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防災インタビューVol.154

『知ること』から始める防災

放送月:2018年7月
公開月:2019年1月

中村 清美 氏

国土防災技術株式会社
課長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

発展途上国における「コミュニティ防災」

私は以前NGOで、途上国の開発問題や健康問題に対して支援をしてきたのですが、この会社に入ってそういった活動と防災というのが、最初の頃なかなか私の中ではつながりませんでした。そんな中、2000年代に入って、特に途上国で自然災害が発生し、それまでせっかく開発支援や貧困支援を行って社会発展してきたものが、1回の災害でゼロあるいはマイナスになってしまうということが度々起こるようになりました。それで、2015年に仙台で「国連防災世界会議」が開かれ、「仙台防災枠組」というものが採択されました。その中に「先進国は国際協力を通じて途上国の防災に支援をしなさい」ということが明文化されました。このことによって、もともとは別物だった、開発問題と自然災害への対応が、やはりこれは両輪で考えていくということでつながりました。そうなるとそれまで私の中で分離していた開発問題と防災も、両輪でやっていくことが持続的な社会発展に役立つということでつながり始めました。うちの会社も以前から海外業務はやっていましたが、2017年4月に国際部を立ち上げ、国際NGOとの連携で途上国での「コミュニティ防災」にも取り組み始めました。

このような活動は、JICAがやっている技術協力やODA事業がありますが、私達の会社も海外で防災のコンサルティングや技術協力をやりはじめ、随分遅れて海外に出たというハンディもありながら、何か他社とは違う取り組みをして、それをきちんとビジネスモデルにしていくことにしました。その意味でも、国際NGOと一緒にやっている「コミュニティ防災」は、私達のひとつの武器かなと思っていまして、その国際NGOは、今アフガニスタンで「コミュニティ防災」をやっているのですが、そこは私達日本人は入れませんので、遠隔からの支援になっています。アフガニスタンでは、以前から内戦が激しく、パキスタンや周辺に逃げ出していた人達が、去年から相当数、何十万人という単位で帰還民として戻ってきています。その彼らが住む場所は、土地が安いということもあり、災害が起きそうな所になってしまっていますので、やはり防災を考えないといけません。

そこで、彼らに地理情報システムGISの技術を使ったハザードの区域の設定と、コミュニティで役に立つような情報、どういう所に避難することができるか、避難ルートはどうするかということを示した防災マップを作ってもらったり、あとは、日本で使っている防災教育のEVAGのアフガニスタン版を作ってもらっていまして、そういった活動もしています。

自然災害といっても、そこに人がいなければ、財産がなければ、単なる自然現象で済んでしまいますが、そこに人がいれば災害が起こります。発展途上国においては、急激に人口が増えていって、居住地域が広がっているために、これまで起きていた自然現象が災害になっていき、被災者がたくさんでてくるということにつながっていると思います。これからも発展途上国では人口がどんどん増えてきますし、都市部もかなり拡大し、都市機能も増えていく中で、今後も自然災害による被害が拡大すると言われています。そこで、私たちがやっているような国際NGOが、人道的観点から防災に取り組んでいるということと、私たちがある意味、自然科学的なものと社会科学的なものの目線で取り組んでいるこの「コミュニティ防災」というものが、海外でも生かされていくだろうと期待しています。

「防災の主流化」

発展途上国の例をみても、人口が密集して、建物があったり人がたくさんいるから被害が拡大するということが起こっていますが、日本も人口は減ってきていますが、都市機能としては、都市部が拡大しています。

2018年6月に大阪で起きた北部災害でも、やはり地震自体は防ぎようがありませんが、防げた被害もありました。特に通学路にあった基準を満たさないブロック塀が倒れて亡くなったお子さんがいましたが、防災という視点を入れたインフラ整備が行われていたならば、救えた命であったわけです。

2015年に採択された「仙台防災枠組」と同じ年に「持続可能な開発目標、SDGS(エスディジーズ)」というものが採択されていますが、これは17の目標がある中で、その中の7つ、9つの分野に「防災の主流化」がうたわれています。これはどういうことかというと、例えばインフラを整備して、道路を作ります、建物を建てますという中に、全部防災の視点を入れるということです。災害が起きたときに被害を拡大させないようにするという視点がこのSDGSの中に「防災の主流化」として入ってきています。この開発目標SDGSの中には防災という項目はないのですが、わざわざ「防災」と言わなくても、私たちがこれから新しく作るものは、ハードもそうですし、ソフトもそうですが、全てに防災、減災の視点を入れるということがとても重要なことだと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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