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防災インタビューVol.156

「赤十字の活動からみる防災」

放送月:2018年9月
公開月:2019年3月

白土 直樹 氏

日本赤十字社
事業局
救護・福祉部 次長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

災害に対する知識・意識・技術の力を高める

これからも大きな災害が起きることが予想されている中で、我々はどのようなことに気を付けていったらいいかについて考えてみたいと思います。最近はメディアを通して、災害に対するいろいろな情報が世の中に流れてくるようになって、災害に対する意識は少しずつ高まっていると思います。「何かしなければいけない」と考えている方は多いと思いますが、実際に具体的な取り組みとなると、災害が起きた直後は何かするけれど、しばらくたつと忘れてしまいがちです。例えばよくありがちなのが防災グッズ、避難袋の準備ですが、どこかで災害が起こると準備をしないといけないので用意するのですが、時間がたつとそのまま放置されてしまう傾向があります。これはある意味仕方がないのですが、実際には地球温暖化の影響によって風水害も頻発化し、激甚化していますし、首都直下地震、南海トラフ地震などの大規模地震の発生の懸念も叫ばれています。これらの災害は、起きるか起きないかという問題ではなくて、いつ起きるかという問題だと我々は認識するべきだと思います。
その中で、災害に対して知識、意識、技術の三つの力を高めていくこと、そして行動を促していくための防災に広く取り組むことを急ピッチで行う必要があると思っています。この知識、意識、技術という言葉の頭文字を取ると、まさに「ち・い・き」という言葉になります。やはり防災と地域は切っても切り離せない問題になってきます。災害は自分が住んでいる地域で起きます。その地域の中で、どういうふうに助け合うかが一番重要になってきますので、災害を学び、災害に対する取り組みをするときには、まず地域との接点を常に大事にしながら取り組んでいくことが、とても重要になると思っています。
また、この防災を学ぶときに、特に気を付けなければいけないのは、いわゆる防災教育というと、例えば地震がなんで起こるか、建物はなんで壊れるかとか、そういうことを勉強することがよくありまして、もちろんこれはこれで意味があることですが、例えば地震がなぜ起きるかを知ったからといって人の命は救えるかというと、そこには直接つながりません。そういうことを考えていくと、本当に必要な防災教育とは何なのかをよくよく考えて、そういう取り組みをしていくことが重要ではないかと思います。
我々日赤で行っている防災教育も、なるべくそういうことに気を付けて、地域の皆さんは忙しいので、忙しい中で少しでも自分の身に役立つ、そして自分の身を守るのに役に立つ内容にしようということで考えています。我々の防災教育のキーワードとしては、一つは「お付き合い」、二つ目は「逃げなさい」、そして三つ目は「助け合い」を挙げています。この三つをキーワードに防災教育を進めています。これは地域の一般の住民の方を対象に行っていますが、防災に興味のある人をどこか1カ所に呼んでやるのではなく、我々日赤の職員、あるいはボランティアの指導者が地域に出向いて行って、地域の中で地域の住民の方々を対象に防災教育を進めています。

防災は顔の見える関係づくりから

自助・共助の力を高めるためには、人々の顔の見える関係づくりを、この防災教育が促進するものでなければならないと思います。そのためには、まさに地域の中で防災教育を進めていく必要があります。特に共助を進める上では、地域コミュニティー内のリーダーが非常に重要なキーになってきます。リーダーというと、例えば町内会長や自治会長、あるいは自主防災会の会長などの役職に就いた方を想像されることが多いと思いますが、防災の時に役に立つ、あるいは本当に活躍するリーダーの方々を見ていると、必ずしもそういう役職に就いている方ばかりでもないことが過去の災害の例として分かっています。
実際にどのような方がリーダーになっているかというと、実は災害のフェーズによって若干違ってきます。特に災害が発生した直後の救出救援の時期ですと、人に指示をして動かすのが得意な人、声が大きい人、あるいは押し出しが強い人など、そういうタイプの人たちが個の力で即断即決で、自分の住んでいる地域で命に関わるようなニーズに迅速に対応していることがあります。一方で、ちょっと時間がたって、例えば避難所生活のような時期に入ってくると、むしろ地域でつながりのある人、あるいは顔の広い人、世話好きな人、面倒見がいい人たちが集団としての力を引き出して、調整をしながら、いろいろな幅広い人と相談しながら物事を進めていって、避難所の管理運営、あるいは在宅で避難されている方々に継続的な支援をしていくという取り組みをしていることが、過去の災害の事例として分かっています。
実際にリーダーになる人は必ずしも公的な役職に就いている人ばかりではなく、資質を持った人々が災害のフェーズに合わせて、それぞれの場面でリーダーとして活動しているわけなので、むしろこういう方々に防災の知識・技術などを防災教育の中で学んでもらうことが、重要なポイントになってくると思っています。ただ実際にはピンポイントで、このような資質を持った人を見つけることは難しいので、地域の中で広く一般の方、多くの方にこの防災教育を受けていただく必要があるわけです。その中で自分がこういうような素質を持っていると思っている人には、ぜひリーダーの役割を積極的に果たしてもらいたいと思いますし、そうでない方々は、あそこにこういう人がいるから、その人にリーダーになってもらおうということで、周りの人がそれに協力してあげるという取り組みも重要になってくると思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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