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防災インタビューVol.154

『知ること』から始める防災

放送月:2018年7月
公開月:2019年1月

中村 清美 氏

国土防災技術株式会社
課長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

多様な主体の連携促進

今、内閣府は、「多様な主体の連携促進」に取り組んでおり、災害時に被災者支援が円滑に行われるために、行政とボランティアと社会福祉協議会が立ち上げる災害ボランティアセンターとの連携を促進していこうとしています。これは現在全国にも拡散しています。私も、大学で島原の雲仙岳の災害について現在も研究しているのですが、この災害では、1991年に雲仙の普賢岳が噴火して44名の命が失われ、長期避難を余儀なくされ、島原の地域経済にもかなりのダメージを与えました。この災害の後、応急期、復興期を経て生活再建が行われ、この20数年間でだんだん島原が普通の地域社会に戻っていったのですが、それがどのように行われたのかということを対象に研究をしています。私は島原でいろいろな方の話を聞いていて、ひとつ「なるほど、これはすごいな」と思ったのが、先ほど言った災害が起きたときに作った支援者支援のための横の連携です。長崎県は離島と半島しかないのですが、島原半島の当時1市17町では、地域活性化をやっていたいろいろなグループがありました。そのグループがまとまって作ったのが「17会」で、会と言ってもネットワーク体で、そこには行政も入ったり、議員さんも入ったり、いろんな人が入っていました。この会では、以前から「どうすれば島原半島を活性化できるか」について、定期的に集まって話をしたり、外から講師を招いたりして話し合っていました。その「17会」が、噴火災害が起きた翌日、災害ボランティア「島原ボランティア会」という名称に変わって、被災者支援をやる主体となりました。いつ来るか分からない災害に備えて防災のことばかり語っていてもあまり面白くないので続かないですし、モチベーションもそこまでもたないけれど、彼らは日頃から島原半島をどうやったら持続させられるのか、どうやったら経済右上がりになるのかということを常々考えていた人たちなので、そこに災害がやってきた、これまで大丈夫だった人たちが全然大丈夫ではなくなった、これは大変だというので災害対応のグループ、被災者支援のグループに変わりました。このことは、今内閣府が一生懸命取り組んでいる、災害時に被災者支援を円滑にするための基礎作りのいいヒントになると思います。

災害対応を専門にやっているグループ、NPOがたくさんありますが、それだけでなく、日頃地域の環境のことを考えたり、子育て支援をしていたりするNPOもたくさんあって、そういう人たちが日頃からつながっていて、行政や社会福祉協議会や地元の企業などを交えて、「この地域をどうやったら持続的なものにできるか」ということを議論していただいていると、そこに災害が起きてもそのグループがそのままノウハウと情報を持って被災者支援に当たれます。そういったことが島原の時には噴火災害の時に既にあったということです。ぜひこの仕組みを全国でも作ってもらえればと思います。

災害時に後悔しないために

現在内閣官房が「国土強靱化計画」を作っており、それを推進するために「ジャパン・レジリエンス・アワード」という制度を設けて、レジリエンス活動に取り組んでいる企業や学校、コミュニティに対して賞を出しています。2016年には、先ほど紹介した、「避難行動訓練EVAG」という防災教育のワークショップ教材が最優秀レジリエンス賞を頂きました。これを受けたことで、かなり知名度も上がって、いろいろな所でこの教材を使っていただくきっかけになりました。また、「防災×宝探し」のイベントも、今いくつかパターンがあって、その取り組みも同じく最優秀レジリエンス賞を2017年度に頂きました。これらは、現在いろいろなコミュニティや大学の授業でも使っていただいています。また、「防災×宝探し」は、内閣府主催で毎年行われている防災国体で、2017年に実施していただきました。当社、国土防災技術株式会社にご連絡いただければ資料をお送りしますので、ぜひ防災の取り組みネタに困っている人がいたら使っていただきたいと思います。

私は現在防災に関わっていますが、知っていれば助かったのに、知らないことで人の命が失われていくということを、なんとかなくしたいと思っています。島原でお話を聞いても、犠牲になった方の残された遺族は、「あの時こうしていればよかった」ということをこの25年以上たった今でも後悔されています。そういう後悔をさせるような生き方もさせたくないと思っています。そこに防災に取り組むための、何か原点のようなものがあるのかなと考えておりまして、ぜひ力を尽くしていきたいと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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