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防災インタビューVol.71

自然と災害を考える

放送月:2012年1月
公開月:2012年3月

西岡 哲 氏

株式会社地圏環境テクノロジー
代表取締役

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

日本と自然環境

これは私見ですが、昨年の3.11の自然大災害の後に、大地震とその後に起こった津波の現象などから、日本とは一体どのような国なのかということを考えてみました。日本列島は北米プレート、ユーラシアプレートの上にのっていて、その下に太平洋プレートとフィリピン海プレートが沈み込んでいる、世界でもまれな地殻変動の激しい場所です。それで非常に大きな地震が頻発しているわけです。なおかつ日本はモンスーンアジアに位置しているので、四季があり、台風は年間、十数個来たりしますので、自然環境としては、人間が住むにとっては非常に厳しい場所だと思います。ところが一方で営々と縄文時代、弥生時代を通じて水耕栽培をしながら豊かな自然の恵みを受け、社会をつくってきました。自然に対して非常に厳しい場所にいるからこそ、災害から身を守るためには皆で協力しなくてはならなかった。そのために社会というものができてきたと思います。もし南洋のような所で、自然が豊かというだけならば、そこまで文化は発達しなかったのではないかと思います。そのような地域において日本は、どちらかというと外敵と戦うよりは自然とどうやって闘って、自然をどうやって利用して自分たちの社会をより良くしていくのか、ということでつくられてきた社会だろうと思います。そういう意味で、日本においては自然環境が文明をつくってきました。しかし逆に今度は文明が環境を変えてしまったということもあり、これが多分19世紀から20世紀、21世紀が直面する問題だろうと思います。それは気候変動にも表れているようです。エネルギーの使い過ぎでCO2の問題が起こり、それによって気候変動が引き起こされていると言われたりもしますが、本当にCO2が気候変動にどこまで寄与しているかは、科学的な知見やいろいろな意見があるので、一概には言えないところがあるかもしれません。いずれにしても人間が文明を得て、人間のパワーが強くなることによって自然への働き掛けが過度になってしまったことが、非常に大きな問題になってきているのかと思います。私たちは、これからどのような形で自然と付き合っていくのかということを、もう一回、自分たちのライフスタイルなども含めて考え直さないといけないと思います。アフリカのノーベル平和賞を取った女性が言ったように「もったいない」という言葉を、もう一度見直す必要があります。私たちは、ひょっとしたら自然を無駄に使い過ぎているのかもしれません。その中で、どういうふうに自然と向き合ってやっていくのかということが、非常に重要なことだと思います。これからの科学というのは、自然と人間がどのように共生していくのかを考え、役に立つような形で進歩すべきだろうと思っています。

自然と共に生きる

私は今、神奈川県の平塚に住んでいます。平塚には金目川が流れています。そこに金目川水系流域ネットワークという地元のNPOにもなっていないような市民活動の団体があって、私は副代表という形で活動しています。現代では、日常の生活の中で「川」というものを忘れてしまっています。普段はあまり川に行くことがないのではないでしょうか? お母さんたちは、子どもを川に行かせたがらないし「川は危ないものだ」「汚いものだ」「川の水を触ってはいけない」と言って、だんだん人は自然から離れてしまっています。しかし一番重要なのは、災害や自然の環境問題も含めて、本当に自然に触れてみることが必要です。自然に触れてみると、自然の豊かさを感じます。しかし川で泳ぐと、ひょっとしたら溺れるかもしれないですし、危険なこともあります。その両方をきちんと知った上で、川や自然の楽しさを実感していくということが非常に重要だと思っています。

私たちの金目川水系流域ネットワークでは毎年夏に、地元の小学1年生から6年生ぐらいまでの子70~80人が集まって、一緒に川に行って魚を捕ったり触れたりしながら、生き物というのはどんなものなのかを学びます。近くの東海大学から、生物を研究されている研究室の先生や学生たちが一緒になって活動をしています。その時の子どもたちのキラキラした輝いた顔を見ていると、私たちも「やってよかったな」と思うと同時に、そういう経験をした子どもたちは、経験しなかった子どもたちと多分違う、いろいろな感性が育っていると思います。私たちはもっと自然の中で、自分自身も自然の中の一員であるということを知るような活動が本当に重要だと思っています。

自然と向き合うこと

私たちは、便利な社会をつくってきました。その半面、便利になればなるほど自然から遠ざかってしまいます。ところが遠ざかれば遠ざかるほど、今度は自然がどれだけの脅威を持っているか、その猛威を忘れてしまいます。極端な事を言えば、3.11の大津波の際にも「想定外」と言っていましたが、「想定外」という言葉で片付けてしまうには、ちょっと違うような気がします。人間が知っている地球の過去において、記録に残っているようなものはいくらもないのですが、1865年に貞観地震というのがありました。古文書を見れば、あのような津波があったのは分かっていたということです。一部の学者は津波のことを分かっていたけれど、誰でもが知っているわけではなくて、本当にそのようなものが自分たちに来ると信じる人はほとんどおらず、だからこそ無防備だったと思われます。このように、だんだん生活が便利になって、人間が力で自然を変えられると思ってしまった瞬間に、自然に対する向き合い方が変わってしまいました。これは災害から人間を守ることにもなりますが、逆に災害に対して非常に弱くなってしまうという二面性を持っていると思います。

自然が起こす現象に100%対策をとるということは不可能で、基本的に大事なのは「逃げる」ということだと思います。要は災害が起きる所から逃げることです。なぜ災害が起きるのかというと、そこに人間がいるからです。自然現象において、台風が来ようが津波が来ようが洪水が起きようが、人間がいなかったら災害ではありません。だから、そこに人間がいなければ災害は起きないのです。災害が起こりそうな所には近づかないということが一番大切ですが、そういう場所は豊かな自然環境がある所でもあります。そこで、人間が土木工事などを行いながら自然を変えてきています。それが半面、災害にもつながってしまうということだと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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