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防災インタビューVol.162

三陸沿岸の津波被害から学ぶ防災

放送月:2019年3月
公開月:2019年9月

佐藤 健一 氏

アジア航測株式会社
東北インフラマネジメント技術部
地域創生課 技師長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

大災害からの復旧と復興

今回の東日本大震災は、想像を絶する災害となってしまいましたが、次に被災後の復旧、復興がどのように現場でなされてきたのかについてお話しさせていただきます。

関東大震災や阪神淡路大震災などの大きな災害が多々日本列島では起きていますが、その中で行われてきた「災害からの復興」というものは、中身的にはどちらかというと「復旧」です。新しい形にはしていきますが、現況に近いような「復旧」を行うこと、それを「復興」というような名前で呼んでいました。

理想的には、例えば関東大震災であれば、火災による被害が大きかったので、本来「復興」というのであれば、大きい道路を都市計画で作って、同じような災害があったときに、火災が起きても無事なまちづくりをするのが「復興」だと思いますが、一部では行われてはいましたが、現実的にはそこまでは行かなかったということがあります。ところが東日本大震災の被災地においては、地元の選択肢という部分はありましたが、どちらかというと同じような被害を二度と起こさない、防ぐんだというような復興の仕方をしています。専門的には「創造的復興」という呼び方をしていますが、今までの復旧的復興と全く違った手法がとられました。ここ百数十年にない頻度で、もし同じ津波が起きた場合、それは防げるようにしようという考え方が基本にあります。「レベル2」という言い方をしますが、今回と同じような規模の津波が来たとして、建物の被害、財産被害はあったとしても人的被害はないような所に住居を設けるということが国の方針として立てられ、地元としての選択肢はありますが、国のこの方針に沿った形でまちづくりが進んでいます。これを「創造的復興」と呼んでいるのですが、その辺がこれまでの復興のやり方とはだいぶ違う感じです。現実的には、いろいろな長所短所があるわけですが、現在はそのように進められているということになります。

それから改めて構築されなければならない防災減災のための対策についても、東日本大震災後に課題が見えてきました。現在も調査解析中の部分もありますが、その中で、一番大きいのは、防災、減災の対策においては、行政からの一方的なものではなく、個人やコミュニティ、企業、学校などが一緒になって、さまざまな研究分野で総力戦で戦わなければならないものであるということが、東日本大震災後の課題であり、反省として出てきていると思います。

想定にしばられない防災力

防災対策としては、自治体が作る地域防災計画やBCP、地域のコミュニティでの防災計画など、いろいろなものがありますが、前提となっているのはあくまで、あるリスク、想定する災害というものがあって、それを対象に対策が練られてきました。しかしながら、今回は、それをはるかに超えてしまいました。中身的には貞観の地震と同じような地震が起きて津波が来たという言い方をされていますが、津波の波形を見ますと、恐らく貞観の津波よりも大きいのではないかと思います。例えば、明治三陸と同じような形の波形があって、それに貞観の地震の津波が重なって大きい津波になってしまったということがあるわけですが、実際に予想を超えた大きな津波になったために、それまで考えてきた防災対策が機能しなかったということが言えます。東日本大震災の時には、情報がない中で想像しながらの対応を行い、次々に起こることに対応していくことしかできなかったというのが現実でした。

ですから、今後の防災対策としては、過去の知識にしばられない、想定を超えるものもあり得るということを踏まえて備えることが必要ですし、そういうような考え方をこれからしていくべきだと思います。

経験を生かした防災教育

地域によって、その場所で起こる津波や高潮、洪水、土砂災害など、自然災害の形はいろいろです。その中で、住民やその地域のコミュニティで起こり得る災害のイメージをきちんと持っておく必要があります。この地域では、このような災害が起こる可能性があるということでハザードマップを作っていきますが、このハザードマップ以上の災害も起こり得るということを常に意識し、そのイメージを皆で共有しておくことが大切です。個人や地域、職場や学校などで話し合い、防災教育をしっかり構築していくことが必要です。そして、そこで得た知識は、個人個人の記憶にとどめ、学んだ知識や訓練などの経験を忘れないように生かしていかないといけないと思います。この知識や経験を忘れずに長期記憶にとどめていくためには、体を動かしながら学ぶと身に付くということが、東北大の今村先生の研究でも証明されています。ですので、体を使って訓練しながら、防災に対する対策を身に付けていくということが有効になると思います。また、正常化の偏見に妨げられて避難ができなかったということがあったとお話ししましたが、「自分は大丈夫」「まだ、大丈夫」という正常化の偏見、バイアスをどんどん切って削っていくためには、やはり体を使って覚えた長期記憶を併せて学んでいく必要があると思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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