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防災インタビューVol.162

三陸沿岸の津波被害から学ぶ防災

放送月:2019年3月
公開月:2019年9月

佐藤 健一 氏

アジア航測株式会社
東北インフラマネジメント技術部
地域創生課 技師長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

まだ知らない形の災害に備える

大きな災害があると、つくづく感じるのは、「知らないことを知る必要がある」ということです。今まで私たちが持っていた技術力や知識というのは限られたものであり、逆に自然というものは、毎回違った様相を見せるものです。最近の災害でそのことを十分感じたと思います。「ああ、こういう形の災害もあるんだ」というように、今まで知らなかったことを知ることになります。例えば北海道の胆振地方の地震であれば、堆積していた山肌全部が茶色になった映像を見られたと思いますが、あれは火山堆積物が地震によって全部流されてしまって斜面崩壊を起こしているわけです。あの地震が起きて何秒というような時間の中で家屋被害、人的被害が起きています。このように、実際に被害が起こってから、「このような被害形態もあったんだ」と初めて分かることもあるので、災害についてはまだまだ分からないことがこんなにあるんだということを認識して、災害に取り組む必要があります。例えば、同じような災害が過去に起きたかもしれませんが、それは、まだ人間が文字を書くことができなかった時代かもしれませんし、人間が生まれてくる前の時代かもしれません。現在は、いろいろな観測機器があり、コンピューターもあって、時代が進んでいるけれども、それでも限界があることを知らなくてはいけません。

2018年にインドネシアで地震が起きました。2度起きているのですが、最初の地震はスラウェシ島とパル島で、横ずれ断層といわれる断層のずれで起きた地震で、この地震による津波で多くの人たちが亡くなっています。実際に同じような形の地震が日本に来たときに、気象庁が同じように、「地震が起きて津波が来る」という情報を流せるかというと非常に厳しいと思います。通常日本の津波は、断層が縦にずれるものがほとんどで、逆断層、正断層といろいろありますが、このパル島の津波に関しては横ずれで、その周辺の海底まで続く斜面が崩壊して、海に向かって津波が発生し、それがパルの湾の奥を襲ったということになります。この時の地震のマグニチュードは7.5でした。東北大を中心にした報告会でも、同じような横ずれ断層によって津波が起こる可能性が日本にもあるということが発表されています。もうひとつは12月22日にクラカタウ島の火山が噴火して津波が起こり、何百人という人が亡くなりました。このような地震も日本でも起きる可能性がありますので、もし起きた場合の警報の出し方が決められているかというと、決められていないので、やはり日本でも火山の噴火による地震津波に対しても対策を進めていく必要があると思います。

災害時に普段の生活を維持することの大切さ

東日本大震災の発災後、私は災害対応のために約1ヶ月間、家に帰れず、市役所の庁舎の中で寝泊まりしていました。その時に身を持って経験したのが、「災害が起きたときにも、普段の生活を続けていかないと健康的に大変なことになる」ということです。普通ですと朝起きてトイレに行って、顔を洗って、ひげも剃って、ごはんを食べて、歯を磨いてという生活をしていると思いますが、あの時は約1ヶ月歯も磨かず、結果、歯周病になってしまいました。現在は、その当時からすると9本も歯が減ってしまっている状態です。最初に歯周病で6本抜かれ、2004年に心臓の手術をするために虫歯がない状態にしなければならなかったため、最後の3本も抜歯しました。その時に先生から言われたのが、「歯周病というのは歯が全部無くなるだけでなく、心臓にも影響している」ということでした。

このようなことも起こり得ますので、災害時に、顔は洗わなくてもなんとか大丈夫かもしれませんが、歯だけは磨かないといけないということをぜひ意識しておいてもらえればと思います。普段から歯ブラシと水がなくても歯が磨けるようなデンタルリンスなどを少し多めに常備しておくと良いと思います。

東日本大震災は広域的に被害が及んだ超巨大災害と言えると思いますが、同じような災害がこれからもいろいろな地域で起きる可能性を持っているということを常に心にとどめておいていただければと思います。「自分の地域は大丈夫だ」ということは決してないということを肝に銘じて欲しいと思います。そして、災害が起こった場合の復旧、復興というものが後から出てきますが、その時にも環境ということを頭に置いて、どういう復旧、復興をするのかを考えたときに、自然環境と対峙する場面があると思いますが、本当にそれがいいことなのかどうかを俯瞰的に見ていき、将来に禍根を残さないような作り方をしていくのが良いということを、どこかで覚えておいていただければありがたいと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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