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防災インタビューVol.168

「地区防災計画」から始める防災への備え

放送月:2019年9月
公開月:2020年11月

早川 直喜 氏

札幌市危機管理対策室
地域防災担当係長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

札幌で進行中の地区防災計画

札幌市では平成29年度から「地区防災計画」の作成に取り組んでおりまして、今年度で3年目になります。1年目は2つの地区、昨年の2年目は5地区の合わせて7地区、そして今年は3地区増やして、全部で10地区で地区防災計画の作成に取り組んでいます。

札幌の時計台のすぐ横に建っている「札幌時計台ビルの地区防災計画」では、普通の事例ですと町内会などの地区で作るケースが多いのですが、たまたま時計台ビルの方から、地区防災計画を作ってみたいという話がありました。そのビルでは、普段1000人ぐらいの人が働いていて、お寿司屋さんや保育園も入っていて日中1200人ぐらいの人がビルの中に滞留している場所です。そこで、ビル全体を村というふうに見立てて、各フロアを町内会のようなイメージで地区防災計画を作ってみようということでお手伝いをしているところです。保育園の先生に聞くと、やはり地震が起きると小さい0歳児から3歳児、4歳児ぐらいの子どもたちばかりなので、職員だけではなかなか面倒を見切れない、お父さんお母さんが迎えに来るまで少ない人数で対応しなければいけないので不安だという話もありました。一番災害時に弱い方、困る方がいかに安全安心に過ごしてもらうかを考えることが、ビルとして地域として災害に強くなれるのではないかということで、時計台ビルでは保育園児を災害時にどうするかということもひとつ大きなテーマ、目的で地区防災計画を作っている状況です。

札幌の地区防災計画は、いろいろな特色を持った所をモデル地区として指定しています。例えば土砂災害が多い地区、川の下流で水害が心配な地区、すごく大きな地区、小さい町内会で高齢化が進んで元気がない地区、逆に地域が活性化していて防災も熱心に取り組んでいる地区など、いろいろな所をモデル地区として指定して、地区防災計画に取り組んでいます。

このようなモデル地区として地区防災計画に取り組んでいただいている所でも、課題を抱えています。例えば盤渓地区という山間地では、土砂災害警戒区域がたくさんあり、これらの場所が全部崩れると道路がかなり多くの所で寸断され、1つの小学校にまとまって避難するというよりは、ブロックごとに避難しなければいけなくなると考えられます。また、重度の障害者が入所している施設があって、そこをどうするかということを地域で真剣に考えているような所もあります。地域ごとに、皆でアイディアを寄せ合って考えていく中で、1つ、2つとやはり良い取り組み、良い考えが出るのが地区防災計画で、そこが1つの魅力、メリットになるんだなということが分かり、地区防災計画の良さを実感しているところです。

地域に生かす防災対策

地区防災計画を作ろうとしているあるマンションでは、9月1日に防災訓練をした直後の9月6日に地震が起きたので、まだ計画を作る途中だったのですが、それまでに顔を合わせて打ち合わせをしていることが多かったため、すぐに皆が集まって、災害対策本部的なものが立ち上がりました。マンションの水道が使えないので新しい直結の水道を工事で作ったり、同じマンションに住んでいる高校生に水を上層階に住んでいる老人の家に届けるようにお願いしたり、すぐに皆さんが集まって対応できたということです。 

ある町内会では、地震が起きてすぐに会長さんが町内を見回ったそうですが、そこの町内会はエリア的に震度5弱ぐらいの揺れだったので、家が崩れたり、液状化が起きたりということはなく、夜中でもあり電気が消えているので、ものすごく静かで、何人かは家の外に出ているけれども、それ以外の家では呼び鈴を押しても鳴らないし、寝ているのかもしれず、窓を叩く訳にもいかなくて、結局何もできなかったと話されていました。また、自分の家が大したことがなかったので学校にも行かなかったけれども、近所の学校に実は100人ぐらいの避難者が集まっていて困っている人がたくさんいたのだが、情報が入ってこなかったために何もできなかったという話もありました。

これらのことを通して、やはり普段から災害時にやるべきことを決めておかないと、なかなか動けないということを感じましたし、情報は入ってくるものではなくて、探しに行く、取りに行くものなのだということを教訓として実感しました。それらを踏まえて、実際の地区防災計画を作ろうということで今検討しています。

災害時に行政から何も情報が入ってこなかったというお叱りを受けることもありますが、実際災害対策本部でも発災から1、2日目くらいですと手が回らないので、情報がなかなか入ってこない状況です。ですので、皆さん自身ができる範囲で、地域で困っていることを災害対策本部に伝えていただけると非常に助かります。

札幌市でもツイッターやホームページでいろいろな情報発信をしているのですが、いざというときにスムーズに情報発信ができるように、どうしたらスムーズに情報発信ができるかを検討して、現在対策を立てて改善しているという状況です。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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