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防災インタビューVol.71

自然と災害を考える

放送月:2012年1月
公開月:2012年3月

西岡 哲 氏

株式会社地圏環境テクノロジー
代表取締役

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

砂漠開発プロジェクト

私は1980年ぐらいから環境問題について考えていました。しかしながら建設会社で環境なんていうと「お前、何を言ってるんだ」というような風潮が非常に強い時で、先取りしすぎていました。その中で、たまたま理解のある上司がいたので、環境問題の中で砂漠化の問題が非常に大きく取り上げられていて、私たち土木エンジニアは何ができるのか、といろいろ考えました。砂漠というのは最も乾燥していて、晴天率も高く、太陽エネルギーの宝庫です。その宝庫をうまく利用する方法として太陽電池で大規模なソーラー発電をしてしまう、当時そんなちょっと夢みたいなことを考えました。それで三洋電機、現在のパナソニックですが、そこの社長の桑野さんが「ジェネシス構想」を立てて、これは地球上の砂漠の4%に太陽エネルギーの10%を変換できる電池を敷き並べると、当時で言えば2000年の時に利用する全人類のエネルギーを太陽電池だけで賄えるという試算を出しました。それを具体的にする方法が何かないかといろいろ考えたときに、太陽光発電の一番の弱点は、雲が出たら当然発電ができないことと夜間は発電できないことなので、それを考えた上で地球儀を見てみると、北緯40度の辺りの中国に砂漠地帯がつながっていました。昔のシルクロードです。その緯度上に大規模発電を点々と並べていくと、地球の回転と同時に、だんだん発電する所が次から次へと移っていくと、かなり長時間にわたって発電できる。そういう発電プラントができるということになり「シルクロードジェネシス構想」というのを出しました。中国の砂漠にそういうプラントを造ってやろうと、現地の調査まで行って、当時の国家計画委員会にもその計画の話をして、彼らは非常に興味を持って、これは絶対中国にとって必要な構想であり開発だということで、ぜひやろうということになりました。しかし、その当時まだ中国は経済力はこれからという時で、日本にも開発要請の費用のこともあったりして、結局具体的に調査までやって、かなり具体的なプロジェクトの青写真まで作るところまでいって終わってしまったわけです。

いろいろクリアしなければならない問題はあると思いますが、要は人類が生きていく、これから安定的に成長し、存在していくためには、これまで話していたような水の話、水をいかにうまく使うかという話とエネルギーの話、水の話とエネルギーの話を合わせて、今度は食料の話ということで、これは切っても切り離せないことになってくるのだと思います。国土モデルの発想の次には全地球、世界の大陸の水循環はどうなっているのか。これから先、気候変動が起きたときに、どういうふうになってしまうのか。どこかの水が少なくなってしまったら食料は確保できるのか、できないのか。そういうようなところに発展していけるような情報を提供するような会社になりたいと思っています。

雑草、空き地、水害

「雑草」「空き地」「水害」という言葉は、ある見方をすると皆共通の視点があるのです。どれも人間を中心に考えたときに生まれてくる言葉です。雑草という草はない、これは富山和子さんという方が「水と緑と土」で書かれています。「空き地」というのも「そこは空き地」なんていうのはどこにもありません。それは人間が勝手に、経済的に価値がないから「空き地」と言っているだけで、そこはいろいろな生命のすみかなのです。洪水、水害というのも人が住んでいなかったら水害にはならない。全て人間中心に物を見てしまっているという視点が、今日の社会をある程度、強力につくってきてしまったのではないかと思います。そういう視点で水循環ということを考えるときに、もう一回、人間中心ではなく自然の摂理とか他の生命との関わりを考えながら、新しい社会をつくることが必要だと思います。

多くの人は日本で自分が生きている間に、あのような災害を目の当たりにするとは思っていなかったと思います。「何でああいう災害になってしまったのか」ということを考えたときに、やはり人間中心に物事を考えてきてしまったのではないか、経済中心ということがどこかにあったのではないかということを考えながら、もう一度、この国、この世界にどういう社会をつくっていくのか、なおかつ人間が本当に幸せになる社会というのは何なのかということを、自然という尺度、環境という尺度から見直してみてもいいのではないかと思っています。

この会社をつくって、私どもの会社で今後、何か役に立つことをやっていけるのかと考えました。なかなか誰しもが意識できないような水の循環についての情報を、きちんと多くの人に発信することは、そのことだけでは何の役にも立たないかもしれません。しかし、その情報を得ることによって、一人一人、企業、行政、いろいろなところで、本来自然の姿はこうなので、こういうことをやってしまったら将来こうなってしまうのだ、ということを考えた上で「こうならないためには何をすればいいのか」を考えるための情報の基礎としてもらえればいいと思っています。そういうような会社として、この地圏環境テクノロジーという会社が存在していければと願っているところです。

昭和三陸津波の後に寺田寅彦という物理学者が「自然というのは非常に過去の習慣に忠実である。執拗に過去の習慣の通りに繰り返してやってくる」と語っています。当然のことながら、その過去の習慣に繰り返して起こる災害というものを、人間は知っているわけです。その災害は予測することはできるかというと、予測はできているわけです。今までの歴史的に何年かごとに大地震は来る、津波は来るというのは分かっています。ところが、それが何時何分に来るかは分からない、予知できない。予知できていればこんな楽なことはないので、皆予知したいと思うのですが、それはなかなかできないということです。科学では、予知するために一生懸命やってはいても、予知できるものではないと言ったら怒られてしまうかもしれませんが、そういうことも知りながら、どうやって自然と向き合っていくのかということを、あらためて考えていければと思っているところです。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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