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防災インタビューVol.156

「赤十字の活動からみる防災」

放送月:2018年9月
公開月:2019年3月

白土 直樹 氏

日本赤十字社
事業局
救護・福祉部 次長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

日赤の活動を通じて学んできた教訓

日赤は、災害が起きると医療チームの派遣をはじめ、いろいろな活動をするのですが、災害の規模が大きくなればなるほど、外部からの支援で救える命は少なくなっていく傾向があることが分かっています。例えば医療チームを派遣して命を救う日赤の活動は、ものすごく大事な活動ですが、これにもどうしても限界があるということを、ぜひ知っていただきたいと思っています。具体的に言うと、例えば過去の大規模災害の犠牲者の死因を見ていくと、新潟中越地震では55%の方が災害発生直後の要因でお亡くなりになっています。そして、より大きな災害であった阪神淡路大震災になると77%の方が、さらに大きな東日本大震災になると91%の方が災害が起きた直後にお亡くなりになっているという現実があります。一方で日赤の救護班、医療チームによって初動の2日間、要するに発災して48時間以内に、1班当たり1日平均何人の患者を取り扱えたかを同じ災害で比較すると、新潟県中越地震では108人、阪神淡路大震災ではその半分の63人、そしてさらに大きな災害だった東日本大震災では、わずか13人しか患者を取り扱えていませんでした。この事実から見て、災害が大規模になればなるほど外部からの支援で救える命は、どうしても少なくなってしまう傾向があることが分かります。これは日赤の救護班のみならず、例えばDMATなども同じような経験をしていますし、国内だけではなく海外の災害でも全く同じような傾向は見て取れます。東日本大震災では津波の被害が大きく、瞬時にたくさんの方がお亡くなりになっています。阪神淡路大震災では建物の倒壊によって圧死された方が非常に多いですし、火事が発生して焼死された方も多いと聞いています。亡くなってしまった方を生き返すというのは無理な話なので、まずは生き残っていただかないと医療チームが活動する場もないわけです。いかにして最初のファーストアタックから自分の身をどう守るか、いかにして生き残るかが非常に大事になってくることになります。
家を耐震化したり、家具を固定したりすることも必要ですし、災害がなるべく起きない場所に住むというのも大事なのですが、これは現実にはなかなか難しいかと思われますので、まずそれぞれの人が日常から、自分の身を守るための最善の策をいろいろと考えておくことが一番大事なことかと思います。

過去の災害の教訓を今に生かす

災害に備える最善の策を考えるためには、どのようなことをすべきかは、過去の災害の事例から学べることがたくさんあります。先ほど申し上げた阪神淡路大震災の事例では、神戸市の被災者のうちの8割以上の方は地元住民によって救助をされているという事実があります。東日本大震災でも津波で多くの方が亡くなりましたが、その一方で、例えば釜石市では「津波てんでんこ」という昔から地域で伝わっている教えを、忠実に守って避難訓練を重ねてきた小中学校の児童・生徒の生存率が99.8%と、非常に他の地域に比べて高かったという事例もあります。こういう事例から分かることは、外部からの支援がなかなか期待できない大規模災害の発災初期に特に重要なのは、自助・共助の取り組みであると思います。これから起きるであろう大きな災害に備えるためには、この自助・共助の取り組みをいかにして、さらに強化していくかを考えることが非常に重要になってくると思います。
具体的には、やはり地域の中で顔見知りの関係をつくっていくのが一番大事なことだと思います。もちろん災害特有の対策、例えば住宅の耐震化をするとか、あるいは家具の転倒防止をするとか、ハザードマップを確認するとか、避難場所を確認するとかも、もちろん大事です。でもそれだけではなくて、実は本当に大事なのは身近にいる人、地域の中にいる人、家族、そういう人たちがより強いつながりを持つということ、そして地域同士で、地域の中で人々がつながりを深めていくということです。その中で、例えば地域の中で、どのような人が支援が必要なのか、この人はこういうことに気を付けてあげなければいけない、ということをお互いにまずは知り合うこと、それが一番重要になってくると思います。
都会に住んでいると、人々が自分の暮らし、個の生活を大事にして、プライバシーを守ることに気を配りますが、その一方で、ある意味それのトレードオフとして、そこで失われてしまうものもあるのが今の状況です。特に災害時には、そういうものがむしろ邪魔になってくることがあると思いますので、どういうふうにそのバランスをうまく取るかが大事になってくると思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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