

東京大学地震研究所教授 地震予知研究センター長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

30年以内に70%の確率で起こる地震

関東地方では「30年以内に70%の確率でマグニチュードが7クラスの地震が起きる」と言われていますが、実はこの数字は非常に簡単な理由によって計算されている数字なのです。というのは、関東地方では南のほうからフィリピン海プレートが関東地方の下に沈み込むことによって多くの地震が起きているのですが、そのなかで一番被害が大きかったのは1923年の大正の関東地震で、それによって関東大震災が引き起こされたわけです。その地震はマグニチュード7.9ですが、ほぼ8クラスの地震で、これは非常に大きな地震です。ところがそれより一回り小さいマグニチュード7クラスの地震が、明治から100年の間に5回起きているということが知られています。一回り小さいと言いましたけれど、マグニチュード7の地震というのは、熊本地方で起きた大きな地震、あるいは阪神淡路大震災を起こした兵庫県南部地震の大きさ、マグニチュードと同じ規模の地震です。この規模の地震が神戸の下で起きて大震災になりましたし、熊本の下で起きて大きな被害をもたらしました。それと同じように、マグニチュード7くらいの地震が関東のどこかで起きれば大きな被害になると考えられています。

これが起きる可能性が高いといった証拠は、過去明治から100年の間に5回、江戸時代から数えても200年の間に8回か9回起きていることが知られていますので、過去の100年に5回起きたということは、今から将来の100年の間に5回起こるかもしれないということです。しかも、100年に5回起こったということは、100÷5ですから20年に1回起こると考えられます。ただ地震が起きる頻度については、決して20年ごとに起きていたわけではなくて、毎年起きた時もあれば、しばらく起きなかったこともあるという、そういう起き方です。時間的に不規則に起きる、ランダムに起きるというふうに言いますけれど、こういう地震が100年に5回、200年に8回、9回ということは、もし30年に何回起きるかという計算をすると0.7回、70%であるということになります。計算は別に30年でも10年でも50年でも100年でもいくらでもできるのですが、これを公表した地震調査研究推進本部という国の組織が、なぜ30年で計算するかというと、分かりやすいからだと言っています。何が分かりやすいかというと、人間の感覚で言うと、100年とか1000年とか言われても長すぎて分からないし、1年、2年というと確率が非常に小さくなるのでやはり分かりにくいので、生きているうちに関東地方で大きな地震が1回は起きるということを言うために30年で言っているわけです。つまり家を買ったらば、「その家に住んでいる間には震度7の強い揺れに見舞われる可能性は非常に高い」というふうに考える、そういう数字です。

耐震基準と家の安全性

震度7の地震に襲われる可能性が30年間に70%という数字がでていますが、今の建築の技術、耐震の技術では震度7になってもすぐに家が倒れることはありません。震度7だと住めなくなるかもしれませんが、安全に建てられた家に住んでいればすぐに家が倒れて命を失うということはないわけです。最近造られた家であれば、どんなメーカーであっても手抜きをせず規則通りに造ってあれば、木造か、鉄筋かという区別もなく全て大丈夫だと思います。というのは、過去に日本は繰り返し大きな地震があって、家が壊れるということがありました。そのたびに日本は建築基準法を変えて、耐震を強くした建築基準法の基準を厳しくしてきましたので、震災のたびに法律は厳しくなってきました。たびたびその基準を変えているのですが、一番重要なのは、いわゆる新耐震という新しい耐震基準になったのが昭和56年、1981年で、それよりも後に建てた建物というのは、だいぶ丈夫になりました。それでも平成7年、1995年の阪神淡路大震災の時には被害を受けていますから、その時にまた耐震基準は厳しくなりました。ですので、今新しい家を規則通り、手抜きなしに建てていれば、震度7になってもすぐに倒れてしまって命を失うということはありません。

しかしながら、ここからが重要なのですが、合法的に建てられた家であっても、実は地震で壊れてしまう可能性のある家もたくさんあります。それはどうしてかと言うと、日本だけでなく世界どこでもそうですけれど、家を建てた時、その時代の法律に合格していればその家は合法的な家になっているわけです。つまり今から20年前、30年前、40年前、50年前に建てた家というのは、その時の耐震基準に合格している家ですので、もし、1981年、昭和56年より前に建てた家で、その後今の基準に合格するような耐震補強をしていない家は、震度が6弱、震度7ではなくても震度6でも家が倒れてしまう可能性があります。実はそういう家がたくさんあるということです。

新築の家を建てる時には今の法律に基づいていますので大丈夫だと思います。しかし、大丈夫ということは、例えば駅のホームで電車が入ってくるときに、「危ないですから白線の内側に下がって下さい」と言われて、確かに白線の内側に居れば安全ですが、だからといって白線の上に居たらば大丈夫かというと、ちょっと後ろから押されたら、よろけて危険になるのと同じで、法律に基づいて大丈夫だということに、さらにプラスアルファして、自分の家を丈夫にすることは重要なことですから、今の耐震基準が万全なものではもちろんないわけです。しかし問題は、それより古い昭和56年、1981年よりも古い家について、何の耐震診断も診断に基づいた補強もしていなければ、これは私たちが生きているうちに必ず来る強い揺れに対して家が倒れてしまうことは明らかです。ですので、それを少しでも耐震補強するということが今やるべき重要なことだと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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