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防災インタビューVol.71

自然と災害を考える

放送月:2012年1月
公開月:2012年3月

西岡 哲 氏

株式会社地圏環境テクノロジー
代表取締役

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

プロフィール

私は株式会社地圏環境テクノロジーの代表取締役の西岡哲と申します。この会社は、日本でも非常にまれな会社だと私自身は思っています。2000年以前は、国立大学の先生は兼業を禁止されていましたが、2000年に人事院勧告がありまして、これにより自分のやっている研究であれば会社を起こしてもいいことになりました。そこで、現在、代表取締役会長をしている東京大学のシステム創成学専攻の登坂博行教授とともに、この会社を起こしました。この会社では、彼が開発した物理モデルでの水物質循環をもとに、地球上の水がどのように循環しているのかということを、コンピューター上にもう一つの地球を丸ごとつくって明らかにしようとしています。私どもは、それを統合型水循環シミュレーションシステム、ゲットフローズと言っていますが、その開発者の登坂先生と2000年9月25日に2人で、いわゆる大学発ベンチャーのはしりとして起こしたのが、この地圏環境テクノロジーという会社です。このように、シミュレーションだけで会社を起こしている例というのは、そうざらにはなくて、それ1本で11年も生き延びている会社は、そうはないかもしれないと思っています。

土木の専門家から水の研究者へ

水というのはとても重要です。地球上に住む生物は人間だけでなく、生命全般に、水の恵みの中で生きているわけです。循環する水がなければ多分、生命というのはなかったでしょうし、当然人間もいなかったし、現代社会のような文明も生まれてこなかったと言えます。ところが一方で、その水の使い方、取り扱いを間違えると文明の崩壊を招きます。過去の四大文明もことごとく大きな河川のほとりにあって、それが水の使い方を間違えたがために滅びてしまったとも言われています。そのように考えると、やはり21世紀は「水の世紀」と言われますが、その水とどういうふうに付き合っていくのかをもう一度原点から考えて、私どもは進んでいかないといけないと思っています。

私は、もともとは東急建設という会社にいて、技術研究所の研究者でした。私が東急にいた時にやっていたのは、大深度地下開発や新しい土木の技術の工法開発、コンクリート材料などの工法に伴う材料をどういうふうに開発していくのか、ということを手掛けていましたので、水に関しては門外漢です。

1980年ごろから、いわゆるニューフロンティア構想というのがありました。新しい開発エリアをどこに人類は求めるのか、その一つに宇宙開発がありました。その一方、人類にとって一番近い未利用地というのは自分の足元の下、大深度地下でした。大都市東京の真下50メートルぐらい下にある未利用空間をどうやって使うのか、というのがあり、それを開発するための工法開発や設計を研究してきました。その際に一番問題になるのは地下水でした。普段、私たちは地下の水というのは全然目にすることがないので意識することはありませんが、土木工事に携わる人間にとって「地下工事は水との闘いだ」と言われるぐらい、地下の水の状態を知ることは非常に重要です。しかし実は、なかなかそれがよく分かっていませんでした。そのような時に示された登坂先生のモデルは、見えない地下の水の状態がどうなっているのかということを物理的に明らかにして、その情報を基に安全な施工で、経済的な構造物を造ることができるようになります。そのようなわけで、私自身は水の専門家ではありませんが、水をよりよく知りたいという立場から登坂先生と、こういった会社を起こしたということです。

水の循環のシミュレーション

まだ世界全体とまではいきませんが、日本の水のシミュレーションとしては一応、日本列島全部、基本的な所は作り上げました。これは水資源、水災害、水環境といったような水に関わる、あらゆる領域について、私たちが知りたい情報を提供するという形で役に立ってくると思います。例えば高速道路や新幹線を通すためにトンネルを掘ると当然、地下水が下がります。その周辺にある名水や有名な湧き水、ワサビ田では、山の水を使っているわけです。その水がトンネルを掘ったことによって変化してしまうのか、枯れてしまうのか枯れてしまわないのか、そういうことを予測するために、その情報が役に立ちますし、もう一方で、上流で大雨が降ったときに、それが洪水になって下流に影響するのかしないのか、そういうことを知るのにも役立ちます。この間、バンコクで洪水がありましたが、あれは決して予測できないことではなかったのです。前もってモデルをきちんと作って、上で雨が降ったら物理的にはこうなるはずだということは予測できたはずです。このような形で災害の予測に役立てることもできます。山で雨が降ったときに地滑りや深層崩壊というような土砂災害が起きたりしていますが、あれも基本的には水が非常に大きく関わっているわけです。地盤の中の岩盤には空隙があって、その中に水と空気が同時に存在しています。その水と空気の状態が変化することによって、滑りやすくなったり安定したりします。そのため、見えない地下の水がどうなっているかということをきちんと予測することが、災害の防止にもなりますし、建設工事をやった場合に、周辺環境にどう影響を及ぼすのかを知ることができます。私たちにとって、生きていくためにも経済活動をするためにも、水資源というのは非常に重要なものですが、その水資源の情報を提供するのも、このシミュレーションです。これは、これから非常に大きく役立つものであると思っています。

私たちのクライアントとしては、一番多いのは国や県など大きな事業をやるところです。また民間の会社でも、土壌汚染を起こしてしまった場合、自分たちの工場の中で収まっているのか、それともさらに広がってしまうのか、そういうことを予想するためにも使われています。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。