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防災インタビューVol.154

『知ること』から始める防災

放送月:2018年7月
公開月:2019年1月

中村 清美 氏

国土防災技術株式会社
課長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

「地域防災計画」と「地区防災計画」

都道府県と市区町村には「地域防災計画」というものがあります。これは行政が、災害時あるいは平時においてどのような災害対応をやるかということを定めた、行政対応のマニュアルのようなものです。それに対して、平成26年に「地区防災計画制度」というものが制定されました。これは、コミュニティが平時あるいは災害時にどのような災害対応をするかということをルール化しておくものになります。言葉は似ているのですが、「地域防災計画」はどちらかというとトップダウンの仕組みで、この「地区防災計画」はそれに対してボトムアップの制度と言われています。

「地域防災計画」というのは、「災害対策基本法」や「災害基本計画」で、都道府県と市区町村が作るように定められているのですが、「地区防災計画」というのは必要だと思った地区が自由に作って良いものです。ただ自由に作っていいとは言っても、やはりある程度、誰かが声を掛けて「地区防災計画」を作らなければなりません。災害時に自分たちのコミュニティを守り維持させるために、「災害対応のルール作りをしておきましょう」「それで作られたルールに対してみんなで合意しておきましょう」というのがこの「地区防災計画」です。なので、全ての地区がこういう災害対応のルール作りに合意をしておくと、公助はとても楽だと思います。災害が起きると公助の機能はパンク寸前になり、外からの支援も必要になってくるような状況で、一つ一つの小さなコミュニティに対してケアができないというのが現状です。そこで、「自分たちの地区のことは自分たちでルール化をして災害対応をやります」という地区がたくさんできると、公助はとても楽になると思います。そうすれば、本来公助がすべきことが災害時にできるようになるわけで、それを考えるとこの地区防災計画制度というのは、やはり各地域で取り組みを進めてもらいたいと思います。

実際に、内閣府が平成26年から28年までの3カ年間モデル事業をやっている地区が44あるのですが、モデル事業以外でも、地区が独自で取り組んでいる所もあって、まだ全体にはっきりとした数字というのがあまり把握されていない感じです。ただ、意識が高い地域では、「地区防災計画」いう名前はついていなくても、地区の中で災害対応のルール作りをしている所が結構出てきていて、地区によって取り組み方は非常に多様です。私どもが関わったモデル地区の取り組みをいくつか紹介すると、ある地区では、まずその地区の中にどんなハザードがあるかということを理解し、自然災害が起きることによって、どんなリスクがコミュニティに出てくるのかということに対して対応を考えています。例えば少子高齢化の中、山間地のようなコミュニティだと、独居の老人がいたり、寝たきりのおじいちゃんがいるだとか、災害が起きると避難から取り残されてしまうような人たちがどの程度出て、避難所までの安全な道がどの程度確保できるのか、車両が入れるのか、孤立するとすれば何日間ぐらい孤立してしまうのかというようなリスクを特定していきます。それに対して対応策を考え、その対応策に対して地区みんなで合意をして、ある程度明文化されたものを作ったり、マップにしたりすることで、その地区防災計画というものができあがっていきます。その作り方も地区によってバラバラですが、それを地区の人たちみんなが共有して、これを毎年毎年更新をしていくという取り組みが今行われています。

「防災×宝探し」で地区防災計画作り

現在たくさんの都市で、それぞれの地区の「地区防災計画」ができあがっているとお話ししましたが、ある市では、共同住宅や集合住宅がたくさん増えてきて、なかなかこのような地区の取り組みに参加してくれる人が少なくなってきているという状況もあります。いわゆる働き世代とか、子育て世代の家族がそういう防災の取り組みになかなか入って来てくれないという問題も起こっています。一応ルール作りをすることには取り組んでみたものの、働き世代、子育て世代の人たちをどうしたら取り込めるのだろうかということになった際に、私どもの方から提案させてもらったのが、「防災×宝探し」です。観光イベントなどで「宝探し」というのをやっている所がよくありますが、その「宝探し」のエッセンスを防災とくっ付けて、「防災×宝探し」をやってみようと提案しました。「宝探し」というのは、謎解きをしながら宝の箱を見つけていくのですが、そのミッションとして、「ハザードマップの中に一時避難所をマーキングできたら謎解きのヒントをもらえるよ」というものを入れていきます。あとはその地域の防災リーダーに「宝探し」をするために一緒にまちを歩いてもらって、過去に災害が起きた所では「ここまで水がきたよ」というような話をしてもらうと、新しい世代の人たちは「ああ、そういうことがあったの?ここってそういう地域なの?」ということを知ることができます。このような何かワクワクする「防災×宝探し」を行い、たくさんの働き世代、子育て世代の人たちがそのイベントに参加し、地区で取り組んでいる防災のルールを知ってもらうという取り組みをした所もあります。
このように、みんなで楽しめるイベントを通して地域を考えることで、まちの特徴も自然に分かってくるという取り組みがどんどん広がっていくといいと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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