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防災インタビューVol.156

「赤十字の活動からみる防災」

放送月:2018年9月
公開月:2019年3月

白土 直樹 氏

日本赤十字社
事業局
救護・福祉部 次長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

防災と少子高齢化

日本では現在、防災の問題もありますが、もう一つ別の大きな課題も抱えています。それは少子高齢化です。これが防災にどう影響するのかを、お話ししたいと思います。
皆さんもご承知の通り2025年問題が、もう間近にきています。これは団塊の世代が2025年までに全員75歳以上の後期高齢者になるということです。この超高齢社会において今後、巨大災害、例えば首都直下地震や南海トラフ地震などが日本を直撃した場合に、一体どのようなことが起こるのかは、なかなか想像もできていません。これまでとは違う様相を、これからの災害では示してくると思いますし、こういう状況の中で我々はどのように取り組んでいったらいいのかを、真剣に考えなければいけないと思っています。
実は少子高齢化と防災というのは、結構共通点があります。一つはこれから大きな変化が急激に発生するということですし、2点目は支援を必要とする人が膨大に発生するのに、支援する側の人材が決定的に不足するということです。実際に行政の対応には限界があって、やはり自助、共助が必要だという話になってきます。この少子高齢化に対応するのも、防災に対応するのも、結局のところ自分のことは自分で、地域のことは地域でやらなければいけないということで、少子高齢化の対応と防災の対応は非常に似通っていると言えると思います。どうせ似通っているのであれば、これはセットで取り組むことが、より効果的ではないかと思っています。
その一つの事例として、都市部のマンションがあげられます。現在の日本では10人に1人がマンション暮らしですが、実は高度成長期に建てられたマンションがどんどん老朽化しており、住んでいる方も高齢化していくことが社会問題にもなっています。ここに支援の手を差し伸べようとしても、一軒家が多くて町内会がしっかりしているような所とは環境が違い、なかなかアクセスが難しいという現状があります。そこで今、赤十字で取り組んでいるのが、マンションの管理会社とのタイアップという形です。マンション管理会社は、マンションの住民に対してサービスを提供しなければいけない、という役割を負っていますし、災害の時にも実際にいろいろな支援をするのですが、なかなか住民の方々への対応に苦労をしているという事例がありました。そこで赤十字が持っているノウハウを提供して管理会社とタイアップして、防災の備えをしていこうということを進めています。この基になっているのが、赤十字の「健康生活支援講習」という大正時代から続いている講習です。これは日常生活の中で、高齢の方々にどういうふうに自分自身の健康を守ってもらうか、周りの人がどういうふうに高齢者の健康を守っていくのかを教えるような講習内容です。その中に災害時の高齢者支援講習というメニューがありまして、これは災害時の避難所での生活に焦点を当てて、自立生活の知識と技術を学んでいただくという内容になっています。この講習を今、マンションの住民の方々に、マンション管理会社の方々とタイアップしながら広く取り組みを進めているところです。この講習の前後にアンケートを取っていますが、防災の知識・技術が高まったという答えはありますが、それだけでなく、「新しい顔見知りができた」「今まで知り合いではあったけれど、よりつながりが深くなった」というようなことが、この講習の結果として生まれています。これはまさに地域の防災力を高めるために非常に重要なことで、特に高齢者の方々や高齢者を支える周りの方々が顔見知りになって、「ここにこんな人がいるんだ」「この方にはこういう支援が必要だね」というようなことが、家族だけでなく地域の人にも分かるということにつながっています。さらにはマンションに住んでいる人がマンション内だけではなく、マンションの外に住んでいる地域の人ともつながりがつくれていくというような形が、この講習を通じて生まれつつあります。
防災というのは、ある意味、地域づくりと同じです。この地域づくりという観点から見ると、防災も一つの視点でしかなくて、実はいろいろな視点がこの地域づくりの中には必要になってきます。このようにいろいろな活動と連携しながら、この取り組みをしていくことは重要であると思います。その一つとして少子高齢化への対応があると思っています。人間は一人で暮らしているわけではなく、特に地域の中での支え合いは大事です。そのことがだんだんと分かってきてはいますが、具体的な取り組みにまでは、まだまだ進んでいないのが現状で、何かをやらなければならないけれど、そのきっかけがないというのが今の状況かとも思いますので、我々がやっている取り組みも、そういうきっかけづくりとして生かしていただきたいと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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