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防災インタビューVol.156

「赤十字の活動からみる防災」

放送月:2018年9月
公開月:2019年3月

白土 直樹 氏

日本赤十字社
事業局
救護・福祉部 次長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

西日本の豪雨災害から

私たち日赤は、2018年7月の西日本の豪雨災害の被災地にも何度か入りました。そこで見聞きしたこと、それからそれを踏まえて結局、我々は一体何をしようとしているのかについてお話をしたいと思います。この西日本の豪雨の災害では避難所に入る方が少なくて、多くの方は1階が水没をして被害を受けたが2階は大丈夫だった所が多く、その2階で寝泊まりをしながら1階の片付けをする、というようなことをされています。非常に暑い時季でしたのでエアコンをつけたいけれど、1階にあった室外機が水害で壊れてしまってエアコンは使えない、日中は暑い中、1階で作業をして、夜はエアコンのない2階で寝泊まりをしているような、本当につらい暮らしをされている方が非常に多くいました。少子高齢化という時代の中で、やはり広島なども高齢の方の世帯が非常に多く、ボランティアが入ってはいるけれど数が足りず、自分たちだけで片付けをするのは本当につらい作業になっていました。土砂の撤去もそうですし、土砂が入らなくても雨水やあふれた下水で家の中が汚れてしまうわけです。例えば畳1枚上げるにしても、水を吸うと70キロぐらいの重さになってしまいますから、高齢の方々が夫婦で片付けるなんて無理な話です。これはお互いに助け合うことが必要になりますので、社会全体でどうこの問題に取り組むかを考えていかなければならないと思います。実際にはボランティアの力ももちろん大事ですが、個人の支援だけでは絶対に足りないので、企業にも協力をしてもらうことも必要になってくると思いますし、学校単位で学生さんに協力をしてもらうなど、視点を広く持って、より多くの人と共に社会の課題に取り組む、参画するという仕組みをつくり上げないといけないと思っています。このような取り組みは今、少しずつ始まっていると思いますし、ボランティアの世界でも企業単位で参加しているところはあります。しかし首都直下地震、あるいは南海トラフ地震も30年以内に70~80%の確率で発生すると言われており、いつ起きてもおかしくない状況です。これからの大きな災害を迎え撃つためには、社会の仕組みをしっかりと考えておかなければいけません。その仕組みづくりは時間との闘いになってきているので、1日も早い対策が必要だと思います。

三つのCom ~コミュニティー・コミュニケーション・コミットメント~

防災というのは地域づくりです。それは一人一人の命と健康、そして尊厳を確保することであり、それを通じて一人一人の幸福を追求していくことにつながっていくと思います。それを追求するためには、同じ目的を持ったいろいろな活動主体と連携をしていかなければいけません。高齢者支援のみならず子育て支援や障害者支援、外国人の支援、貧困対策など、いろいろな活動をしている方々と手を携さえて、連携しながら防災を進めていくという必要性があると思っています。
変な言い方ですけれど、人間みんないつかは死ぬわけです。死亡率100%なわけです。そのことを理解した上で「では、我々は何のために防災をやっているのか」を考えていく必要があると思います。そう考えていくと、人の命というのは、もしかすると自分の命ではあるけれど自分だけのものではないのかもしれない、つまり人の命というのは社会の共有財産なのではないかというような気もします。それなので、自分の命だけでなく、お互いに助け合って、互いの大事な人、他人の命も大事にしようということが必要になってくると思います。
これからこの防災を進めていく上では、三つの「COM」が大事になってくるのではないかと思っています。一つは「コミュニティーのCOM」です。これは何度も言っていますが「地域の大切さ」です。それから二つ目が「コミュニケーションのCOM」、これはいろいろな人と話しながら、つながりを大事にしながら防災を進めていくということです。そして最後に「コミットメントのCOM」という言葉、つまりいろいろな社会課題に自らが関与するという覚悟です。そういう意識と覚悟が大事になってくると思っています。この三つのCOM、コミュニティー、コミュニケーション、コミットメント、これを大事にしながら今後の防災を進めていくことが必要だと思います。
意識的にコミュニティーをつくり、コミュニケーションをとって、コミットメントする。自らが積極的に地域の中に入っていって、地域の課題に関わっていくというようなことが必要かなと思いますし、一人一人がぜひ少しでもいいので、小さな行動でもいいから、ちょっとでも何か新しいことを始めてみようと思っていただけるとありがたいです。それは、難しいことからでなくて構いません。いきなり防災に関わるのではなく、例えばその地域のイベントに少し顔を出して、ちょっとだけお手伝いをするとかでも構わないのです。地域の人と少しでも近くなって、顔見知りになっていく、そのことが災害が起きたときにもとても役に立つことを理解し、そのような社会をつくるために行動していただければ、きっとこの世の中が少しでも良くなっていくのではないかと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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