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防災インタビューVol.159

人と輪を ~防災のまちづくり~

放送月:2018年12月
公開月:2019年6月

葛西優香 氏

HITOTOWA
執行役員/防災士

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

福祉と防災

現在私は、HITOTOWAの中で防災についての仕事をしていて、まちにはこういう組織が必要だろうと考えながら、定量調査と定性調査を掛け合わせてやっています。実際にまちに入ってからは、やはりそのまちの方々と会話をしながら、そこの今のニーズを探り、それを掘り下げながらやっているのですが、そのまちにとってどういう組織が一番いいのかということを、やはり研究の視点から自分で調べた上で、納得した状態でより広げていきたいという思いがありました。それで、今法政大学の大学院で人間社会研究科福祉社会専攻という、福祉系の科に通って防災の研究をしています。福祉系の科でなぜ防災をやっているのかと疑問に思われることもあるのですが、私自身は、福祉と防災はとても密接に関わっていると思っています。福祉という観点では、福祉避難所の話もありますが、災害で誰一人として命を落としてほしくないという気持ちが私の中にあって、一人たりとも絶対取りこぼしてはいけないと思っています。そのためには、なかなかコミュニティの中に入れず、まちに出てこない方も巻き込んで助け合える環境を作らなければいけないと考えています。そのようないろいろな方々を巻き込めるような組織作りをしながら、今地域で頑張って活動している方々と、30代、40代のこれから担い手となり得る、入りたいと思っているけれどなかなか入れていない方々をうまく融合させるような組織をどのように作っていくのがいいのかということを研究しています。

その中で、ある地域に絞って、防災がすごく活発な地域と活発ではない地域を選定して、外部条件というか、立地や町会に所属している世帯数とかを全て合わせて、そのあたりの条件はほぼ揃っているのに、防災力の違いが出ているところについて、この違いはなぜ出ているのか、それは人にあるのか、その組織形態にあるのかということをちょっと掘り下げて調べていこうと考えています。研究の結果、どういう要素がその防災組織を高めるために必要なのかということは、もちろん今のところ仮説はありますが、研究した結果で出てくることだと思うので、そこはこれからしっかりと研究でまとめていきたいと思っています。

実際に地域に入っていく上で、マンションの管理組合という組織と、町会とを分けて研究しているのですが、それぞれに悩みがあり、大体最初に出てくるのは組織の高齢化、担い手不足であり、要配慮者名簿を作ってはいるけれど、どうやって活用したらいいかとか、そこに書かれている方々にどうやって接触したらいいかというようなことが課題になっています。それを解決するには、実際にうまく活動している方々の事例を洗い出して、そのうまくいく要素を生かして一緒に組織作りをしたり、支援をしたり、一緒に伴走できるような研究の進め方をしながら、ちょっと長期間になるかと思いますがやっていきたいと思っています。

楽しく憩える「防災の拠点」

現在研究を進めていく中で、夢はたくさんあるのですが、中でもひとつ実現したい夢があります。それは、地域で防災を考えるための「防災の拠点化」というものです。これは一体どういうことかと言いますと、どこに行ってもどんな地域でも駅前などに交番があると思いますが、それと同じぐらい、もう少し少なくてもいいかもしれませんが、防災を考えられる場所というのがあってもいいのではないかと思っています。

防災のことを考えるためだけの場所を借りるのでは、家賃なども掛かってきてしまうので、普段はカフェや子ども食堂といった使い方をしていて、でも定期的に人が集まってきて防災の会議が開かれていたり、そのカフェの一角に実は非常食がちょっと置いてあったり、そこの店員さんが防災のことをよく知っているとか、そういう空間づくりを目指していて、将来的には全国にそういう場所がたくさんできると良いと思っています。

新しく拠点を作るとなると家賃も掛かり、運営が大変になって、防災のことができなくなってしまうのでは本末転倒で、実際に葛飾区でも地域の方も賛同してくれて拠点作りをやっていたことがあるのですが、その運営を考えることで精一杯になってしまって、防災のことを本質的に考えることができなくなり、閉じてしまいました。そこで、この防災の拠点作りを、実際にどういうふうにするのが一番いいのかを考えた時に、既存の拠点に防災の要素を取り入れていくのがいいと思うようになりました。そうすることによって、定期的に集まって、防災を考える場所も地域に一つはできますし、しかも子ども食堂であれば、普段使っている所に子どもが集まっているわけです。子ども食堂は子どもと食事を一緒にすることを考えていますが、それだけで忙しいのでなかなか防災までは考えることができず、実際に災害が起きたときに、事前にしっかり対応を考えていないと子どもたちを守ることはできません。ですので、子ども食堂や学童などの拠点の防災力を強化していくというような形で、そこにいる方々が地域の防災リーダーになるような形で拠点化を進められたらというのが今抱いている野望です。

その運営に関わってくるのが、先ほどからお話ししている30代から40代の女性だと思っています。その方々が、例えば仕事復帰の際に元の会社に戻らず、自分の住んでいる地域の近くで働きたいというニーズも今は増えていますし、働く場所を求めている方も多くいます。その方たちに、この拠点で働くという形で動いていただいて、単にカフェを運営していてお茶を出すだけではなく、地域に貢献しながら地域の防災のリーダーになり、何かあったときはみんなを助けることができるというのは、非常に社会貢献という意味においても達成感を感じられるものになると思います。このような、防災の拠点でありながらも、普段は楽しく憩える場所がもっともっと地域に当たり前のように存在することになれば、それによって、防災を考えるということももっと当たり前になっていくのではないかと考えています。そのような夢をぜひ実現していければと願っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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